第40話 油断
さて、どうしようか。
ステータスを見た限り、これまで見た生物の中で間違いなく最強。
力や体力などはグレースさんの2倍くらいはある。
素早さや幸運はそれに比べるとかなり低いが、やはりそれでも高い。
見たことのないスキルにも注意が必要だな。
グレースさんは上位種を見つけたら迷わず逃げろと言っていた。
おそらくこいつから逃げるのは容易いだろう。気配遮断を使えばいいだけの話だ。
しかし敵を目の前にして逃げるのか……
俺が考えていたのは数秒だった。
よし倒すか。やっぱり魔物は駆除しないとな。
それにこの森は街から割と近い。もし森からでて街に被害が及んだら大変だ。
しかしなんか俺この世界に来てから好戦的になってる気がする……
そうときまれば準備だ。
まずはHPとMPが減っているかもしれないからポーション飲んで回復させておく。
ステータスを見てみると両方MAXになっていた。
次に武器の用意。まぁポイズンナイフで問題ないだろう。
一撃で仕留められない場合はこいつで時間をかけて仕留める。
後は、ここらにいるのはオークキング1体だけだな。
もし戦っている最中に取り巻きのオークでも現れたら厄介だ。
よし、大体の準備は終わった。
じゃあそろそろ、
気配遮断を使い、片手にポイズンナイフを持ち、
「よし、やるか!」
俺は隠れていた草むらから一気に飛び出した!
俺は一気にオークキングの元まで全速力で走っていく!
オークキングの気づいた様子はない!
いける!
そのままの勢いでオークキングの首にナイフをぶち込む!
「ブオオオオオオオオオオオ!!!」
ち、浅い!
しかも脂肪と筋肉で首の太さが半端ではない!
これは中々苦労しそうだ。
「ブオォォォオオオオオ」
自分が攻撃を受けていることに気付いたのだろう。
オークキングは大きなこん棒のようなものを、かなりの勢いで振り回し始める!
当たったら相当やばそうだな。当たればの話だが。
やはり俺の姿は見えていないのだろう。
やつの攻撃はただ単純に武器を振り回しているだけだ!
俺はこん棒を掻い潜り、やつの首付近に攻撃を加えていく!
「ブオオオオオオオ!」
おっとあぶねえ!乱暴に振り回されたこん棒が俺の体をかすめていく!
さすがに見えていなくても、ここまで振り回されたら怖いな。
そしてその行動を繰り返し数十秒後、
ん!?オークキングの動きが鈍くなってきたか!
さすがにこんだけ切り付けていたら毒も回るか。
逆にここまでしないとだめってどんだけタフなんだよこいつは!!!
しかし動きが鈍くなってきたのならチャンスだ!
俺はオークキングに止めを刺すために、懐に入り込んでいく!
こん棒の攻撃もこない、いける!
俺はポイズンナイフをオークキングの首に刺し込む!
手ごたえあり、このまま掻っ切る事ができれば俺の勝ちだ!
そう思いナイフを振りぬこうとする。
しかしそこで異変に気付く!
ナイフが、動かない……だと……
何で動かない!まさか筋肉の締め付けか!
はっきりとした理由は分からない。
俺が思考を巡らせていると、
「ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
オークキングの今までで一番の叫び声が響き渡る!
なん、、だ、、体が動かない。
まさかこれが雄たけびか!
そして動けない俺に向かってこん棒が迫ってくる!
まずい、このままだと俺の首辺りに直撃する!
動け、、動けえええええええええええ!!
「ブオオオオオオオオ」
「ぐぅうう!!」
なんとか両手を動かすことに成功しガードすることができた。
しかしなんて力だ、かなりの距離を吹き飛ばされてしまった!
「ブゥゥゥウウウ」
オークキングは俺のいる方向を見て、息を吸い込み始める!
まさか!ここでブレスか!?
まずいぞ、俺の体は雄たけびの影響ですぐには動けない!
やつのブレスがどれほどの物かは分からないが、まともに比べば大けがは逃れられないだろう……
なにか盾になるものは!いやあるわけがない!そもそも武器くらいしかまともにもっていない!
どうすればいい!どうす……
いや……
あるじゃないか……盾になるもの……
俺はアイテムボックスからある物を取り出し、
次の瞬間オークキングのブレスが放たれる、
「ブォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
オークキングから放たれたブレスはかなりの熱量をもち、
俺の周囲を容赦なく燃やしていく……
やがてブレスが止まると黒焦げになった、人の遺体が現れた。
それを確認したオークキングは、
「ブォォオオオオオオオオオオオオオオオォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
勝利の雄たけびだろうか。
その声は森中に響き渡る……
煩いな……
オークキングの首に刺さったままのポイズンナイフを掴み、
「ブオオ!!??」
そのまま豪快に切り裂く。
「ブオオォォ……」
オークキングは糸が切れたように地面に倒れ込み、やがて絶命した。
「俺が言えたことじゃねえけど、戦いの最中に油断しちゃだめでしょ?まぁもう聞こえてないだろうけどさ」




