第77話 格闘術
ギルドを出て数分後、俺は門の前にいた。
そしていつもの門番さんと、
「おや、ユーマ様また依頼ですか? 最近ユーマ様は働きすぎのように感じます。少しばかり休息をとってもよろしいのでは?」
「心配してくださってありがとうございます。けど大丈夫ですよ。これでも体力には自信がありますから! おそらくあと2~3日程度なら戦い続けられるくらい元気です」
「ふむ、それは素晴らしい。やはりその辺は若さですな」
「はは、まぁ俺もう25歳だから若いとも言えないんですけどね」
「いえいえ、私から見たらまだまだユーマ様もお若いですよ」
その後も門番さんと少しだけ話をして、
「おっと、長い事お引き留めしてしまい申し訳ありませんでした。ではユーマ様、どうかお気をつけて行ってらっしゃいませ」
「はい、行ってきます」
よし、行くとするか。
俺はゴルド森林に向け、全速力で走り出した。
「うっひょー、やっぱり一人だとスピードも段違いに速いなぁ。これならゴルド森林くらい一瞬で着いちまうな!」
そして全速力で走る事数分、
俺は無事にゴルド森林の入り口付近に到着した。
「よし、到着だ。さすがに一瞬は言いすぎだったが、おそらく5分もかかっていないんじゃないだろうか」
俺でこの速さならミナリスさんはもっと速いんかね。
まぁミナリスさんは見た目だけは普通の少女だからな。あの姿で猛スピードで走っている姿を想像すると、少しアンバランスだな。
まぁいい、とりあえずは、
「早速ゴールデンラビッツを探すとしますかね!」
そして俺はゴルド森林の中へと入っていく。すると入ってすぐに魔物の気配がし、そちらの方向を見てみると、
「はずれっと」
そこにいたのは前にかなりの量を倒したホブゴブリンだった。うーん、こいつ倒してもほとんど経験値入らないんだけどなぁ。まぁちりも積もれば山となるっていうしなぁ。一応倒すか。
そして俺は武器を取り出そうとするが、
「いや、まてよ。こいつなら素手での戦闘の練習に丁度いいんじゃないか。強すぎず、弱すぎず。よし、こいつは素手で潰そう」
よし、この前は足技で決めたので、今回は手技で倒してみるか。練習だからな、気配遮断も使わないでおこう。
そう決め、俺はホブゴブリンの正面に立つ。
するとホブゴブリンはこちらに気付き、俺に向かって走ってくる。おそらく両手で持っている大きなこん棒を俺に振り下ろすつもりなのだろう。攻撃が当たりそうな位置までくると、両手を振り上げ攻撃の準備をしている。
しかし、今の俺にはホブゴブリンの一連の動きがすべて止まって見えるほどに遅く感じていた。今、俺に向かって両手を振り上げている姿など隙だらけすぎてあくびが出てきそうだ。
まぁいい、自ら隙を作ってくれているんだ。攻撃させてもらうとしますか。俺は両手を振り上げ隙だらけになっているホブゴブリンの腹部に、
「せやぁ!!」
空手の正拳突きのように攻撃を放つ。
まぁ当然空手なんてやったこともないので、ただの力任せの突きなわけだが。
しかし、それでも威力は十分だったようで、
「ギァアアアァァァ……」
俺の放った突きは、ホブゴブリンの腹部を易々と貫通し、ホブゴブリンを死に至らしめていた。
「ふむ、適当に放っただけの突きだったんだが、かなりの威力だな」
よし、じゃあ次の獲物を探すとしますか。
そう思い数分歩くと、また次の獲物が現れた。
「お、またホブゴブリンか。よし、今度は首狙いで行ってみるか」
俺は静かに、ホブゴブリンの背後まで近寄り、
首の頸椎当たりを掴み、頸椎を折ろうとする。
そして力を込めた瞬間、
「ふん!!」
頸椎を折るどころか、ホブゴブリンの首の8割ほどを頸椎と一緒に握りつぶしてしまったようだ。当然、ホブゴブリンは断末魔を上げる暇もなく絶命した。
「おいおい、まじか。ちょっと頸椎を折ろうとしただけでこれかよ」
そういやよく考えたら今の俺って、サイクロプスとほぼ同じような力なんだよな……。あんな化け物みたいな魔物と同じ力か。なんか少しだけ悲しくなってくるのはなぜだろうか。
まぁいい。どちらにせよ、これからは人と握手するときは気を付けるようにしよう。じゃないと人の手など軽く握り潰してしまいかもしれない……
「よし、気を取り直して、ゴールデンラビッツ探し再開するとしよう」
それから俺は出会った魔物を適当に素手で葬りながら、ゴールデンラビッツの捜索を続けていった。そして数時間後、今日はあきらめて帰ろうと考えていたその時、俺はやっと目標の魔物を発見することに成功した。
おお、おそらくあれがゴールデンラビッツ! 見た目はほとんどラビッツと同じようなもんだが、色が違う。名前通りにこいつの体は金色だ。
よし、じゃあ早速やるとしますか。気配遮断を使い、デーモンリッパーを取り出し、準備万端だ。いくか!
俺は一気にゴールデンラビッツの背後まで移動する。そしてデーモンリッパーに魔力を込め、首に向かって振り下ろし、見事ゴールデンラビッツの首を落とすことに成功した。
「よし!」
討伐完了だ。やはり気配遮断を使える俺にとってこいつは絶好の獲物のようだな。
「そうだ、levelはどうなった!?」
俺は慌ててステータスを確認する。
「ステータスオープン」
佐藤悠馬level192
HP1300/1300
Mp780/780
力 580
体力 580
素早さ340
幸運 1150
{スキル}
経験値20倍
スキル経験値20倍
鑑定level10
気配遮断level9
気配察知level3
短剣術level7
魔力操作level4
火魔法level3
水魔法level1
風魔法level1
回復魔法level4
毒抵抗level5
麻痺抵抗level1
料理level1
アイテムボックスlevel5
話術level3
投擲level1
格闘術level2
{称号}
異世界転移者
引きこもり
ラビッツハンター
駆け出し魔法使い
駆け出し料理人
駆け出し武闘家
むっつりスケベ
首狩り
天然たらし
街の救世主
「凄い、前よりlevelが40近く上がっている。ゴールデンラビッツ、たった一体でなんて経験値の量なんだ。さて、能力を見ていくか。まず力と体力は完全にサイクロプスを上回ったな。今ならサイクロプスにも素手で勝てたりしてな。次は素早さ、これも300を超えてきたな。そして幸運、こいついよいよ1000を超えやがった……この世界に来て色々うまくやってこれているのも、この幸運のお陰かもしれないな。次はスキルだが、よし狙い通り格闘術が増えている。しかもすでにlevel2だ。これからも弱い敵には素手で対処してスキルlevelを上げていくとするか。最期に称号だが、駆け出し武闘家が増えているな」
うむ、予想以上だったな。
まさかたった一匹倒しただけでこれだけ上がるとは。こうなると明日からもゴルド森林に通うことになりそうだ。せめてミナリスさんのステータスが見えるようになるまでは、ここでゴールデンラビッツ狩りの日々だな。
さて、このまま狩りを続けたいところではあるが、さすがにもう時間がやばいな。せめて日が落ちるまでには帰りたい。そろそろ撤収するとしよう。
その後数分ほどでゴルド森林から脱出し、フロックスに向けて走っていった。
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これからもこの調子で頑張っていくのでよろしくお願いします。




