第42話 帰還
オークのいた森から走り始めて数分後、
俺は無事にフロックスまでたどり着いていた。
しかし、
改めて考えると恐ろしいスピードで着いたな……
行きは歩きだとしても数十分はかかってた。
それが帰りはほんの数分だ。
まさかlevelが上がって素早さが100を超えた影響がこれほどとは……
しかも全速力で走ったのにまったく疲れはない。
もう俺は馬車や馬で移動するより走ったほうがよさそうだな。
とりあえず門番のおじさんにギルドカードを見せて、街の中に入る。
さて、とりあえず依頼の報告だな。それとオークキングの事も報告しなければ。そういえばオークキングはステータスを見る限り、Bランクを超えていると思う。おそらくはAランクだろう。それを倒したのだからまた冒険者ランクが上がるのだろうか。少し楽しみだな……
そんな事を考えながらギルドに向かい歩いていく。
しかし相変わらず人が多いことだな。
少しでも油断すると誰かとぶつかりそうになってしまう。
歩き始めて数分後、
無事にギルドまでたどり着いた。
扉を開けて中に入っていくと、
「おおおユーマ!!お前にしては遅いから心配したじゃねえか!!」
おそらくは俺を待っていてくれたのだろうか。
グレースさんが速攻で俺に話かけてきた。
相変わらずなお人よしな人だな。
「心配してくださってありがとうございますグレースさん。」
「ばかやろ!俺は心配なんてしてねえよ!お前がいつ帰ってくるか気になってただけだ!」
おい、おっさんのツンデレはちょいときもいぞ……
「しかしユーマ、まじめな話、お前ならオークくらいぱぱっと片づけてもっと早く帰ってくると思ってたんだが。なにかあったのか?」
グレースさんは随分と俺のことを買ってくれているようだ。
「いえね。たしかに依頼のオーク3体はすぐに終わったんですよ。けどそこで帰ろうとしたときに身長が通常のオークの1.5倍ほどのサイズのオークを見つけましてね。」
ん?、あれ。さっきまでギルドは結構にぎわっていたのに急に静かになったぞ。
ふと正面のグレースさんを見てみるとさっきまで笑い顔だったのが真剣な顔になっている。
「おい、ユーマ。お前の今いった少し変わったオークってもしかして色は紫だったか?」
おお、いつになく真剣なグレースさん。若干かっこいいぞ!
それはともかく、
「そうですね。色は紫で人では持つのも困難だと思われるこん棒のような物を持っていました。」
俺がそういった瞬間、
ギルド中が一気にざわめき立った。
そこら中から声が聞こえてくる。
「お、、おいあいつが今言ったのってオークキングじゃねえのか!!?」
「あああ!色が紫で体は通常の1,5倍!特徴も一致してやがる!!!」
「や、、やべえぞ!本当にオークキングがいるっていうならオークを連れてこの街にせめて来るかもしれねえぞ!!」
「お、俺は逃げるぞ!オークキングっていえばAランクの魔物じゃねえか!俺らが束になっても勝てる相手じゃねえ!」
へぇ、やっぱりオークキングはAランクの魔物だったか。
まぁBランクに収まる強さだとは思わなかったから納得だな。
俺がそんな事を考えているとグレースさんが、
「落ち着け!俺らが焦ってどうするんだ!それにいくらオークキングが出たからっていますぐせめて来るとも限らねえ!まずは準備だ!それとだ」
そういうとグレースさんは俺の向かって、
「すまねえなユーマ。依頼が終わって帰ってきたばっかのお前に頼むのは気が引けるんだが、力を貸してくれねえか?いまこの街には最高でBランクの俺しかいねえ、しかも武器なしだ。お前の力がいる!すまんが手を貸してくれ!頼む!」
うーん、そんな事言われてもなぁ……
「えーとですねグレースさん……」
「本当にすまねえと思ってる!この街に来たばっかりのお前にこんな事頼んじまって」
「いやだからですねぇ」
「けど俺たちこの街に長くいるやつらにとっちゃここは第二の故郷みてえなもんなんだ!頼む!」
「オークキングなら俺が倒しましたよ?」
「頼む!お前にしか頼めな……ん?……いま何て言った?」
「いやだからオークキングは俺が倒しましたよ。そのせいで帰ってくるのが遅くなったんですよ。」
オークキングはすでに倒したというと騒がしくなっていたギルド内がいったん静まり返り、そして……
「「「「「なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」」」」」
煩いな……
「嘘だろ!あいつが一人でオークキングを倒したっていうのかよ!!」
「さすがにありえねえだろ!嘘はいい加減にしろよ坊主!」
「いやでも、あいつ昨日登録したばっかなのにコカトリスを倒したやつだぜ。もしかしたらオークキングだって……」
「いやいや、さすがにコカトリスとオークキングはlevelがちげえよ!さすがに無理だって!!!」
ふむ。信じていない方が圧倒的に多いな。
まぁ仕方ないことか。俺だって逆の立場ならおそらく信じないだろう。
そう考えているとグレースさんが、
「ユーマ、さすがに今回は俺でもちょっと信じ切れねえ。お前の実力は分かっているつもりだが、すまねぇな」
「いえ大丈夫ですよ。俺もグレースさんの立場だったら絶対信じませんから。まぁけど倒したのは事実なんで、どうでしょう?この場にオークキングの死体でも出しましょうか?」
「あ、ああ。そうしてくれると助かる。あとここじゃ狭いから奥の解体場で確認させてもらうぜ」
「わかりました。では行きましょうか」
そういうと俺とグレースさんは解体場まで歩き始めて。
後ろを大量の冒険者がついてきているがまぁ気にしないでおこう。
さて、解体場に着いた。
お、前コカトリスを解体させてもらったおっさん発見。
一応出してもいいか確認しておくか。
「すみません。少し場所を借りてもいいでしょうか?」
「おお、昨日のコカトリスの小僧じゃねえか!またなにか魔物でも狩ってきたのか?いいぜ好きなように使ってくれや!」
「ありがとうございます」
よし確認はとった。
じゃあ早速オークキングお披露目といきますか!
首はないけど……
「じゃあグレースさん早速オークキング出しますね」
「ああ頼む」
そうして俺はアイテムボックスの中からオークキングの死体を取り出した。
うーんやっぱりでかいなぁ……
すると……
「「「「うおおおおおおおおおおおおお」」」」
「本物!本物のオークキングだぜこりゃ!!」
「でけええ!俺は初めてみるが通常のオークと迫力が段違いじゃねえか!」
「あの坊主の言ってたことは本当だったんだな!」
「いやもう坊主なんて呼べねえぞ!!ユーマさんだ!」
グレースさんも大笑いしながら俺に寄ってきて、
「疑っちまって悪かったなユーマ!この街の恩人だぜお前はよ!まったく大したもんだ!」
「街の恩人は大げさじゃないですか?」
「いや、実際この街にオークを連れてオークキングが攻めてきてたら守りきれたかわからん!そのくらいAランクの魔物ってのは恐ろしいんだ!それを一人で倒すってのはお前が考えている以上にすげえことなんだぜ。街の恩人でも言い足りねえくらいさ!」
そこまで言われると少し照れてしまうな。
解体所のおっさんも寄ってきて、
「お前さん、またすごい魔物持ち込んだな!。昨日がコカトリスで今日がオークキング。でこのオークキングはギルドに売ってもらえるのか?」
「はい。お売りしますよ。それとオークがアイテムボックスの中に結構いるのでそれも買い取ってもらってもいいですかね?」
「ああ、構わん」
「ありがとうございます」
それじゃアイテムボックスからオークを取り出すとしますかね。
数分後、
目の前には首なしオークの山ができていた。
「お、お前さんこれはまた随分と大量だな。20体以上はいそうだ。金についてはコカトリスと同じようにギルドに預けておけばいいか!?」
「はい。お願いします」
さて、あとは依頼の報告だ。
ギルドに戻るとするか。
そう思いグレースさんと解体場を後にしようとすると後ろから、
「なんだ、このオークの数は!」
「こいつら全部首なしだぜ。しかも切断面がきれいだ。おそらく一撃で仕留めてやがる」
「まるで……首狩り……だな」
「首狩りのユーマか」
なんかすごい物騒な呼ばれ方してるんだが……
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