第68話 驚き
黒狼を始末し、ゴルド森林から出発し数分後、俺は無事フロックスに到着した。いつものように軽く門番さんに挨拶をし街の中に入っていく。
さて、とりあえずはギルドに行くとするか。ゴルド森林での魔物駆除についてもそうだが、黒狼についても報告しておきたいからな。そう思いギルドへ向け歩き出し数分後、俺は無事ギルドへ到着して、扉を開け中に入っていく。
中に入るとギルドの中は受付の人以外、ほとんど誰もいなかった。
なるほど、みんな魔物の後始末に行ってまだ帰ってきてないのか。まぁいい、とりあえずメルさんに報告だけでもしておくとしよう。
そう思いメルさんの方に歩いていく。そして、
「こんばんはメルさん。ゴルド森林での魔物駆除についての報告をしたいのですが大丈夫でしょうか?」
「ええ、大丈夫よ。それでユーマ君は今日一日でどれだけ魔物を倒したのかした? ユーマ君の事だから50匹くらいは倒してそうなもんだけど」
そうメルさんがニヤニヤ笑いながら聞いてくる。その顔に少しだけイラっときたので、ちょっと驚かしてやろう。
「そうですね。さすがにゴルド森林は生息している魔物のlevelも高くて、200匹くらいが限界でした」
「そう、仕方ないわね。200匹……え?」
うむ、狙い通りメルさんは面白いくらい驚いている。やばい、少しだけ楽しいぞ。やはりこういうギャップは中々グっとくるね。
「200匹しか倒せなくて申し訳ないです。もし足りないようでしたら、明日にでもまた行って狩ってきますので」
俺がそう言うとメルさんは凄く慌てたように、
「200匹も倒したなら十分よ! むしろその話が本当なら、大侵攻が起きる前にいた数より減ってるくらいよ!」
「へぇ、そうなんですか。じゃあ今日でゴルド森林の後始末は終了ですね」
「そうね。けどごめんなさい。ユーマ君の事を疑いたくないけど一応討伐した魔物を見せてもらってもいいかしら」
「全然かまいませんよ」
「じゃあ解体場に行きましょうか。ここで出したら大騒ぎになっちゃうからね」
そうして俺とメルさんは解体場に足を運んでいく。
そして解体場に着くと、いつものおっさんが話かけてくる。
「おお、メル嬢に首狩りの坊主じゃねえか! どうしたよ、また珍しい魔物でも持ってきてくれたのか?」
あ、そうだ。おっさんの言葉で思い出したが、サイクロプスの素材を売るつもりだったんだ。どうせならついでに解体してもらうとしよう。まぁとりあえず本題から終わらせるか。
「まぁそれもありますが、今日大侵攻の後始末ということで、ゴルド森林で魔物の掃除をしてきたんですよ。それで少しばかり数が多すぎてですね。ギルドでは出せなくて、ここで出してもいいでしょうか?」
「ああ、それなら問題ねえぞ! いくらでも出してくれ」
「ありがとうございます。では出しますね」
よし、許可は取ったぞ。じゃあ出すとしますかね。そして俺はアイテムボックスの中から、今日倒した魔物の死体を次々に出していく。おお、どんどん出る出る! 止まらないぞこれは。それから数十秒後、俺はようやく今日倒した分の魔物を出し終えた。出し終えたのだが。
「ユ、ユーマ君。た、たしかに200匹の話は本当だったわね。けど、どう見てもこれ200匹以上ある気がするんだけど……」
「はは! やっぱおめえはすげえな坊主! おめえ今日だけでゴルド森林の魔物の大半狩り尽しちまったんじゃねえか!?」
そう。今日倒した分をすべて出したら、どうみても200匹を超えていたのだ。少しばかり調子に乗りすぎたかもしれない。
メルさんは驚きすぎて、表情が固まってしまっている。
「はは、まぁ少々狩りすぎてしまったようですね。で、メルさんこれでよろしいでしょうか?」
「え、ええ。ちょっと驚きすぎて声もでなかったわ。ちゃんと確認したからもう大丈夫よ。ゴルド森林の件は私からちゃんとギルドマスターに報告しておくわ」
よし、これでゴルド森林の掃除の件は解決だ。
次は解体の話だ。
「すいません、次は解体の話をしたいのですが。さすがにこの数は無理ですよね?」
俺がそういうとおっさんは少し悔しそうに、
「ああ、すまねえな坊主。さすがにこの数は俺ら全員でかかっても無理だ。この半分くらいならなんとかなるかもしれねえが」
「分かりました。では今日のところはとりあえず50匹ほどお願いします」
そう言い残りの魔物の死体はアイテムボックスに再びしまっておくことにする。サイクロプスの解体も今度にしたほうがいいだろう。そうしてすべての魔物をアイテムボックスにしまうと、
「じゃあユーマ君、確認も済んだことだしギルドに戻るとしましょうか」
「わかりました。ではおじさん解体お願いしますね。お金はいつものようにギルドに預けておいてください。ではこれで」
そうしておっさんに軽く頭を下げ、その場を後にする。
そしてメルさんと共にギルドまで戻ってきて、
「あ、解体の件で思い出したわ。ユーマ君、はいこれ」
そういいメルさんは何かが入っている小さな袋を手渡してきた。一体なんだろうかと中身を見てみると、白金貨が3枚も入っていた! どういったお金だろうとメルさんに聞いてみると、
「それは以前にユーマ君が倒してくれた、オークキングの素材の分のお金よ」
ああ、そういえばオークやコカトリスの分の金は貰っていたが、オークキングはもう少し時間がかかるってことで貰ってなかったな。しかしオークキングここまで金になるとは! ゴリトリスとの戦いの時、盾にして石にしてしまったのはもったいなかったな。
「なるほど、ありがとうございます」
「ふふ、無駄遣いしちゃだめよ……ってそういえばユーマ君って私より年上だったわね。ユーマ君なんて呼んだら失礼かしら?」
「いえ、今まで通りで大丈夫ですよ。それとメルさんにもう一つだけ報告しておきたい事があるのですが」
俺がそういうとさっきまで笑っていたメルさんは真面目な顔になり、
「いいわよ、何かしら?」
「実は、ゴルド森林で狩りが終わり、フロックスに帰ろうとしたところで盗賊に襲われましてね。まぁ全員始末したわけなんですけど、そいつら黒狼って名乗っていたらしくて」
俺が黒狼と言った瞬間、一気にメルさんの緊張が高まり、
「ユーマ君! そいつらのリーダーの名前わかる?」
「たしか、仲間からはグサロフって呼ばれてましたね」
俺はアイテムボックスの中からグサロフの死体を出し、メルさんに見せる。
「手配書の顔と一致するわね。間違いないわ。ユーマ君、そいつらはかなり有名な盗賊よ。赤目のラルドなんて比べ物にならないほどのね。ナーシサスの方で見なくなったと聞いていたんだけど、まさかこっちに来てたなんてね。けどある意味襲われたのがユーマ君で助かったわ。もし他の冒険者が襲われていたらまず命はなかったはずよ」
へぇ、やっぱり結構有名な盗賊だったみたいだな。
まぁたしかにあの強さだとこの街の冒険者だと歯が立たないだろう。まともに戦えるのはおそらくギルドマスターのグレンさんくらいのもんだろな。
「なるほど、まぁ被害が出る前に倒せてよかったです。それでなんですが、こいつらって賞金とか、かかってたりします?」
まぁ手配書が出ているんだから賞金はかかっているとは思うが、一応聞いておくことにしよう。大事なことだからな。そのためにわざわざ頭を狙わず体を狙ったんだ。
「ええ、かなり高額の賞金がかかってるわね。けどおそらく賞金の受け取りにはかなり時間がかかるわ。ナーシサスのギルドに連絡をしないとだから。直接ナーシサスのギルドに行けばすぐに賞金はでると思うけど」
「ふむ、まぁ賞金が受け取れるようになるまで気長にまってますよ。幸いな事にお金には特に困ってないですからね」
「分かったわ。賞金が受け取れるようになったらすぐ連絡します」
「はい、それでお願いします。では自分の用事はこれで終わったのでそろそろジニアに戻りますね。メルさんまた明日」
そうして軽くメルさんに手を振り、その場を後にする。
そしてそのままギルドから出て、
「さてと、そろそろジニアに帰るとしますかね」
そう思いジニアに向け歩き出す。
そして数分後、無事ジニアに到着し中に入る。すると、
「あ、ユーマさんお帰りなさい! 今日もお疲れ様でした!」
入ってすぐ、サリーが俺の元へと寄ってきた。なんかこのやり取り夫婦みたいだな。なんちゃって。しかし、誰かにお帰りなさいって言ってもらえるのなんか凄くいいなこれ。一日の疲れが一気に吹き飛ぶようだ。
「ああ、ただいまサリー」
そう笑顔で返すとサリーは顔を少し赤くしてしまう。ん? 普通に挨拶しただけなのになんでだろうと思っていると、サリーがチラチラ俺の上半身を見ているのに気づく。なるほど、こやつ朝の事を思い出しているな。ならば、
「おいおい、どうしたんだサリー、大丈夫か?」
そうしてわざと上半身を見せつけるようにサリーに近づく。サリーは顔をさらに赤くさせながらも俺の上半身をガン見している。しかしやがて我慢しきれなくなったのか、
「ユユユ、ユーマさん! 夕食は1時間後くらいなのでお忘れなく! それじゃ私はこれで失礼しますぅうううう」
そうして凄まじいスピードで厨房まで逃げていった。少しやり過ぎたかなと反省しつつも、非常に可愛かったのでよしとしよう。
さて、自分の部屋に戻るとするかな、おっとその前にサリアさんの元へと向かう。すると、
「お、ユーマどうしたんだい。さっきは娘とイチャイチャしてたみたいだけど」
「はは、少しからかい過ぎましたかね。それで本題ですが、当分ジニアにいるつもりですから、宿泊料金の追加をしにきました」
そう言いサリアさんに30日分の宿泊代金、金貨一枚と銀貨2枚を支払う。これで当分は大丈夫だろう。
「おや、こりゃまた随分気に入ってくれたみたいだね。ユーマくらい稼いでいればもっといい宿に泊まれそうなもんだけどね」
「いえ、俺にとってジニア以上の宿はこの街にはありませんよ。では自分は夕食の時間まで部屋で暇をつぶすことにしますのでこれで」
そうサリアさんに言い、俺は自分の部屋へと向かう。
そして扉を開け中に入り、いつものようにベッドに横になり、
「さて、夕食までゆっくり休ませてもらうとしますかね」
俺は目を瞑り、ゆったり夕食の時間が来るのを待つことにした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
それから評価やブクマなどいつもありがとうございます。
これからもこの調子で頑張っていくのでよろしくお願いします!




