第33話 報告
走り始めて数分後俺は無事にフロックスにたどり着くことができた。
するとなんとグレースさんが門で待っていてくれた。
俺を見たグレースさんは慌てて俺に寄ってきて、
「ユーマ!?まだ数時間しかたってないぞ!なにかトラブルでもあったのか!?」
ああなるほど。グレースさんはなにかトラブルでもあって途中で帰ってきたと思っているわけか。
「いえなにもトラブルなんてありませんでしたよ。コカトリスも無事討伐することができましたし。」
そう俺が告げるとグレースさんは物凄く驚いた顔をして。
「なにぃいいいいいいい!こんな短期間でストン森林まで言って討伐をして帰ってきたっていうのか!?お前特別な移動手段でも持ってんのか!?」
「いえ走っただけですよ」
「走っただけってお前……ああ、もういいや。とっととギルド行って嬢ちゃんに無事を知らせてやれ。多分めちゃくちゃ心配して待ってるだろうからな」
ほう。サリーもギルドで待っていてくれているのか。
それは急いで行かないとな。
「わかりました。急いで行ってきますね。あ。その前に一つだけ。コカトリスの解体がまだなんですがギルドでやってもらう事ってできますかね」
「ああそれならギルドの奥にある解体所でやってもらうことができるぜ」
よかった。俺は解体などできないからどうしようかと思っていたのだ。
もしもの時はグレースさんにやってもらうつもりだった。
「なるほど。ありがとうございます。じゃあ自分はギルドに行ってきますね。グレースさんもわざわざ待っていてくれてありがとうございました。」
俺がそう礼を告げるとグレースさんは照れているようだった。
おっさんが照れ顔をみても欠片もうれしくないがやはりいい人だ。
俺は照れているグレースさんを後目に冒険者ギルドへと向かった。
数分後無事ギルドに着くことができ、
扉を開けて中に入ると凄い勢いでサリーがこちらに近寄ってきた。
顔が近いぞサリーよ。
「ユ、ユーマさん無事でよかったです!ユーマさんが私のせいで死んじゃったらってすごい心配で……」
「心配かけてごめんね。でもこの通り怪我もなにもないから心配しないでいいよ。コカトリスも無事に倒せたことだしね」
「え、ユーマさん本当にコカトリス倒してきてくれたんですが!あ……いえ疑ってるわけじゃないんですけどあまりに帰ってくるのが早いし、その、ユーマさん何も持ってないので……」
ああ、そういえばサリーは俺がアイテムボックスを使えることを知らなかったな。なら疑っても仕方がない。俺はいま何も持っていないのだから。
「ああ、俺はアイテムボックスを持っているからね。その中にちゃんとコカトリスは入っているよ。早く帰ってこれたのは比較的早くコカトリスを見つけることができたのと走って移動していたからだね!」
「走って、ですか。それにしてもユーマさんアイテムボックス使えるんですね!すごいです」
「ありがとね。じゃあ俺はコカトリスの解体を頼んでくるからまた後で」
そういい俺はギルドの奥にあるらしい解体所を探しに行った。
幸い解体所はすぐに見つけることができた。
誰かいるかなと辺りを探してみると、大きな包丁のような物を持ったおっさんがいたので、とりあえずそのおっさんに話かけてみることした。
「すみません。魔物の解体をお願いしたいのですが大丈夫でしょうか?」
「解体か、問題ねえやってやるよ。でどいつだ?」
「コカトリスですね」
そう言い俺はアイテムボックスからコカトリスを取り出す。
俺がコカトリスを出すとおっさんは少し驚いた顔をした。
しかしすぐに元の表情に戻り。
「ほう。コカトリスとはこりゃまた珍しい魔物を持ち込んだもんだな。しかもお前たしか今日ギルドに登録したばかりの新人だろ?大したもんだぜ」
この人俺が今日登録したばかりだって事知ってたのか。
「俺が今日登録したばかりだって事よくしってましたね」
俺がそういうとおっさんは少し笑いながら、
「そりゃお前さんいまギルドの中じゃちょいと有名人だぜ。何しろ冒険者にもなっていない坊主があの赤目のラルドを倒したっていやぁいやでも注目を集めるぜ。しかもだ、登録したてでlevelが29だぁ!?俺はそんなやつ聞いたことねえよ!ギルドでも将来有望な新人ってめちゃくちゃ騒がれてるぜ」
なるほど。
俺は自分の知らない間にちょっとした有名人になってしまっていたようだな。
まぁ仕方のない事だろう。
まぁその話はとりあえず置いといてだ、
「なるほど。それでコカトリスの解体はどのくらいで終わりそうですかね?」
「ああ、おそらく数十分で終わると思うぜ。あとコカトリスの素材はどうする?必要ないならこっちで全部買い取るが?」
素材か。心臓以外は別に用はない。
そのまま売ってしまってもいいだろう。
「そうですね。なら心臓以外はここで買い取ってもらっていいですかね。心臓だけはなにか別の入れ物にでも入れておいてくれると嬉しいです」
「分かった。で、坊主はどうする?終わるまでここで見てくか?」
ふむ。別にいま他にやることは特にない。
もしかしたらなにか得られるかもしれないな。見ていくとするか。
「では見ていくことにします。解体のやり方なども少し見ておきたいですから」
「おう!しっかり見て勉強しておけよ坊主!」
それから数十分後無事解体は終わったようだ。
「よしこれで終わりだ!コカトリスの素材の買い取りについては後日ギルドに連絡しておくからよ!おそらく2~3日くらいで連絡がいくはずだぜ」
「わかりました」
「それとこれがコカトリスの心臓だ」
俺はおっさんからコカトリスの心臓が入った容器を受け取った。
結構でかいな。まぁこれくらいの重さならサリーでも持ち運べるだろう。
「ありがとうございました。これからもちょくちょく魔物を持ち込むかもしれないのでよろしくお願いします」
「おう!そしたらまた買わせてもらうぜ」
よしこれで無事コカトリスの心臓ゲットだ。
俺はサリーが待っているだろうギルドの中に戻っていった。
ギルドの中に戻るとサリーがイスに座りながらも、
落ち着きのない表情をしながら俺を待っているようだった。
俺を見つけると顔に笑顔が戻り近づいてきた。
「ユーマさんコカトリスの解体お疲れ様です!」
俺はなにもやっていないんだけどな……
「ありがとう。それでこれがコカトリスの心臓が入ってる容器だ。決して重くはないけどなるべく慎重にね」
俺はコカトリスの心臓が入った容器を慎重にサリーに渡した。
「ありがとうございます!これでリサを助けることができます!本当にユーマさんにはなんてお礼を言ったらいいか。後日改めてお礼をさせてもらってもよろしいでしょうか?」
「うーんお礼なんていらないんだけどな。依頼料も貰っちゃうわけだし。。」
「それでもなにか!」
「うーん……あ、じゃあさ俺宿はサリアさんのとこに泊まる予定だからそこで美味しいものでも作ってくれるとうれしいな。俺最近同じ物しか食べてないからさ」
「美味しいものですか、わかりました!私一生懸命毎日ユーマさんのために作ります!だから絶対ジニアに来てくださいね!」
サリーはそう俺に言い残しギルドを去っていった。
毎日作るか。まぁ当分の間この街にはいる予定だからそうなるか。
さて依頼の報告でもしようかとお姉さん……、
じゃなくてメルさんの所に行ったところ妙にニヤニヤしていた。
「ユーマ君もなかなか隅に置けないわねぇ」
なにを言っているんだこの人は。
「何を言っているか分かりませんが依頼の報告をしてもいいでしょうか」
「もう照れちゃって~、まぁいいわ。依頼の報告ねちょっと待ってて」
数分後。
「お待たせ。これがコカトリス討伐の報奨金金貨5枚よ」
5枚!?随分多いな。ラルドの2倍以上じゃないか!
まぁたしかコカトリスはBランク相当といっていたから妥当なのかもしれないな。
「ありがとうございます」
「こんな無茶もうしちゃだめよ。何回もいうけどユーマ君は期待の新人なんだから。今度からはちゃんとCランクの依頼を受けるようにね」
「ご心配ありがとうございます。まぁこんな無茶早々しませんよ」
あ、サリーのいる宿のジニアの場所を聞いていなかった。
「すみませんメルさん。ジニアという宿がどこにあるのか教えてもらってもいいでしょうか?」
「ジニア?それならここを出て3分ほど歩いた所にあるわ。」
ほう。かなりここから近いようだ。
それなら色々便利そうだな。
「メルさんありがとうございました。明日からも利用することになると思うのでこれからもよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくね」
そう言い残し俺はギルドを出ようと出口に歩いていく。
しかしすぐ異変に気付く。
なんだこの視線は、
嫉妬の視線が大多数のようだが、中には明確な敵意のこもった視線をぶつけてくる者もいる。
まぁ気にしても仕方ないかと思い、俺はギルドを出ていった。




