第91話 治療
更新遅くなってしまい、申し訳ないです。
ファリス森林か、懐かしいな。
あれからもう一か月以上経っているのか。本当に時が過ぎるのは早いもんだ。
昔を懐かしむのはこれくらいにして、依頼内容を詳しく見ていくか。
依頼人はゾンガさん、たしかバリス村の村長さんか。討伐目標はグロースラビッツ。聞いたことがない魔物だな。まぁ所詮はBランク、今の俺なら油断さえしなければ、問題なく倒せるだろう。おまけで複数のラビッツを確認か。これも気にする必要はないな。報酬は金貨6枚、まぁBランク依頼の平均といったところか。
依頼の内容は大体こんなもんか。さて、問題はこの依頼、受けるか受けないかだな。依頼人はゾンガさん、つまりはバリス村からの依頼ってことになる。バリス村には世話になったガントさん達が住んでいるので受けてもいいのだが、ちょっと遠いんだよなぁ。まぁ今の俺なら走ればそれほど時間はかからないか。よし、受けるか。
そんな事を考えていると、近くにグレースさんが寄ってくる。ギルドに居たのかこの人。
「ユーマ、その依頼受けるつもりなのか?」
そう真剣な顔で質問してくる。
「あ、はい。受けるつもりですが」
「そうか、お前なら心配はないと思うが、気を付けろよ。その依頼はBランクの依頼だが、グロースラビッツの強さはおそらくAランクはある」
なんだと!ならなんでこの依頼はBランクになっているのだろうか。少し疑問に思ったのでグレースさんに聞いてみる。
「ああ、俺の勝手な推測だが、バリス村には今あまりお金がないんだろう。あの村は元々かなり貧乏でな。お前が倒したラルドの時だって、俺を雇うのにかなりお金を集めたらしい。しかもだ、俺が不甲斐ないせいで村に被害で出ちまった。その時の復旧にもかなり金を使っただろう」
なるほどな、それなら納得できる。Aランクともなれば報酬金もかなり膨大だ。Bランクを雇うのもきついってのに、そんな大金を払えるはずもない。
「そういう事でしたか。納得しました」
しかし、そんな理由があるならやはりこの依頼受けるしかないな。おそらく、俺以外にこの依頼を受ける冒険者はいないだろう。
「すまねぇなユーマ。本当なら俺が行かなきゃならないところなんだが、俺じゃこいつは倒せねぇ。いや、俺達じゃ倒せなかったんだ」
そう話すグレースさんは、今まで見たことがないほど暗い顔をしていた。理由が少し気になるところだが、今聞くのはやめておこう。
「分かりました。こいつは俺が責任をもって討伐してきます」
そうグレースさんに言い残し、俺は依頼書を持ちメルさんの元へと歩いて行く。するとそれを見た一人の人物が俺に話しかけてくる。
「あ、あんたこの依頼を受けてくれるのかい!?」
俺に話かけてきたのは、かなりボロボロの鎧を着こんだ男性だった。ていうか、この人どっかで見たことあるような気がするな。気のせいだろうか。
「はい、そのつもりですが、どうかしましたか?」
俺がそう答えると、男性はよっぽど嬉しかったのか、勢いよく話し出す。
「ありがてぇ、一刻を争う事態だっていうのに誰も受けてくれなくて困ってたんだ!実は数日前、グロースラビッツは村まで攻めてきてな。どうにか森まで追い払ったんだが、今度いつまた攻めてくるか分かんねぇだ」
なに、村まで攻めてきただと!?
「すいません、村まで攻めてきたって本当でしょうか!?村の人に被害はでなかったんですか!?」
そう質問すると、男性は少し俯きながら答えた。
「なんとか村には侵入されずに済んだんだが、怪我人はかなり出た。特に先輩のガントさんが俺を庇って、足を……」
こいつを庇ってガントさんが怪我をした、だと?そうか、こいつどこかで見た覚えがあると思ったが、あの時ガントさんといたもう一人の門番か。
「それで、ガントさんは無事なのか?どうなんだ?」
「あ、ああ。幸い命には別条はないらしい。けど、もう歩けないかもしれないって」
よし、それなら回復魔法でなんとかなるかもしれない!興奮していた気持ちが少し落ち着いてくる。
「分かりました。では俺はこれで失礼します。安心してください。これ以上村に被害がでないよう、グロースラビッツは必ず俺が始末します」
俺がそういうと、男性は涙ぐんで、ありがとう、ありがとうと言っていた。
そしてメルさんの元へと歩いて行き、
「こんにちはメルさん。早速ですが、この依頼を受けたいと思います」
俺がそういうと、メルさんは真剣な表情で。
「こんにちはユーマ君。話は私にも聞こえてたわ。気を付けるのよ。グロースラビッツにやられた冒険者はかなり多いわ。それこそBランクののPTでも壊滅の危険がある。そんな魔物よ。油断しないでね」
「はい、分かっています。あ、メルさんイグルに伝言頼んでいいですかね」
「伝言?いいわよ何かしら」
「えーと、ファリス森林まで行ってくるので、多分1~2日は戻れない。サリーやみんなにそう伝えておいてくれと。あと心配はいらないって」
「分かったわ。責任を持って伝えておきます」
「ありがとうございます。では行ってきますね!」
そうメルさんに言い残し、ギルドから出ていく。
さて、まずはバリス村にいってガントさんの治療だな。あそこまでそこそこ時間がはかかるだろうが、アイテムボックスの中に食料は大量に入っているので特に準備はいらない。よし、早速行くか!
俺はいつもの門番さんに軽く挨拶をして、バリス村に向かい走り始める。今回はガントさんの事もあるので、ひたすら全速力だ!
その甲斐あってか、フロックスを出発してから数時間後、俺は無事にバリス村に到着することができた。以前はバリス村かフロックスまで数週間かかったっていうのに、随分成長したもんだ。
そしてバリス村にに到着してすぐ、以前来たときとの違いに気付く。
「門が、ボロボロだな」
以前に見たときはかなり綺麗な状態だった門が、今は所々に傷がつき、なんとか村を守っている状態だ。それでも、この門があったから村は無事に済んだんだな。
俺はよくやった、と門を軽く撫でバリス村に入っていく。そして村に入ってすぐ、俺に話かけてくる人物がいた。
「あれー、もしかしてユーマさんですかー!」
そう声をかけながら近寄ってくるのは、サリーとほとんど瓜二つの顔をしたマリーだ。ふむ、改めて見ると若干だがマリーの方が髪が長いな。
「よおマリー、久しぶりだな」
俺がそう返すと、マリーは元気な笑顔で。
「久しぶりって数か月前に会ったばかりじゃないですかー。まさかこんな早く再会するとは思ってませんでしたよ。それにしても、ユーマさんはまったく変わってませんねー。と思ったけど、ちょっと筋肉質になりました?」
おお、やはり俺の肉体は進化しているようだ!この調子で、いつか筋肉ムキムキになりたく……はないな。ほどほどでいいや。
「はは、沢山魔物と戦って、沢山成長したからな。そうだ、マリー。いきなりで悪いんだが、俺をガントさんのいる場所に連れてってもらえるか?」
「え、別にいいけど。お父さん今怪我して動けないよー」
口調はいつも通りのマリーだが、表情は少し暗くなってしまった。
「ああ、丁度その怪我についてだ。もしかしたら俺の回復魔法が効くかもしれない」
俺がそういうと、マリーは暗かった表情をパっと変え、
「ほんと!?付いてきてユーマさん!」
そう言ってマリーは俺の手を取り、走り出す。
数分後、マリーに案内され、マリアさんが経営している宿屋に到着する。そしてガントさんがいるらしい部屋に二人で入っていく。
「お父さん!ユーマさんが来て怪我が治るかもし……」
ん?先に部屋に入ったマリーの言葉が妙なとこで途切れた。何があったのだろうか、そう思い一言声をかけ部屋の中に入っていくと……
「おい、勝手に部屋に入ってって、ユーマじゃねえかこの野郎!」
「あらあら、ユーマ君また来てくれたのね。歓迎するわ」
ガントさんとマリアさんは冷静にそう言った。なんで、なんで二人ともそんな冷静なんだよ。そんな至近距離で抱き合ったままの状態で。
俺のその視線に気づいたのだろうか。ガントさんは少し慌てながら、
「おっと、いつまでもこんな体勢でいるわけにはいかねえな。すまねえなマリア、持たれかかっちまってよ」
「いいのよ、気にしないで。あなたは村の為に戦ったわ。その結果、歩けなくなるのは残念だけど、これからは私達があなたを支えていくわ」
「マリア……」
「あなた……」
おい、この二人、俺とマリーがいること忘れてんじゃねえだろうな。怪我をしたと聞いて必死に走ってきたのに、こんなラブラブシーンをなんで見せつけられねばならんのだ!もういい、とっとと治療をしてこの場を離れよう!
「ガントさん、ちょっとこっち向いて。はいそのまま、【ヒール】」
「おおお?なにしやがんだユーマ!」
そう言ってガントさんは両足で立ち上がる。そう、怪我をしていたはずの足で。それを隣で見ていたマリアさんが呆然とした表情でつぶやく。
「あ、あなた、足が!」
それを聞いたガントさんも、ようやく自分の状態に気付く。
「お、おお!立ってる!立ってるぞ!!」
「はい、治ったみたいですね。じゃあ俺はこれで失礼します。後はお二人で仲良くどうぞ」
そう言い残し俺は部屋をでる。おっと、マリーを中に残してきてしまった。まぁいいや。しかし、まさかあんな物を見せられる羽目になるとは。実に羨ましい。まあ、元気そうで少し安心したけどな。
さて、これで一番の目的は達した。次は依頼の事を聞きに村長の家に行くとするか。そう考え、村長宅に向け歩き出した。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
それから評価やブクマなどいつもありがとうございます。
これからもこの調子で頑張っていくのでよろしくお願いします。




