たとえゲーム廃人でも、女の子に好かれたらやっぱり嬉しい。――4
曲芸を見終わったあとも、俺たちは手を繋いでいた。
大通りの店をふたりで冷やかしていると、レイシーが一点を見つめていることに気付いた。
そこには雑貨屋があり、レイシーの視線は、店頭に陳列された髪飾りに注がれている。
若葉と野花を模した、シンプルだが可愛らしい髪飾り。値段のほうもお手頃だ。
物欲しげなレイシーの様子に、俺はふむ、と一考して、店員に声をかけた。
「すみません、この髪飾りが欲しいんですが」
「ロ、ロッドくん!?」
レイシーが驚きを顔に浮かべながら俺を見る。
「あれ? レイシー、この髪飾り、気に入ったんじゃないのか?」
「た、たしかに気に入りましたけど……」
「じゃあ、プレゼントするよ。大した値段でもないし」
「けど! ……わたし、ロッドくんにいただいてばかりで、申し訳ないのです」
レイシーがシュン、と肩を落とす。
これまで俺は、リーリーの育成を手伝ったり、ピートを渡したり、戦い方を指導したりと、レイシーにいろいろな施しをしてきた。
どうやらレイシーは、そのことに引け目があるらしい。自分はもらいすぎだと考えているんだろう。
なんて謙虚な子だろう。俺が働いていたブラック企業の上司には、少しでもレイシーを見習ってもらいたい。
「それならこうしようぜ、レイシー」
ためらうレイシーに、俺は提案した。
「俺はこの髪飾りをプレゼントする。レイシーには、そのお礼をしてほしい」
「わ、わかりました! どのようなお礼でもバッチ来いです!」
レイシーがフンスフンスと鼻息を荒くする。
尊いまでの健気さが、愛おしくて仕方ない。
俺は穏やかに微笑みながら言った。
「また誘ってくれ」
「ふぇ?」
「今日、レイシーと遊んでスゲぇ楽しかった。だから、また一緒に遊びたいんだ」
髪飾りを手にしながら、俺はレイシーに尋ねる。
「この髪飾りを受けとると、レイシーは俺を遊びに誘わないといけません。この髪飾りがほしいですか?」
呆けていたレイシーの顔が、徐々にほころんでいき、
「はい! わたしはロッドくんからのプレゼントがほしいです!」
太陽のように明るい笑顔で、レイシーが頷いた。
「話は済んだかい、バカップルさん?」
「「バカップル!?」」
俺たちのやり取りを見守っていた店員が、ニヤニヤ笑いでからかってくる。
「見せつけてくれるねぇ、まったく。青春割りで安くしとくよ」
「「あ、ありがとうございます……」」
当然ながら、俺もレイシーも火が出そうな顔色になった。




