22.優しさはいらない
誰かに庇われるなんて、いつ以来か。
使用人の行動が正しいものであるとは思えないが、悪い気はしない。
純粋な善意を感じた。
危険を恐れず、勇気を振り絞って部屋の扉を開いた。
屋敷の主人の怒りを買ってまで、誰かを助けるということは、誰にもできることじゃない。
──弱者には変わりない。
少しのことで、明日の暮らしまで脅かされるような存在。
けれども、その勇気だけは本物であると感じる。
「使用人さん……」
「聖女、様……?」
「ご心配ありがとうございます。ですが、私は大丈夫ですので」
使用人の優しさを私は、振り払った。
何一つとして理解してないような愚かな態度で、穏やかな笑みを浮かべる。
バレオンは、ニヤリと笑った。
「だそうだ。お前はさっさと、仕事に戻れ!」
私は、差し伸べられた手を掴まない。
使用人は顔を青くし、崩れるように床に手を付いた。
「聖女、様……俺は、貴女のために……」
──そんなことは分かっている。
でも、今はその優しさが邪魔だ。
私の目的遂行に、白馬の王子様は必要ない。
道を切り拓くのは、いつだって自分。
この男に制裁を下し、領地に巡る悪循環を取り除くことは、私にしかやれないこと。
「使用人さん。分かっていますよ。きっと貴方は、私が疲れていると、そう思ったのですよね?」
「ち、違っ……!」
使用人が反論をしようとしたタイミングで、彼の肩を強く掴む。
「──いっ……つ!」
「そう、ですよね?」
「……それ、は」
「大丈夫です! こう見えて、聖女というものは、忙しい日々でも体調管理をしっかりしているので」
使用人に、静かな重圧を与える。
バレオンは気付かない。
でも、散々強者に怯え続けている使用人は、この手の気配に敏感だ。
私を憐れむような視線を向けていた最初と違い、空気が変わったことをすぐに理解して、大きく目を見開き、私のことを見つめた。
「……聖女様、貴女は一体?」
この敬称呼びは、先程とは大きく意味合いが違っている。
逃げて欲しい。
こちらの意図を理解して欲しい。
最初は、そういう意図で私に『聖女様』と呼びかけていた。
けれども、今の『聖女様』という言葉には、隠しきれない畏怖の感情が込められていた。
「バレオン様、申し訳ありません。先程、少しだけ寝不足なのです……というようなお話を彼としていたもので、それできっと心配してくれたのだと思います。どうか、彼のことは責めないでくださいませ」
「そ、そうでしたか! なるほど。そういうことなら、私には何も言うことはありません」
「ありがとうございます。それから、お騒がせ致しました」
バレオンと話す姿を見て、使用人はもう……私を逃そうという意志を持ってはいなかった。
その瞳には、一筋の希望さえ宿っていたと思う。
──この使用人は、使えるかもしれない。
彼に利用価値を見出した。
先の話だ。
それこそ、私が目の前にいる屑貴族、バレオンに制裁を下す……その際に、この使用人は忠実な駒になるのではないかと。
そう、感じてならなかった。
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