第48話 試し切り
……ふぅ。
さて、とりあえず昇格についての話は終わったな。
Aランクは無理だったが無事Bランクになることができた。
これで高難易度の依頼も受けることができる。まぁまだ受けないがな。
まずは適当な依頼を繰り返しlevelを上げれるとこまで上げてしまおう。
ここは異世界、何があるか分からない。安全にいくさ。
さて、後は指名依頼か。
まぁ切り裂き魔が出るのは夜が多いらしいから、それまで適当に依頼でもして時間を潰すとするか。切り裂き魔探索は夜からだな。
問題は切り裂き魔、バキルだったか。
バキルが俺に倒せる強さかどうかだが、まぁ所詮Bランク。
いっちゃ悪いがグレースさんと同ランクだ。油断さえしなければ問題ないだろう。
まぁ夜までまだまだ時間がある。
とりあえず広間に戻って依頼でも見てみるとしますか。
そう思い広間に戻っていく。
いざ広間に戻ると速攻でグレースさんが興奮した感じで話かけてきた。
「お!ユーマ戻ったか。どうだった?あのおっさん何かしなかったか!?」
「そうですね。部屋に入ってすぐに殴りかかってきましたよ」
まじであの時はもう少しで反撃するところだった。
まぁ正直あそこで反撃していてもあの戦闘狂なら逆に喜びそうだが……
俺の言葉にグレースさんは少し笑いながら、
「はぁ、年とっても変わんねえなあのおっさんは」
グレースさんは少し呆れたようだけど、なぜか少し嬉しそうだった。
「でだ!ユーマのランクはいくつになったんだ?」
グレースさんがそう俺に質問すると、周りにいた冒険者まで俺の方をじろっと見つめてきた。どうやら俺は注目の的らしい。
「ランクはBになりましたよ」
俺がそう言うと広間は一斉に大盛り上がりになった。
「「「おおおおおおおおおおお」」」
「すげえええ。首狩り早くもBランクかよ!」
「ああ、ここのギルド、いや、すべての国のギルドを見ても三日でBランクってのは聞いたことねえぜ!」
「もしかしたらよ!このままSランク、いやSSランクでにでもいっちまうんじゃねえか!?」
「おいおい!SSランクなんてここ数十年新しくなったやつはいねえんだぜ!さすがの首狩りでもそいつは無茶ってもんじゃねえか?」
いくらなんでも盛り上がりすぎじゃないのか。
そう思っているとグレースさんが、
「どうしたユーマ?」
「いえ、少し大げさなんじゃないかなと思って」
「いや、こいつは大げさでもなんでもねえよ。実際Bランク以上の冒険者ってのは、冒険者全体の数パーセント程度しかいねえんだ。おめえはそのBランクにたった3日でなっちまいやがった!騒ぎにならねえほうがおかしいぜ!」
なるほどね。まさかBランク以上の冒険者がそこまで少ないとは思っていなかったな。それならこの騒ぎも納得できるな。
「なるほど、理解しました。」
あ、そういやバキルは前にギルドにいたんだよな。
つまりグレースさんは知っている可能性が高い。
ついでに情報収集しておくとするかね。
「グレースさん一つ質問なのですが、昔ギルドにいたらしいバキルって男知っていますか?」
俺がそう質問すると、騒がしくなっていたギルドの中が少しだけシーンとした。
「ユーマ?お前もしかしておっさんに切り裂き魔、いやバキルの事を依頼されたのか?」
ついさっきまで俺の昇格で騒いでいたグレースさんが一瞬で真面目な顔になった。やはりバキルの事は知っているみたいだな。
「そうですね、つい先ほど指名依頼は受けてきた所です」
「そうか、俺が武器さえあれば俺自身で捕まえてやりてえところだが、ユーマ気を付けろよ?あいつは目的のためならなんでもやる残虐なやつだ」
なるほどね、まぁ切り裂き魔になるくらいだからまともな性格はしていないと思っていたが。まぁそれならそれで俺も容赦しなくていいな。
「わかりました。大丈夫油断はしませんよ。全力で排除します」
「それなら安心だな!」
グレースさんは俺なら問題ないと安心してくれたようだ。
さて、それじゃ依頼でも。
「じゃあグレースさん、やつが出る時間帯の夜までまだまだ時間があるので、俺は依頼にでも行ってきますね。」
バキルと戦う前に少しでもlevelを上げておくか。
それと、あの武器の試し切りもしないとな……
「おう、いってこいよ!」
よし、じゃあなんの依頼があるのか見てみますか。
そう思い依頼掲示板の前まで移動する。
俺が見る場所はCランク用の依頼掲示板だ。
当然ながら人はほとんどいない。
さて、お、オーク討伐がまたあるな。
オークなら倒し慣れてるし、こいつの試し切りにも丁度いいな!
よしこれにするか。オーク討伐の依頼書をメルさんの所まで持っていく。
「さっきぶりですメルさん。今日もこの依頼を受けようと思います」
「はい、オーク討伐ね。確かに確認しました。ユーマ君には不要かもしれないけど一応言っておくわ。気を付けていってきてね。あとこれがBランクの冒険者カードよ。」
メルさんからBランクの冒険者カードを受け取る。
「ありがとうございます。では行ってきますね」
そう言い残し俺はギルドを出て、門をくぐり街から出る。
さて、オーク討伐場所は前回と同じ所だ。
迷う心配はない。そうときまれば、走るか!
門から全速力で走り出す!門番の人がめちゃくちゃ驚いていたが気にしない。
全速力で走ったかいあってものの数分で到着することができた。
「もう着いたよ。相変わらず俺の身体能力おかしくなってるなぁ。」
前世ならどんなスポーツをしたとしても成功するだろう。
むしろ怪物として隔離されそうな気がしないでもない……
「さて、じゃあ早速実験の付き合ってくれるオーク君を探すとしますかね」
新しい武器、デーモンリッパーを使えることにやや興奮しながら、オークを探しに森の中に入っていく。実験としてオークキングもいるとありがたいが、まぁさすがにいないだろう。
すると探し初めて数分、早くも一匹目のオークを発見した。
「お、幸先いいねぇ。」
よし、早速やるとしますか!
まずアイテムボックスからデーモンリッパーを取り出す。
相変わらず禍々しいなこいつは。そして気配遮断を使い準備完了。
「いくかぁ!」
そして一瞬でオークの背後まで周り、首付近に一撃!
「しっ!」
すると、まるで空気でも切っているかのように、何の抵抗もなくオークの首は体から分離した。断末魔を上げる暇もなかったようだ。
「こいつは、、予想以上の切れ味だな。」
正直いまの一撃は大して力を入れていない。
それなのに結果はこれだ。もし全力でこいつを振るえば首どころか体すら容易く真っ二つになるだろう。
さて、もう少し切っておくか。
その後数分で3匹のオークを倒した。
「ふむ、やはり気配遮断とデーモンリッパーを同時に使うとMpの減りもなかなかだな。これは早めにlevelを上げてMPを上げておいた方がいいか」
さて、目の前には一匹のオークがいる。最後に魔力を込めての一撃を試してみるか。魔力をどれだけ持っていかれるか分からないので一応MPポーションを飲んで満タンにしておく。さて最後の実験だ。
「いくか」
まだ俺に気付いていないオークの背後までいき、デーモンリッパーに魔力を込める!すると魔力のせいなのかデーモンリッパーが少し伸びたような感覚になる!
いまだ!
魔力のこもったデーモンリッパーを全力でオークの首めがけて振るう!
すると、
「嘘……だろ?……」
結果を言うとオークの首は無事切断された。
だがそれだけではない。なんとオークの後ろにあった大木が3本ほどオークの首と同じように切り裂かれていた……
俺がそのあまりの切れ味に驚いていると、
「ぐぅ、なんだこれは。いきなり目まいが……」
いきなり俺の視界がおぼつかなくなり目まいが起きる。
まさか!そう思いMPを確認してみたところギリギリしか残っていなかった。
「まず、い……このまま森で意識を失うわけには」
俺は意識が朦朧とするなか、なんとかアイテムボックスの中からMPポーションを取り出し、回復することに成功する。
「はぁはぁ、コカトリスの件の時にポーションを買いだめしておいて助かった」
少しすると意識も落ち着いてくる。
「ふぅ、しかし魔力を込めたデーモンリッパーの一撃。凄まじい威力だ。当たればほぼ確実に一撃必殺だろう。しかし今の俺のMPでは一発が限界、しかも使ったあとに毎回こうなっていてはまともに戦いでは使えないな」
これは、早急にlevelを上げる必要があるな。
ふむ、夜までまだまだ時間はある。
「よし、あと数時間ここでひたすらオーク狩りといきますかね」
その後数時間、俺は一心不乱にオークを狩り続けた。
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