第53話 買い物
さてと。
ギルドでの用事も済んだことだし、そろそろサリーを迎えに行くとするか。
そう思い俺はジニアに向けて歩き始めた。
しっかし俺もいよいよAランク冒険者かぁ、まだ登録して数日なのにここまで順調に上がっていくとはなぁ。
あとAランクから上に上がるための試験ってのはどんなんだろうな。
多分だけど、メルさんの話を聞く限り戦闘能力以外の要素が必要となる試験なのだろう。
そうなると今の俺には厳しいかもな。なんせ冒険者になってまだ数日、俺にできる事と言えば脳筋のようでいやだが戦闘しかない……
まぁ、今すぐに昇格試験を受けるわけではない。のんびり経験を積んでいくさ。
そんな事を考えながら歩いているうちに、気づいたらジニアの前まで来ていた。
おっと、もう着いたか。
さて、サリーの準備は終わっているだろうか。とりあえず入ろうか。
俺は扉を開け中に入っていく、すると。
「あ、ユーマさん。もう用事は終わったんですか?」
扉を開けて中に入ると、テーブルに座っていたサリーが俺に寄ってきた。見た感じ出かける準備はできていたみたいだ。
少し待たせてしまったようだ。
「ああ、もう用事は済んだよ。サリーはもう準備万端みたいだな。ごめんな待たせちまったみたいで」
俺がそう言うとサリーは少し慌てて、
「大丈夫です。私もいま準備が終わったところですよ!」
俺に気を使ってくれているんだろうな。
「そうか、ならそろそろ出かけようか」
「はい。今日はユーマさんがいるので一杯買い物しちゃいますね!」
「任せてくれ、これでも一応冒険者だ。力には多少自信があるからな。いくらでも俺が持ってやるよ」
「ふふ、じゃあ行きましょう!」
そして俺とサリーはジニアから出ていく。
出ていくとき後ろ方でサリアさんがニヤニヤしながら手を振っていた。何をやっているんだか。
「ユーマさん。まずは服が少し見たいので付き合ってもらっていいですか?」
「いいぞ。今日はもう用事ないからいくらでも付き合うさ」
「やった、じゃあ行きましょー」
数分後、
俺とサリーは衣服を販売している雑貨屋で商品を選んでいた。まぁ選んでいるのはサリーだけなのだが、たまに、
「ユーマさん。この服どうでしょうか!?私に似合うでしょうか?」
そんな事を俺に言ってくる。
正直こういう時なんて言えばいいのかよくわからん!
「あ、ああ十分似合うと思うよ」
「やった、じゃあこの服も買いましょう! じゃあ次の服選んできますね」
そう言いサリーはまた次の服を探しに行く。
ていうか、サリーめちゃくちゃ買うなぁ。
まぁあれくらい持つのはまったく問題ないのだが、お金は大丈夫なのだろうか。
まぁサリーの事だ、お小遣いでも貯めていたのだろう。もしもの時は俺が払うとしよう。
しかしこの状況、デートみたいだなまるで。
その後数時間サリーは服を選び続けていた、長い……
「ず、ずいぶん買ったなサリー」
俺の両手にはバッグのような物に入った数十着の衣服があった。
ていうかアイテムボックスに入れればいいんんじゃねこれ、まぁいいか。
「す、すいません。重かったですかね?ついユーマさんに褒められると嬉しくて買いすぎちゃいました」
「いや、これくらいならまったく問題ないさ。俺を困らせたいならこの10倍は必要だな」
「よかったです、じゃあ最後に食料品を買いにいきましょう」
「了解だ」
そして俺とサリーは食料品の店がある通りに向かい歩いていく。
数十分歩いただろうか、無事着くことはできた、できたのだが、
「わぁ、今日すごい混んでいますね」
「だな。こいつは油断したらすぐはぐれてしまいそうだ」
「ユ、ユーマさん!!」
うお、いきなりどうしたサリー!
急にそんなマジな顔で迫ってこられたら怖いぞ!いや可愛いけどさ。
「ど、どした?」
「あ、あの、これだけ人がいてはぐれたら大変なので手をつないでもらえませんか!?」
なんだ、そんな事か。
「いいぞ。ほれ」
俺はサリーに向かい手を差し出す。そしてその手をサリーがものすごく緊張した様子で恐る恐るつかむ。
「ししし、しつれいします!!」
おいおい、サリーそんな恥ずかしそうにするなよ、こっちまで恥ずかしくなってきちまうじゃねえか!
「じゃあ行こうか」
「は、はい!」
そうして俺とサリーは手をつないだまま買い物を進めていき、必要な物は大体買うことができた。そんなときだった。
「いた、」
サリーが誰かにぶつかってしまった。
「ああ、おい嬢ちゃんよ! おめえなに俺様にぶつかってきてんだこら!」
「す、すいませんでした」
「すいませんですむ問題じゃねえんだよこら!」
いや、ぶつかっただけなのだから十分すいませんで済む問題だろうが。
そして次の瞬間男はサリーに手を伸ばそうとする、俺はその手を横から掴む。
「すみませんね。この子は俺の大事な人なんで乱暴な事する気なら少し痛い目見てもらうことになりますよ?」
その男はいきなり横から出てきた俺にイラだった感じで、
「なんだてめえは! 彼女と一緒だからって調子乗った事いってんじゃねえぞこら! 痛い目みるのはてめえだぼけ!」
なんか、俺この世界に来てからよくこういうのに絡まれるなぁ。
そんな事を考えていると、男の友人らしき男がその隣に来て耳打ちする。
「おい、やめとけ! こいつ……じゃなくてこの人はやばい!」
「ああ、なにがやべえってんだよ。どう見たってこんなやつただのモヤシ野郎じゃねえか!」
「ば、ばかが。おめえは冒険者じゃねえから知らねえんだろうがな! この人はAランク冒険者だ。しかもオークキングをソロで倒せるレベルなんだよ。おめえなんか一瞬で殺されるぞ!」
「ま、まじで?」
友人にそう言われ最初に絡んできた男は俺に少しびびった様子だ。
よし、いまがチャンス!俺はその男に少しだけ殺気を出しながら、
「おい、今なら俺は何もしない。さっさとどっかに行ってくれ。だがな、これ以上俺たちに絡むつもりなら、どうなるか分かってるよな?」
俺の殺気に反応したのだろうか。
最初に絡んできた男は、俺のその言葉を聞いて悲鳴をあげながら走り去っていく、止めてくれた友人を置いて。
「あ、あの」
「ああ、君も大変だな」
「あ、はい。あいついつも短気で。じゃあ俺はこれで」
「ああ、じゃあな」
そうしてこの場にはサリーと俺だけが残った。
ふむ、サリーは静かだ。少し怖がらせてしまったかもしれないな。
「サリー大丈夫か? 怖がらせてしまってすまない」
「ユーマさん……」
「ん? どうした?」
「さっき私の事、大事な人って……それに彼女って」
ちょっと待て、俺はたしかに大事な人とは言った!だが彼女なんて口にした覚えはないぞ!
「あ、ああ。サリーは俺の大事な人だよ。何かあったら俺にいってくれ。必ず守る、どんな事が起きてもな」
俺がそう言うとサリーは顔を真っ赤にさせてうつむいてしまった。
このままここにいるわけにはいかないな、そう思いサリーに、
「サリー、もう時間も遅い。そろそろ帰ろうか?」
「はい……」
その後俺とサリーはジニアまで無事戻ることができた。
しかし、しばらくの間サリーは俺を見ただけで顔が真っ赤になり、仕事どころじゃなくなったそうだ。
ちなみにその日の夜。
ステータスを見てみると{天然タラシ}という称号が増えていたのであった……
最後まで読んでいただきありがとうございます。
それから評価やブクマなどいつもありがとうございます。
これからもこの調子で頑張っていきます!




