第45話 武器屋
……あれ、もう朝か。
「ふぁ、よく寝たよく寝た。」
外を見てみると、まだ日が昇ってあまり時間は経っていないようだった。
これならもう少し寝ようかな。
いや、早起きは三文の徳ともいうし、もう起きるか。
「さて、とりあえず今日の用事はギルドマスターに会いにギルドに行くくらいだな。それまでどうしようかね。暇だから街の散策でもしてみるのも悪くないな」
まぁとりあえず朝飯を食べに行くとするかな。
そう思い俺はベッドから体を起こし、
少しだけ身だしなみを整え、一階の食堂に向けて歩いていく。
一階に降りてみると、さすがに食堂にあまり人はいなかった。
まぁまだ朝早いからな。
そんな事を考えていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「よおユーマ。おはようさん。お前結構朝早いんだねぇ、こっち座れよ。一緒に朝飯食べようぜい」
イグルだった。
「ああ、おはようイグル。お前も朝早いんだな」
朝の挨拶を交わし、イグルの向かいの席に腰を下ろす。
「まぁねぇ。俺ら冒険者は基本朝は早いのさ。昼過ぎまで寝てるやつにまともな冒険者はいないとおもうぜい」
「まぁそうだろうな。」
そんな話をしているとサリーがこちらに気づき寄ってきた。
「あ、ユーマさんとイグルさんおはようございますー!今から朝ごはん持ってくるので少し待っていてくださいねー」
さすがにサリーは朝早くから元気だな。偉いことだ。
「ああ、頼むよサリー」
俺の返事に機嫌を良くしたのか笑顔で厨房に戻っていった。
「朝から仲いいねぇ。ああ俺もサリーちゃんみたいないい子見つけたいぜい!」
正直俺からみたイグルは十分イケメンの部類に入るだろう。
普通なら女性関係には困らなさそうだ。
もう少しそのスケベな性格を治せればだが。
「そういえば早起きしてたみたいだが、イグルは依頼でも受けるのか?」
「ああ、今日はハイゴブリンの討伐依頼を受けるつもりだぜい」
ほう、ゴブリンなら聞いたことはあるがハイゴブリンは聞いたことないな。
「ゴブリンなら知っているが、ハイゴブリンってどんな魔物なんだ?」
「そんな事もしらねーのかよ!!まぁそういうところはさすがに新米冒険者って感じがするねぇお前も。」
仕方ないだろう。
俺はまだこの世界に来て1か月もたっていないのだから。
「でだ、ハイゴブリンだがまぁほとんどゴブリンと同じだな。少し大きくなって小さな角が生えているくらいだ違いは。」
「なるほどな。それで強さはどんなもんなんだ?」
「ああ強さもまぁゴブリンより少し強い程度ってとこかねぇ。ま、せいぜいDランク程度の魔物さ」
ふむ、まぁそれならイグルなら苦戦することはなさそうだな。
「で、ユーマは今日の予定はあんのか?」
「ああぁ、俺は今日ギルドマスターに会いにギルドに行くことになってるな。なんでもオークキングの件で昇格の話があるとかでな」
「まじかよすげーじゃん!いまユーマってCランクだろ?昇格でBランクは確実、もしかしたらAランクに一気になっちまうかもしれねえぞ!」
「Aランクか……そういえばAランク以上の冒険者って何人くらいいるもんなんだ?」
「Aランク以上ねぇ。たしかあまりいねえはずだぜ。全部のギルド合わせても200人いねえんじゃねえかな」
「意外と少ないもんなんだな」
「そりゃな。Aランクを目指すやつはたくさんいるが大体はその途中で死んでいくやつばっかさ」
「イグルはAランク目指してないのか?」
「俺?昔は目指してた時期もあったけどよ。もうあきらめたさ。多分このままCランクかいけてもBランクが限界だな。」
「そうか」
イグルとそんな話をしている間にサリーが朝ごはんを持ってきた。
「お待たせしましたー。ごゆっくり食べてくださいね!」
サリーが朝ごはんをおくとすぐ厨房に戻っていった。
するとイグルが、
「よっしゃじゃあ食べるとしますか!」
「そうだな」
朝ごはんはほんの数分で綺麗になくなった。
「ふぅー食った食ったー。じゃあユーマ俺は先にいくぜい」
「ああ、また夜な」
そういい俺とイグルは別れ……ようとしたのだが、
イグルが何か言い忘れたことでもあるかのように戻ってきた。
「ユーマに言っておきたい事があったの忘れてたぜ!」
俺に言っておきたいこと?一体なんだろうか。
「まぁ正直ユーマだったら心配ないんだろうけどよ一応忠告な。最近この辺りで切り裂き魔がでるらしいから一応注意しておいたほうがいいぜい。もう何人か被害にあっているみたいだからな」
ほう切り裂き魔。
それはまた物騒な話じゃないか。怖いな。
「わかった。注意しておくことにするよ。わざわざありがとな」
「いいってことよ!まぁ正直おめえが切り裂き魔ごときに負けるとも思わねえけどな!じゃあ今度こそいくわ。またな!」
そう言い残し今度こそイグルは宿を出ていった。
切り裂き魔。一応頭の片隅に入れておくとするか。
さて朝ごはんを食べ終わったことだし。これからどうしようかね。
まだギルドに行くには早い。武器屋でものぞいてみるとするかね。
厨房にいたサリーに一応声をかけておく。
「サリー朝ごはんおいしかったよ。少し出かけてくるからまた夕食楽しみにしてるよ」
「あ、ユーマさん!いってらっしゃいです!危ないことしちゃだめですからね!怪我しないように」
「わかってるさ。じゃあ行ってくる」
そう言い残し俺はジニアから出ていく。
さて、武器屋に行くと決めたはいいんだが、
武器屋ってどこにあるんだ……
とりあえず時間はまだまだある。のんびり探すとするか。
そうして武器屋探しに歩き出すと周りから会話が聞こえてきた。
普通なら自分に関係のない会話など興味ないのだが少し知っている言葉が聞こえてくる。
「聞いたか?また切り裂き魔でたらしいぜ!」
「まじかよ!これで何件目なんだ!」
「しかも被害にあったのはまた女性だってよ!俺のPtにも女がいるからすっかりびびっちまってるぜ」
「まぁたしかギルドが動き出すみてえな事聞いたからもうすぐ捕まるだろうさ」
ふむ、どうやら切り裂き魔の件は思ったよりおおごとらしいな。
まぁいいか。そう思い武器屋探しを再開した。
数分後、
無事武器屋を見つけることができた。
できたのだが……
「うむ、中々古臭い店だな。ちゃんとした物は置いてあるんだろうか」
少し入るのに戸惑うな。
しかし数分探し見つかったのはこの店だけだ。
まぁ一応入ってみるとするか。
もしかしたら掘り出し物とかあるかもしれないからな。
そう思い店のドアを開けて中へと入る。
中へと入ると思ったより店の中は綺麗だ。
しかし定員さんがいる様子がない。
「すいませーん。誰かいらっしゃるでしょうか!!」
3回ほど声を上げるとやっと奥の扉から一人の老人が現れた。
すごいな。ひげがめちゃくちゃ長い。
そしてかなりの年のようだ。足元が少しふらついている。
「聞こえとるわーい。しっかし客人とは久々じゃのう。お前さんもよくこんな古臭い店に入ってきたもんじゃわい。まぁせっかく来たんじゃ。ゆっくり見ていってくれ」
「ありがとうございます。」
さて、では見させてもらいますか。
いい武器あるといいな。
数分後、俺はたったひとつの武器に心を奪われていた。
見た目はナイフより長く、剣よりは短い。
先っぽが丸くなっているのはなにか意味があるのだろうか。
そして波紋がまるで血のように見える……
とりあえず鑑定してみるか。{鑑定}
{デーモンリッパー}
恐るべき切れ味を誇る太古の呪われしナイフ。
斬った相手の血を吸うことで切れ味を増していく。
また魔力を込めることで一時的に切れ味を最大にすることが可能。
ただし魔力のない者がこの武器を使うと命が吸い取られてしまう。
なんだこの武器は……
性能自体はすさまじい、いままで見てきた武器の中でも間違いなく最高だ。
しかし呪われし武器ってのが若干きになるな。
とりあえず持ってみるとするか。頼むから呪われたりとかはしないでくれよ。
ためしにデーモンリッパーを持ってみたところ、
うむ、特に変わった所はないようだ。
ステータスを見てみても特に変化は……少しだけMPが減っているな。
なるほど、これは持っているとMPを少しずつ消費していくのか。
そうしてデーモンリッパーを持っていると老人が寄ってきて、
「おまえさん!そいつをもって平気なのか!?」
「はい。いまのところ体には何も異常はないですが」
「そりゃよかった!昔そいつをもった戦士職の冒険者がいてな!最初はすさまじい切れ味だとよろこんで使っておったんじゃが、そのあと見る見るうちに衰弱していってな。結局はそのまま死んでしまったんじゃよ」
なるほどな。おそらくだがその人はMPを持っていなかったのだろう。
だからMPの代わりにHPを吸われていきそのまま亡くなったというわけか。
「俺はどうやら問題ないようです。それでですがこの武器是非買いたいのですが、お値段のほうはどれくらいでしょうか?」
「ああ、そんなもん置いといても誰も買っていかないからただでええわい!」
「本当ですか?」
やったぜ!
「ああ、じゃが一つだけ約束じゃ。死んでくれるなよ?わしがそいつを売ったせいでお前さんが死んじまったら寝ざめが悪いからのう」
「わかりました。大丈夫です。俺は死ぬのが大っ嫌いですからね」
「は!死ぬのが嫌いじゃないやつなんてこの世におらんじゃろ!」
まぁたしかにな。
「では自分はこれから用事はあるので失礼しますね。いいものをありがとうございました!」
そう言い残し俺は武器屋を後にした。
いやぁいい買い物ができた!満足だ!
しかしデーモンリッパーは持っているとMPを消費していく。
使わないときはアイテムボックスに入れておいたほうがいいな。
気配遮断とデーモンリッパーの併用も気を付けないとな。
さてそろそろ昼前か。
丁度いいしこのままギルドに向かうとしますか。
最後まで見ていただきありがとうございます!




