第82話 友達
リサの店を出て数分後、無事ジニアに到着。
扉を開け中に入っていくと、
「あ、ユーマさんお帰りさない」
そう言いながらサリーが笑顔でこちらに駆け寄ってくる。うむ、やはり誰かが帰りを待っていてくれるのは嬉しいな。前の世界じゃ、お帰りなさいなんてしばらく聞いてなかったからなぁ。
まぁ俺が引きこもっていたせいなんだが。
「ああ、ただいまサリー」
そうサリーに言いながらいつものように頭を優しく撫でてあげる。俺が頭を撫でてあげると、サリーはいつも幸せような表情になる。うむ、最高に可愛い。
おっと、そういえばリサの指名依頼の件について少しだけ話しておくか。
おそらく一日では帰ってこれないだろうかな。
「サリー、少しだけ話があるんだが、今大丈夫か?」
サリーも夕食の準備などがあるといけないので、
一応確認をとっておかないとな。
「はい、大丈夫ですよ! なんの話ですか?」
「まぁ大した話でもないんだが、おそらく俺は明後日から宿を空けることになると思う」
俺がそう言うと、幸せそうだったサリーの顔は一転、かなり沈んだような暗い顔になってしまった。おいおい、一体どうしたというんだ! 俺がそう思っていると、
「あ、あの。ユーマさんジニアから出て行っちゃうんですか? も、もしかして私何か失礼な事を……」
ああ、なるほど。
サリーは俺がジニアに愛想を尽かせて出ていくと思っているのか。
ちょっと俺の言い方が悪かったなこれは。
俺はサリーを少しでも安心させようと笑顔を向け、
「サリー、大丈夫。俺は最高にジニアが気に入っているんだ。ここを出ていくつもりなんて欠片もないさ。俺が明後日から宿を空けると言ったのは、指名依頼で少し遠出するからその間宿を空けるってことだ。サリーが心配しているような事を起きないから安心してくれ」
俺が頭を撫でながらそう言うと、
サリーは間違いに気づき、安心してくれたようだ。
それと同時に少しだけ恥ずかしそうな顔になって、
「わ、わたし、早とちりしちゃったみたいで、ごめんなさい!」
「問題ないさ。それくらい俺の事を大切に思ってくれてるって事だからな」
俺がそういうと、サリーはやっと落ち着きを取り戻してくれた。
「というかサリー、聞いてないのか? 俺にこの指名依頼をしてきたのはリサなんだが」
俺がそう言うとサリーは何かを思い出したように、
「あ、そういえばリサがなんとか鉱石が欲しいから、ユーマさんに指名依頼するかもって言ってたような。てことは、ユーマさんとリサが行くのはゴレイ山脈ですか?」
「そうだな」
「なるほど、では6日~9日分程度の食料が必要ですね。ユーマさん、もしよければ明日私と食料の買い出しに行きませんか?」
おお、そりゃ助かるな。
正直食料なんてどこで買っていいか分からなかったんだ。
「それは有りがたい。是非お願いするよサリー」
俺がそう言うと、サリーは小さくガッツポーズをしていた。
「分かりました。じゃあ明日朝食を食べたら一緒に行きましょうね」
うむ、本当にサリーはええ子やのう。
その後サリーと少しだけ話自分の部屋に戻っていく。
そしていつもの様にベッドに横になり、
夕食の時間が来るのを待つことにする。
「ふぅ、とりあえず夕食の時間までゆったりするかね」
そう思い目を閉じる。
そしてそれから数時間後。
ふと、目を覚ます。
「おっと、少し寝ていたようだ」
窓から外を見てみると真っ暗になっていた。
少し寝すぎてしまったか。
そう思い、急いで一階の食堂に向かう。
すると少し遅れてしまった影響だろうか。
食堂はかなり混んでいた。
だがしかし、俺にはあいつがいる。
さぁこい! そう思っていると、
「お、ユーマこっちだー! 席取っといてやったぞ」
きたきた、いつものイグルさんだ!
毎回の事ながら、本当にイグルには感謝だな。
俺はイグルの向かいの席まで行き腰を下ろす。
「よおイグル。いつも悪いな」
「いいってことよ。俺も一人で飯食うよりは誰かと一緒に食べたほうが楽しいからな!」
そう言って俺に気にするなと言ってくる。
ああ、いいなぁ。
こうやって気軽に軽口を言い合える存在って凄くいい。
こういうのを友達っていうのだろうか。
あ、そうだ。
イグルにも指名依頼の事を一応言っておくか。
何日かは留守にするわけだからな。
「イグル、いきなりだが俺は明後日から数日の間出かけることになる。その期間は悪いが飯は一人で食べといてくれ」
「へぇ、護衛依頼かなんかか?」
「ああ、サリーの友達のリサって子からの指名依頼でな。ゴレイ山脈への同行と護衛を依頼されている」
俺がそう言うとイグルは少し顔を強張らせ、
「ゴレイ山脈か。あそこには嫌な思い出しかねえぜ……」
「何があったんだ?」
「ユーマは知らないかもしれねえけどさ、あそこにはゴレムっていう厄介な魔物がいんだよ。でだ、そいつの体ってめっちゃ硬くてな。俺の弓なんか欠片も刺さりもしねえの。それで必死で逃げまくったっていう話さ」
なるほどな。
イグルの使う武器は弓。
どう考えても相性は悪そうだ。
「てかユーマ、おめえは大丈夫なのか? ストン森林での戦いを見た限りおめえもナイフでの物理攻撃が主体だろ? あいつまじで硬いぜ?」
どうやらイグルは俺の心配をしてくれているようだ。
「ああ、メルさんに話を聞いたがそうらしいな。しかし、魔法攻撃には弱いらしいじゃないか。それなら問題ないさ。それなりに攻撃魔法も使えるからな」
するとイグルはかなり驚いた顔になり、
「まじか、おめえあんなとんでもねえ動きするくせに、その上攻撃魔法まで使えるのかよ。はぁ、これじゃ心配した俺が馬鹿みてえだな」
そんな事はないさ。
誰かに心配されて嬉しくないやつはそういないだろう。
「いや、心配してくれてありがとなイグル。でも大丈夫だ。お前が仕留めれなかったゴレムはちゃんと俺が代わりに仕留めてきてやるよ」
まぁ遭遇したらの話だけどな。
その後イグルと少し話をしていると、
「ユーマさんイグルさんお待たせしました!」
サリーがこちらにやってくる。
どうやら夕食ができたようだ。
サリーは忙しいのか、夕食を置いてすぐに食堂に戻っていった。
さて、早速食べようかと目の前に置かれた夕食に視線を移す。うむ、相変わらず最高にうまそうだ。おそらく街を離れることで一番残念な事はサリーの作った飯を食べられない事かもしれない。
今までの経験からアイテムボックスの中は時間経過がないようなので、サリーに飯を作り置きしてもらってアイテムボックスに中に入れて保管しておくのも手の一つだな。まぁサリーに負担がかかるので、気軽には頼めないがな。
「おいユーマ、そろそろ食わねえか? 俺はもう待ちきれねえよ」
おっと、イグルを待たせてしまっていたようだ。
「悪い。少し考え事してた。よし、頂くとしよう」
「おっしゃ!」
その後、俺とイグルはいつも通りかなりの速さで夕食を平らげた。
飯はゆっくり食べたほうがいいと前の世界でも言っていたが、これは無理だな。一口食べるともう手が止まらなくなってしまう。サリー恐るべしだ。
「ふぅ、腹いっぱいだ。相変わらずサリーちゃんの飯は最高だぜ」
「ああ、全くだ」
その後少しだけ話をして、俺とイグルは別れた。
そして自分の部屋に戻っていき、ベッドに横になる。
「ふぅ、今日も一日無事終了っと」
そしてベッドに横になりながら明日の予定を考える。
まずはサリーと食料の買い出しだ。
おそらくこれは昼前には終わるだろう。
その後は、ゴルド森林で魔法の練習でもするか。最近まったく使う機会などなかったからな。おそらく大丈夫だろうが、もし本番でうまくできませんでしたじゃ話にならない。それに今回はリサも一緒なんだ。本番で魔法を失敗してリサを危険に晒すような真似は絶対にできない。
「よし、明日の予定は決まった」
予定も決まったことだし、明日に備えて寝るとしよう。実はさっきから眠気が凄まじかったのだ。さすがに腹が満腹な状態でベッドに横になるとやばいな。もう限界だ。
俺は目を瞑り、眠りに落ちていった……
読んでいただきありがとうございます。
これからもこの調子で頑張っていくのでよろしくお願いします。
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