第50話 バキル
さてと。
勢いのままジニアを飛び出したはいいがどうやってバキルを見つけるか。
だめだな、まずは落ち着こう。
ここまで頭に血が昇っていたんじゃまともな思考なんてできない。
「ふぅ……」
少し落ち着いてきたな。
さて、まずはMPの回復だ。
俺はサリーを治すためにMPをすべて使ってしまった。
このままじゃ戦いになったときに気配遮断とデーモンリッパーを使えない。
そう思いアイテムボックスの中のMPポーションをすべて飲み干す。
とりあえずは満タンまで回復できたようだ。
しかしこれでMPポーションがなくなってしまった。
バキルと戦う前に補充しておくか。
そう思い以前グレースさんに連れてってもらった店に向かう。
数分後、無事店に着くことができた。まだ閉店していなくてよかった。
「すみません。MP回復ポーションを買いたいのですが、売ってますでしょうか?」
「おや、この前の坊主だねいらっしゃい。MP回復ポーションね。それなら在庫があと30個ばかりあるよ。今日は学園の生徒が買いにこなかったから大量に余ってるのさ」
丁度いい。全部貰おう。
「それ全部買います」
「全部かい!? あんた結構お金持ちなんだねぇ。えーと30個で……」
「銀貨6枚ですね。これでお願いします」
俺は金貨一枚を店員のおばさんに手渡す。
「おお、やっぱあんた計算早いね。どうだいうちで働いてみないかい?」
「ありがたいお誘いですが遠慮させてもらいますね。」
「残念だね。じゃあはいお釣りの銀貨4枚だよ」
「ありがとうございます」
俺はお釣りの銀貨4枚を受け取り店から出ていく。
これだけあれば十分持つだろう。
これでポーション問題は解決。次は。
どうやってバキルを探すかだな。
この広い街をすべて見て回るのは不可能に近い。
バキルはたしか女ばかり狙う。
俺を狙って近づいてきてくれれば一番早いのだが無理そうだ。
誰か囮になってもらうか。知り合いだとメルさんとか……
いや!だめだ!俺は何を考えているんだ。
サリーが襲われたんだ。これ以上俺の身近な人を危険に晒すわけにはいかない。
この世界はゲームとは違うんだ。やり直しなんてきかない。
しかし実際見つける方法がない。
分かっているのは背丈と髪が坊主というのと顔に傷があるくらいだ。
しかたない、手当たり次第に探すか。
そう考えて時だった、
「お、ユーマじゃねえかー。何やってんだこんなところで?」
そこにいたのは、朝俺に切り裂き魔の事を教えてくれたイグルだった。
そういえばイグルのステータスを見たときに鷹の目のスキルを持っていたな。
これは使える。こいつは男なので襲われる心配もほとんどない。
「おいおいどーしたよ! そんな怖え顔しちゃってよ! それより早くジニアに帰って一緒にサリーちゃんの料理食べようぜ」
そうか、イグルはまだ知らないんだな。
「イグル、いきなりで悪いんだが俺と一緒に切り裂き魔を捕まえるのに協力してくれ。頼む」
「い、いきなりどうしたよ。協力するのは別に構わないけどよ、何かあったんか?」
「サリーが切り裂き魔に襲われた」
俺がそう口にした瞬間、イグルはいきなり真剣な顔になり、
「ま、まじか」
「ああ、ケガは俺が治したから今のところは心配ないはずだ。しかし切り裂き魔だけは絶対に許せない。サリーが襲われたのは依頼を受けていながらあまり真剣に考えていなかった俺にも責任がある。頼む、協力してくれ」
俺はそう言いイグルに頭を下げる。
それを見たイグルは少しあきれながら。
「あのなユーマ、サリーちゃんが被害にあってるのに俺が協力しないと思うか?」
「なら協力してくれるのか?」
「当たりまえだろ! 俺が協力するからには百人力だぜ! さっさと片づけちまおうぜ。で? 切り裂き魔の情報とかはあるんか?」
「ああ、背はそれほど高くなく、髪型は坊主、それと顔に大きな傷がある男だそうだ」
俺がそう話すとイグルはニヤっと笑い、
「それだけ分かってるなら十分だ!」
それだけ言うといきなりイグルは目の前の家の屋根に上った。
一体何をするつもりなのか。
「イグル、一体何をするつもりなんだ?」
「ああ、俺のスキルに鷹の目ってのがあってな。それを全力で使うと目がめっちゃよくなんだよ! で高いとこから探すってわけよ!」
やはりイグルに手伝いを頼んで正解だった!
これなら、
「いたぜユーマ! 頭坊主で顔にキズのある男だ! 今ジニアから少し北にいった路地裏にいやがる」
「助かったイグル!」
「いいってことよ! 俺は鷹の目を全力で使ったからしばらく動けねえ。ユーマ。しっかりしとめてこいよ!」
「まかせろ」
そう言い残し俺はイグルが言った場所に向かい全速力で走る。
数分後、無事イグルの言った場所までたどり着く。
そして、
見つけたぞバキル……
俺の視線の先には今日も獲物を狙っているのか。
両手には武器のナイフ。
そして襲っている姿でも想像しているのか。
何度も顔をニヤつかせている。
ほぼ確実にバキルで間違いさなそうだが一応鑑定を使っておく。
{鑑定}
バキルlevel40
力 45
体力 47
素早さ78
幸運 67
{スキル}
短剣術level3
気配隠密level2
気配察知level1
{称号}
殺人鬼
間違いないな……
やつを目の前にしているだけで手に力が入る。
落ち着け。冷静にだ。
よし、段々と落ち着いてきた。
やるか……
俺はアイテムボックスからポイズンナイフを取り出す。
そして気配遮断を使い、
「いくぞバキル」
俺は一気にバキルの背後まで回り込む。
そしてバキルの喉にナイフを少し刺し、
「動くな」
バキルは突然俺の声が聞こえて驚いている。
そりゃそうか、俺はいま気配遮断を使い姿は見えてない。
分かりやすいように気配遮断を解いてやる。
「な、なんだてめええは!」
「俺か? 俺はギルドの依頼でお前を捕らえにきた冒険者ってとこだな」
「冒険者だと! てめえなんのスキル使いやがった!」
「これから死ぬお前に答える必要があるか? さて最後に言い残す事があるなら聞いてやるぞ?」
「お前! 俺を殺すつもりかよ!」
「どうせお前は捕まったら死刑だ。別にここで死んでも問題ないだろう?ん?何かおかしいか?」
何やらいきなりバキルが笑い始めた。
「へっ、お前すげえスキル持ってるからベテランかと思ったら新人冒険者だな?」
「どうしてそう思う?」
「隙だらけなんだよぼけがああああああああ」
そういいバキルは体を回転させ俺の拘束から逃れる。
同時に首を負傷したようだが気にしていないようだ。
「ざまああねえな! 冒険者さんよ! 早めに俺を殺しとばよかったのにな!」
すでにバキルは勝ち誇ったような顔をしている。
「俺はよ! ここで死ぬわけにはいかねえええんだよ! これからも女を切り刻まなきゃなんねえんだからなぁ!」
「よく回る舌だな」
「たしかにおめえはすげえスキルもってるんだろうがよぉ! 新人冒険者なんて怖くも……なんと……もなか……」
勝ち誇った顔でしゃべり続けていたバキルは突然その場に倒れ込む。
ふむ、やっときいてきたようだな。
「なん……だこい……つは」
「やっと毒と麻痺が効いてきたようだな。中々効いてこなくて俺もあせったよ」
「毒……だと……そんなのい……つ」
俺は手に持っているナイフを見せて、
「ああ、これポイズンナイフっていってな。攻撃した相手を毒と麻痺状態にする効果があるんだよ。便利だろ?」
「まさ……か最初か……ら」
「いやぁ、正直あのまま俺に黙って殺されるなら楽に殺してやろうと思ったんだけどな。お前想像以上のゴミだったな。仕方ないからお前には毒で時間をかけて死んでいってもらうとするよ」
「……!?」
「あれ、もう声も出なくなっちゃったか。まぁ安心しろよ。ここなら滅多に誰もこないからさ」
「……!……!」
「おそらく死ぬまで数十分」
「……!」
「まぁ精々今までお前が傷つけてきた人達に懺悔でもしておくんだな」
俺がそうバキルに告げるとバキルは恐怖のあまり意識を失ってしまった。
俺は仕方ないなとバキルの近くまでいき、
首を切り落とした。
「依頼完了……だな」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
それから評価やブクマなどいつもありがとうございます。
これからもこの調子で頑張っていきます!
最強の魔王と同時更新です。




