第105話 盗賊を助ける意味
お久しぶりです。
「頼む、俺は助けてくれ!」
盗賊を殲滅し始めてはや数分。
大体の盗賊は始末し終えて、残りはリーダー格の男だけとなった。
そして、リーダーの男は部下の死にざまを見て俺には叶わないと悟ったのか、無様に俺の目の前で土下座をして助けを請う。
「助けてくれ、ね。随分と虫のいい話だな?」
「すまん、本当に悪かった! 俺は今日限りで盗賊から足を洗う! これから先は人助けをしていくと約束する! だから、命だけは!」
「……月並みな言葉で悪いが、お前達は今まで襲った人間が助けてくれと懇願してきた時、どんな返事をした? そのまま殺したんじゃないか?」
「そ、それは……」
男は顔に冷や汗を流し俯く。
ああ、やはり何人何十人も殺してきたんだろうな。
最初から分かっていたが救いようはない。
「む、昔の事は本当に悪かったと思ってる! だから!」
「だから、何だ? お前が昔を後悔したところで、殺された人は戻ってこない。ああ、さっきの質問だけど、悪いが特に意味はない。最初から、お前は殺すつもりだからな」
「待っ―――」
男が言葉を言い終える前に、俺は男の首を掴み、そのまま首の骨を握りつぶした。
「ガハッッ」
男は最後に口から大量の血を吐き、無様に絶命した。
あ~あ、こいつは最後まで苦しめて殺そうと思ってたんだけどな、気分で殺してしまった~。
まあ、別にいいか。
実験はある程度は終わったところだ。
俺が周囲を見渡すと、そこには首から上がもがれていたり、体が複数の穴が開いていたり、人間と戦ったとは思えない程に凄惨な闘いの後が広がっていた。
まあ、やったの俺なんですけどね~。
だけどまあ、ある程度は力が把握できた。
どれくらい力を入れれば人間を壊せるか。
ああ、それが分かっただけでも収穫だ。
俺がそう呑気に考えていると、盗賊に襲われていた4人組が近づいてきて。
「あの、いいか?」
「はい、何でしょうか?」
「先程は助けてくれて本当に助かった。おそらく、あんたがこなければ俺達は全員殺されていただろう。本当に感謝する!」
そうして男が頭を下げると周りの男性一人と女性二人も同様に頭を下げる。
しかし、何故か女性の内の一人が俺に対して睨んでいるように感じるな。
あれ~、俺って助けてあげたんだよな?
何でそんな敵意込めて睨まれているのかね~?
「もし良ければ、あんたの名前を教えて貰ってもいいか?」
後でお礼をしたい。
そう言った男に俺は普通に名前を教えた。
「俺の名前はユーマ、首狩りと呼ばれています」
「―――あんた、いやあなたが有名な首狩りでしたか!」
俺が首狩りと分かると男は分かりやすく態度を変えて俺に頭を下げる。
「俺達はフロックスを拠点に活動してる冒険者PTです。つい最近の大侵攻はあなたのお陰で解決したと聞いています。本当に、本当にありがとうござました!」
「いえいえ、フロックスには守りたい人達がいましたので」
「――噂とは違い、謙虚な方だ!」
男は感動している感じでそう言った。
残りの三人の内、二人は男と同じように俺に尊敬の視線を向ける。
しかし、残りの若い女性。
この女性だけは今だ俺に対して敵意を向けている。
そして、感情を我慢出来なくなったのか女性が口を開いた。
「――なら、何であんな酷い事をするんですか」
「おい、落ち着けアケミ!」
「落ち着けるわけない! この人があの首狩りだって言うならあの盗賊達を殺さずに制圧する事も出来たはず! なのにこの人は殺す事を楽しんでた!」
お~お~、酷い言われようだこと。
別に殺すのを楽しんでたわけじゃないんだけどな。
冷静に人の体の壊れ方を観察してただけ。
クク、それにしてもこの女性は可笑しな事を言う。
「アケミさん、でしたか? 残念ですが俺は殺しを楽しんでなどいませんよ。それと疑問なのですが、どうして盗賊相手に手加減などしなければいけないので?」
「確かにあの人達は盗賊だけど、それでも人間よ! もしかしたらこれから更生も出来たかもしれない! あなたはその機会を殺して奪った!」
「―――更生? 可笑しな事を言いますね。盗賊は基本的に余程の理由がない限り捕まれば死罪は確定。特に、あの盗賊達は何度も行為を繰り返していたようでした。そんな盗賊を相手に俺が手加減をする理由? ありませんよそんなものは」
「――それでも!!」
俺が割と丁寧に説明してもアケミという女性は納得できないようで、俺は小さくため息を付き駄目だなこの人はと心の中で思った。
そして、流石にこの状況を放っておくわけにはいかないと思ったのか、先程俺に対して感謝の言葉を言ったリーダーと思われる男性がアケミを諫めた。
「そこまでにしておけ。首狩りの言っている事は正しい。お前の言っている事は幼稚な子供のわがままだ。これ以上、恥を晒すな」
「ダン、子供のわがままってどういう事よ!」
「そのままの意味だ。お前は俺達が置かされていた状況が分かっていない。もし首狩りが俺達を助けてくればければ、俺達は奴らに殺されていた。いや、それだけならまだいい。俺とタケルは殺されるだけで済むだろうが、女のお前とミルはおそらく奴らの手によって……」
ダンという男が何を言おうとしているのかアケミは理解したのだろう。先程までの強気な表情から打って変わり、青ざめ冷や汗を書きながら体を震わせていた。
「ダン! アケミはまだ十五歳なのよ!」
もう一人の女性のミルはアケミの体を腕で包み、ダンに対して怒鳴る。
しかし、ダンはミルの言葉に首を振り答えた。
「それがどうした? 確かにアケミは十五歳の少女だが、その前に冒険者だ。俺は最初に言ったぞ、冒険者になるからには覚悟しておけと」
「そ、それは……」
「全く、お前は特にアケミに甘いんだよミル。その甘さがアケミのわがままを冗長させている事にいい加減に気付け。この先、生き残りたいならな」
その言葉を受けミルと呼ばれている女性は神妙な顔で何かを考え、腕に抱かれているアケミも涙を流していた。少しは反省したのかね?
「首狩り、うちのメンバーが失礼な言葉を言って本当に申し訳ない!」
そうして頭を下げるダンという男性に俺は首を振り答えた。
「いえいえ、俺は気にしていませんので」
「そう言って頂けると幸いです。本当ならアケミ自身に謝らせなければいけないのですが、今はあの状態ですので。今度、もし会えたらその時は必ず謝らせます」
ええ、ほんとどうでもいいんだけどな~。
とは言えず俺は分かりましたと無難に返事をする。
「それでは、俺はフロックスに戻りますのでこれで失礼します」
それだけ言い残し、俺はフロックスに向け再び走り出した。
あ~、早くサリーの顔が見たいな……。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
モチベが少し戻りましたので更新を再開したいと思います。
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俺の脂肪はチート性能~万能脂肪と共に異世界で最強へ至るまで~




