第38話 ゴリラ
……なんだ一体。
「てめえちょっとまぐれでラルドの野郎やコカトリスを倒せたからって、調子乗ってんじゃねえのか!!?新人は新人らしくゴミ掃除の依頼とかスライム討伐とかやってりゃいいんだよ!」
なんだこのゴリラみたいなおっさんは……。
どうやら俺がいきなりCランクになったことに対する妬みとかそんなもんだろう。
というか戦いにマグレはないだろう……。
まぁとりあえずこの偉そうなゴリラのステータス見てみるか。
{鑑定}
ゴリラスlevel31
力41
体力43
素早さ21
幸運1
{スキル}剣術level2
{称号}なし
「ぶぶっ!!!」
や、やばい!名前ゴリラそのまんまじゃねえか!!
ちょっと笑っちまった!!
「てめえこら!!なに笑ってんだ!!」
や、やばい!ゴリラさんを怒らせてしまった!
い、いやしかし、意外とゴリラさん強いな。
さすがにグレースさんと同等とはいかないが、ラルドと同じくらいの戦闘力はあるんじゃないか。意外と実力派ゴリラなのか!
「す、すいませんゴリラさん。笑ってしまい申し訳ないです。少しゴリラさんと似たような顔をしている動物を知っていたものでつい……」
俺がゴリラさんにそういうと、ゴリラさんは顔を真っ赤にして、
「てめえまじふざけんじゃねえぞ!俺を誰だと思ってやがる!」
いや俺はギルドに登録したの昨日なんですよ。
あんたの事なんて知るわけないでしょうに。
「すいませんゴリラさん。俺は昨日ギルドに登録したばかりでして……あなたの事は知らないです。」
俺がそういうとゴリラさんはさらに顔を真っ赤にして、
「てめえいい加減にしろよ!俺はCランク冒険者のゴリラス様だ!ゴリラじゃねええ!よく覚えとけ!」
ほう。このゴリラさんCランク冒険者だったのか。
なるほど強いはずだな。
で、このゴリラさんはなんで俺に喧嘩を売ってきたのか。
「それはすいませんでしたゴリラさん。それで一つ質問なのですが、なんで俺に喧嘩を売ってきたのでしょうか?調子に乗っていたと思われていたのなら謝ります。すいませんでした。」
おっとまずい、ついまたゴリラと呼んでしまった!
「てめえさっきからゴリラゴリラってもう許さねえぞ!ぶっ殺してやる!」
そういうとゴリラさんは大剣を抜いて俺に斬りかかってきた!
おいおい!ここはギルドの中だぞ!こんなことしていいのかよ……
しかし、遅いな。
levelが上がった影響だろうか。ほぼ止まって見えるスピードだ。
俺は余裕をもってゴリラさんの攻撃をかわす。
「すみませんゴリラスさん!さっきまでの事は謝りますので武器を下げてもらえませんか?」
「うるせぇ!てめえ、よけてんじゃねえぞ!!」
そう言い再度攻撃を仕掛けてくるゴリラさん。
いや普通はよけるでしょうよ。うーむ話を聞く気0だなこれは……
しかしこのゴリラさんあきらかに俺を殺す気だよなこれ。
つまり、
このゴリラ殺していいってことかなこれは……
俺がそんなことを考えているとメルさんの声が聞こえてきた。
「やめなさーい!ゴリラスさん!ギルドでの武器を使っての戦闘行為は処罰対象よ!いますぐ武器をしまって戦闘をやめなければギルドから除名するわよ!」
「うるせえぞくそ女!あんまり言うならてめえから殺しちまってもいいんだぞこら!」
おっとこのゴリラ、メルさんにまで手を挙げるつもりなのか。
それはいけないな。
とりあえず殺すのはやめておいて、両手両足の骨でも折っておきますか。
俺はとりあえずゴリラの足をローキックの要領で力一杯蹴り抜き、
地面に倒れさせる。
「ギャアアアアアアア」
あれ、どうやら今のキックで片方の骨は折れてしまったようだ。
おいおいゴリラ骨がもろいぞ、カルシウムとらなきゃ。
まぁとりあえず一本目。
もう片方の足の同じように折っておくことにしよう。
倒れて伸びている足を思い切り踏みつける。
「ギャアアァァァ……」
そうゴリラは叫ぶと目を開けたまま動かなくなった。
あれ、どうやらゴリラは痛みで気絶しちゃったみたいだなこれは。
うーん仮にも冒険者ランクCが痛みで気絶ってどうなんだよ。
まぁこの様子だと両手の骨は折らなくてもよさそうだな。
そしてふと周りを見てみると俺をまるで怖いものでも見るかのような視線が集まっていた。
おいおい、俺は襲われたから仕方なく対処をしただけだぞ。
しかも相手は武器まで出して俺を殺す気だったのに気絶で済ませてやったんだからむしろ優しい方だろ!
そんなふうに考えているとメルさんが、
「ユーマ君お疲れ様。このゴリラスって冒険者はギルドの方で預からせてもらうわね。おそらくギルドを除名された後、奴隷送りになると思うわ。」
「そうですか、ありがとうございます。それと一つ聞きたいのですが?」
「なにかしら?」
「俺に罰ってありますかね?」
「ないわよ。明らかにゴリラスって男はユーマ君を殺す気だったわ。たとえユーマ君がここでゴリラスを殺してしまったとしても正当防衛になるはずよ」
へぇ、じゃあ殺してしまっていたとしても問題なかったわけか。
まぁいいや。
「それはよかったです。じゃあ俺は今度こそオーク討伐に行ってきますね」
「ええ気を付けていってらっしゃいね」
今度こそ俺はギルドを出ていく。
すると出てすぐに聞き覚えのある声が耳に入る。
「よおユーマじゃねえか!」
おお、この懐かしい声は、
「おお、グレースさんじゃないですか!久しぶりですねぇ」
「おいおい!久しぶりって昨日会ったばかりじゃねえか!まぁそれは置いといてだ、ギルドが騒がしかったみたいだけどなにかあったのか?」
「ええ、俺が依頼を受けようと思ったらゴリラスって人が絡んできましてね」
「ゴリラスだと!あの荒くれ者かよ!大丈夫かユーマ?何かされなかったか!?
」
へぇ、どうやらあいつは悪い意味で有名だったみたいだな。
「ええ、見てのとおり怪我の一つもありませんよ。しかし武器までとってこちらを攻撃してきたので、少々痛めつけておきました」
「ほほう!あいつは性格はともかく実力は割とあるのにさすがユーマだぜ!それでこれからどんな依頼受けるんだ?」
「オークの討伐ですね。」
「ほう、オーク討伐っていうとあの森辺りか!まぁあそこはこの街からそれほど距離があるわけじゃねえから迷うことはねえな!」
近いなら迷うことはなさそうだ。よかったよかった。
「一つだけ忠告しておくぜ。ただのオークくらいなら、いまのユーマなら楽勝だろうが、いまあそこ一帯でオークが以上に増えてやがる。もしかしたら上位種がいるかもしれないから気を付けろよ」
上位種?
「すみません、上位種とはいったい?」
「ああ、稀に通常の魔物より強力な上位種が生まれることがあるんだ。で、最近オークが異常に増えてやがるから少し怪しくてな。まぁそんなこと滅多にないから取り越し苦労だといいんだが」
ほう、そんな事もあるのか。
若干興味はあるな。
「まぁ見た目で分かるとは思うからそいつを見かけたらすぐ逃げろよ?いいな?」
「わかりました。大丈夫です無茶はしませんよ」
「ならいいさ!よし行って来い!」
「はい行ってきますね」
そう言い俺とグレースさんは分かれた。
まぁ上位種は滅多に出ないそうなので会うことはないだろう。
さすがにそんな偶然はないない。
そう考えながら俺は街をでてオークのいる森に向かっていった。




