第28話 道中
バリス村を出てから数時間、俺たちは比較的ゆったりと歩きつづけていた。
暇だな、なにかやることでも・・いやあるわけないな。
そんなことを考えているとグレースさんが話かけてきた。
「そういえばユーマはなんであの森にいたんだ?」
森にいた理由・・か。転移したら偶然あの場所だったなんていえないな。
「狩りをしていたんですよ。森にいるラビッツは食べるとおいしいですからね。」
「なるほどな、たしかにあれはうまい。特に丸焼きで食べると絶品だ」
なんだと・・あれで食べ方あってたのか・・たしかに絶品ではあったな。
そういえばグレースさんはPTとか組んでいないのだろうか。
「はい、あれは絶品でした。そういえばグレースさんはPTなどは組んでいないのでしょうか?」
俺がその質問をするとグレースさんは少し困ったように言った。
「ああPTか、少し前まで5人で組んでいたんだがな。ある事件が起こって解散しちまったんだ・・あの時は少々へこんだもんさ」
うわぁ・・これは聞いてはいけないことを聞いちまったかな・・
俺のそんな表情をみてグレースさんは苦笑いするように言った
「なに。少し前といってももう数年前のことだ・まったく気にしていないといえばウソになるだろうがユーマが気にすることじゃねえさ。むしろ一人になってせいせいしたくらいさ」
そういうグレースさんの顔は無理やり元気にふるまおうとしている感じだった・・
だがグレースさんが気にしていないという以上もうこの話は終わりだ
「そういやユーマこそPTは組んでねえのか?」
「ああ、俺は当分PTを組むことはないと思いますよ。詳しくは言えないけど俺のスキルは少々特殊でして大人数での戦闘に向いてないんですよ」
「なるほどな。あとスキルの内容を人に話さないのは正解だぜユーマ。それが特殊なスキルならなおさらな。どんなに身近なやつだろうと100%敵にならないなんて言いきれないからな」
そうだろう、そうだろう。特に俺のスキルは一見無敵に見えるが弱点も存在しているからな。その一つが広範囲攻撃だ。いくら姿を見えないようにできてもあたり一帯吹き飛ばされたら簡単にお陀仏だ。
その後は基本だまって歩きたまに世間話程度の話をしながら歩き続けていった。
数時間歩いていると辺りが暗くなってきた。
「よしユーマ、今日はここまでだ。ここで夜を明かすぞ」
「わかりました。俺はなにをしたらいいですかね?」
「ユーマはここにいていいぜ、俺はちょっくら焚き火用の木を拾ってくるからよ」
ん?焚き火用の木?それならアイテムボックスの中に大量にあるぞ。
「グレースさん木なら俺が大量に持ってますよ」
「なに、お前どこに持っているって・・ああそういうことか。たしかアイテムボックスを使えるんだったなユーマは」
グレースさんも俺がアイテムボックスを使えること知っているのか、まぁガントさんが話しているか。
「はい、適当な数ここに出しますね」
俺は洞窟で使った木の数の倍以上の木を取り出した。
「おう、これだけあれば余裕で朝まで持つな。あとは火だけだな。あー火出すマジックアイテムどこにしまったっけな」
へぇ・・火をだすマジックアイテムなんてあるのか。てかマジックアイテムってなんだ・・まぁいいか。それよりも。
「俺火魔法つかえるんで俺が火つけますよ」
「まじかよ。お前実はすごいやつか?まぁあいつらを一人で倒せる時点で十分すごいか・・じゃぁ頼むわユーマ」
俺はファイアボールを使い火をつけることに成功した。
うまくできてよかった・・最近火魔法使ってなかったから調整できるか少しだけ怖かったのだ・・
「サンキュー、じゃぁとりあえず飯でも食うとするか。はぁ当分また携帯食料かぁ・・」
「なにか問題があるんですか?」
「ああ、いやなに栄養は申し分ないんだ。栄養はな。ただ味がかなり・・まずいんだ・・」
まじか・・それはいけない。こんななにもない旅をしているのだ。飯くらいはおいしいものが食べたい!
「グレースさん、俺アイテムボックスにラビッツとパプゴ大量にあるのでそれ一緒に食べましょう。」
「おおまじか!俺も一緒に食べていいのか!?」
さすがにかなりまずいらしい携帯食料を食べてる人の前で俺だけうまいものを食べて平気なほど俺は鬼畜ではない。
「ラビッツもパプゴも大量にあるので問題ないですよ。むしろ俺だけ食べてると精神的にきついので一緒に食べてください」
「ありがてぇ。これから何日間かこの携帯食料しかくえねーと思ってたが救われたぜ・・ユーマお前いいやつだなぁ・・PT組むか?」
組まねえよ。
それから俺たちはパプゴとラビッツをおいしく食べていた。
食べながらこんな話をしていた。
「そういえばグレースさん、いまからいくフロックスってどういうところなんですか?」
「ああぁラビッツの丸焼きはやっぱうめえなぁ・・ん・・ああフロックスか。いい街だぜ。平和で争いも少なくて・・あと有名なところだとフロックス魔法学園があるな」
フロックス魔法学園?おそらく魔法を学べる学校のようなものだろうか・・まぁ俺には関係ないな、興味もないし行く気もない。
そんな話をしていると飯も食べ終わり
「ふぅ食った食った。さてユーマ、これから俺たちはここで寝るわけだが見張りをたてる必要がある、俺たちは二人しかいないから当然片方が寝ている間は片方が起きていなきゃいけないってことだ。時間は一人まぁざっと4時間としてお前は先に寝るか後に寝るかどっちがいい?」
ふむ、見張りの順番か、正直どちらでもいいがまぁ先にやっておくか
「なら俺からでお願いします。」
「よしわかった。なら俺は先に寝ることにするが火は消さないようにきをつけろよ。まぁお前なら消えちまっても魔法ですぐつけりゃいいだけだがな。あと何か起きたときはすぐに俺を起こせよ。絶対に一人で勝手な行動はとらないように。いいな?」
なんか子供に教えてるみたいだな・・まぁ俺は見張りなんて初めてだから仕方ないな。
「はいわかりました。なにか異常がおきたらすぐグレースさんをたたき起こしますよ。」
「よし じゃぁ俺は寝てくる・・・・・起こすときはゆっくりな頼むぜ・・」
そんなことをいってグレースさんは横になった。
そしてすぐいびきのようなものが聞こえてくる。
なんだこの人!寝るの早すぎだろう!い・・いやこれも冒険者には必要なことなのかもしれない。寝れるときはすぐに寝て体力を回復させる。
さてグレースさんは寝て俺一人になった
ふと空を見上げると綺麗だった。異世界でもきれいなんだなぁ。
これまで洞窟や宿で寝泊まりしていたので夜の空をみたのはこれが初めてだ。
こうして空を見ていると自分は異世界に来ているってことを忘れるな。
元の世界はどうなっているだろうか・・母さんや父さんは俺のような引きこもりが突然いなくなって喜んでいるのか・・それとも少しは悲しんでいてくれるだろうか・・
少しだけホームシックになりながら夜は更けていった。




