第36話 リサ
……ん、朝か。
昨晩夕飯を食べ終えた俺はすぐ部屋に戻り、
ベッドに横になると気づいたら眠りに落ちていた。
あの長旅にフロックスに着いてからの騒動。なんだかんだ俺も疲れていたのだろう。
さてと、そろそろ起きるとするかな。
そう思い俺はベッドから体を起こした。
さて、今日は何をしようか。
初めてフロックスに来た訳だしゆったりと観光するのも悪くない。
それとも依頼を受けてお金稼ぎやlevel上げでもしようか。
まぁとりあえずギルドにでも顔を出してみるとするかな。
「よし、とりあえず行くか」
俺は部屋から出て階段を下りる。
するとすぐにサリーが俺を見つけて声をかけてきた。
「あ、ユーマさんおはようございます!昨日はよく眠れましたか?」
「おはようサリー。昨日は久しぶりにぐっすり眠ることができたよ。ずっと野宿ばかりだったからね。大満足だよ」
「よかったです!じゃあユーマさん座って待っててください!すぐ朝ごはん持ってきますから!」
あれ。夕飯だけじゃなく朝ごはんまででるのか。
これはありがたいな。
「ありがとね」
それから数分後朝ごはんを持ってサリーは俺の座っているテーブルにやってきた。
「はいユーマさんこれ今日の朝ごはんです!」
ふむ、スープとパンか。定番だけど非常に美味そうだ。
「ありがとサリー」
サリーにお礼をいい俺は朝ごはんを食べ始めた。
するとサリーが俺の向かいの席に座って話し始めた。
「ユーマさんは今日なにか予定でもありますか?」
予定か。まぁとりあえずギルドにでも行ってみようかと思っているが、それだけだな。
「いや、ギルドに行ってみようかなと思っていたくらいでこれといった予定は今のところないよ。」
俺がそういうとサリーは少し安心したような顔をして、
「そ、そうですか。じゃあユーマさん今日私と昨日言ったリサのお店に行ってみませんか?」
リサのお店?……ああ、マジックアイテムを扱っているお店だっけか。
そういえば今度一緒に行こうって話をしていたな。
しかし昨日病気が治ったばかりで今日いって大丈夫なのだろうか。
「俺は全然いいよ。けどサリーの友達の子は大丈夫なのかい?昨日病気が治ったばかりで早速今日なんて」
「はい!昨日薬を飲んだ時点でかなり元気だったので大丈夫だと思います!薬を調合してくれた方も一晩寝たら大丈夫と言っていたので!」
なら大丈夫か。
「なら朝ごはんを食べて少ししたら一緒に行こうか。」
俺がそういうとサリーは物凄い笑顔になって、
「わ、、わかりました!!!じゃあ私準備してくるのでユーマさんはゆっくり朝ごはん食べていてください!」
そう言い残しサリーは走り去っていった。
それから数分で俺は朝ごはんを食べ終わり、サリーが戻ってきたのはさらにその数分後だった。しかし随分可愛らしい服装だ。うむ似合っておられる。
「ユーマさんお待たせしました!」
「いやそこまで待っていないから大丈夫だよ。じゃあ行こうか」
そう言い俺とサリーは宿屋を出てリサという子のやっている店に歩いて行った。
まぁ俺は場所を知らないのでサリーに付いていくだけなのだが……
しかしこうして歩いているとやはり大きな街なのが分かる。
周りをみてみるだけでも実にいろいろなお店がある。食料品を売っている店や、
ポーションなど冒険者用の道具屋、衣服などを売っているお店などもある。
そんな事を考えながら歩いているとサリーが、
「そういえばユーマさんはなんでこの街に来たんですか?」
「ああ、バリス村の近くの森で偶然盗賊を倒しちゃってね。それでその盗賊の賞金を受け取るためにこの街まで来たってわけさ」
「それじゃユーマさんはそれが済んだらこの街からすぐいなくなっちゃうんでしょうか?」
サリーはなぜか泣きそうな顔でそんな事を聞いてきた。
「いや、当分この街にはいるつもりだよ。少なくともあと数か月はいるつもりさ」
俺がそう答えると泣きそうだったサリーの顔は一転笑顔に変わった。
「よかったです!あ、もうすぐ着きますよ!」
どうやら俺たちは目的の場所に着いたようだ。
ふむ、ここがサリーの親友のやっているマジックアイテムのお店か。
外観は少し古臭いな。だけどまぁそれがいい味を出しているかもしれない。
そんな事を考えているとサリーが店の中に入っていったので、
俺も一緒に入っていった。
中を見てみると見た目綺麗なものから下手したらガラクタに見えそうな物まで色々な物が置いてある。
これが全部マジックアイテムなのだろうか。だとしたら、すごいな……
「リサー!昨日話したユーマさん連れてきたよ」
サリーがそう声をかけると奥の扉から一人の少女が現れた。
現れた少女は綺麗な黒髪を短めに切りそろえ、目はキリっとしている。
非常に中性的な見た目だ。
一目みただけじゃ女性か男性か判断するのは難しいだろう。
その激しく主張している胸を見なければの話だが……
「やぁ初めまして。君が私を助けてくれたユーマ君かな?私の名前はリサというよろしく。昨日からずっとお礼を言いたかったんだ。私を助けてくれてありがとう。おそらく君がいなかったら私は近いうちに亡くなっていたと思う……」
ふむ。俺はサリーの親友だから助けようと思っただけなのだが。
まぁいう必要はないか。
「礼は受け取っておくよ。それと体調は大丈夫か?」
「ああまったく問題ないさ。若干体に疲れが残っている感じもするけどまぁそればっかりは仕方がないね」
ふむ、やはり一日では体の疲れまでは治らないか。
そういえば……この世界の回復魔法ってやつは体の疲れも治したはずだ。
試してみるか。
「リサ、少し回復魔法を試してみたいんだがいいか?」
俺がそういうとリサとついでにサリーも驚いたような顔をする。
「君は回復魔法を使えるんだね。」
なんでそこで驚くんだよ!もしかして回復魔法って貴重なのか!?
「すまん。回復魔法って珍しい物なのか?」
俺がそう質問するとリサが、
「ああ、回復魔法ってのはね覚えようとして必ず覚えられるってわけじゃないんだ。ある程度の天性ってやつが必要なんだよ。だからほかの攻撃魔法とかよりも貴重ってわけさ」
なるほどな。
「それで回復魔法を私に使うかなんだが、是非試してほしい」
「初めにいっておくと俺は回復魔法を人に使うのは初めてだ。いいんだな?」
「君は私の命の恩人さ。そんな君を信用せずに誰を信用するっていうんだい?」
そこまでいうなら使わせていただこう。
コカトリス用にlevelを3まで上げたヒール!使うのは初めてだ!
「じゃあいくぞ{ヒール}」
俺が魔法を発動すると手の先から青白い光がでていき、
その光がリサの体の中に入っていく。
さて効果はあっただろうか。
「どうだリサ?なにか体に変化とかはあるか?」
俺がそう声をかけてもリサはしばらく呆然としていた。
数秒後やっと動き出した。
「なんだい、これは。体の疲れとか全部なくなっている。いやむしろ病気になる前より体調がいいくらいだ……」
どうやら効果はあったみたいだ。よかったよかった。
「そうか。効果があってよかった。」
「効果があった、どころの話じゃないんだけどね。これだけ強力な回復魔法を使えるならおそらく学園の教師にでもなれると思うよ」
まじか!俺の回復魔法まだlevel3なのに。
これlevel10にしたらどうなるんだよ。想像がつかない……
「それはともかく、ありがとうユーマ君。これなら今日からでも店の方を再開できそうだよ。」
「そいつはよかった。それなら早速マジックアイテム見せてもらってもいいか?実はすごい気になっていたんだ!」
「いいよ。是非見ていってくれ」
よし!じゃあ早速どんな物があるのか見せてもらうとしますか!




