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結局のところ、やる気があるやつは応援したくなるのが人情。――6

 ヒートハウンドとの戦闘は、危なげなく終了した。


 リーリーはレベルが劣っていたが、持ち前のAGIを遺憾(いかん)なく発揮し、ヒートハウンドの攻撃をすべて回避していた。


 レイシーの指示も的確で、ちゃんと努力してきたことがうかがえた。


「ロッドくん、ロッドくん! リーリーが2レベルになりましたよ!」

「お、やったな」

「はい! はじめてのレベルアップです!」


「バンザーイ!」と諸手(もろて)を挙げてはしゃぐレイシーに笑みを漏らしつつ、俺はヒートハウンドの魔石を拾う。


「ほい、レイシー」

「ほぇ?」


 その魔石を手渡すと、レイシーはコテン、と首をかしげた。


「ロッドくん、なんでわたしに渡すのですか?」

「だって、使役しないといけないだろ?」


 当然とばかりに答えると、レイシーが「えっ!?」と驚く。


「わ、わたしがこの子を使役するのですか!? 倒したのはロッドくんですよ!?」

「リーリーを活かすには、新たな従魔を手に入れることが必須条件なんだよ。だから、ちょうどよかったんだ」


「ですが……」とためらうレイシーに、俺は続けた。


「それに、レイシーはこいつが好きなんだろ? こいつも、レイシーの従魔になったほうが喜ぶよ」


 レイシーが手中(しゅちゅう)の魔石に目をやって、クスッと笑みを漏らす。


「ロッドくんは本当に優しいひとですね……そんなに優しくされたら、わたし……」

「ん? 最後のほう、なんて言った?」

「な、なんでもありません!」


 俺が聞き返すと、レイシーが顔を真っ赤にしてブンブンと首を振った。


「で、では、ありがたくいただきます!」


 話題を切り上げるように早口で言って、レイシーが魔石に指を(すべ)らせる。


 従魔を使役するための『従魔(じゅうま)(いん)』を刻んでいるんだ。


『従魔の印』を刻み終えると、魔石が輝きを放った。使役完了の(あかし)だ。


 レイシーがパアッと笑みを咲かせ、命じる。


「おいで、ヒートハウンド!」

『ワンッ!』


 現れたヒートハウンドが、パタパタと炎の尻尾を振りながら、レイシーの脚に体をすり寄せる。


「はうぅぅ……可愛い、可愛いよぉぉ……!!」


 レイシーが頬をフニャフニャにゆるめて、ヒートハウンドを抱き上げた。


「よーし、今日からきみの名前は『ピート』です! よろしくお願いしますね? ピート」

『ワウッ!』


 ヒートハウンド改めピートが、元気よく返事する。


 レイシーがニッコリ笑って、モフモフの毛並みに顔をうずめた。


 幸せそうなレイシーを眺めていると、俺まで嬉しくなる。


「ありがとうございます、ロッドくん! このお礼は必ずいたしますね!」


 レイシーが(なつ)っこい笑顔を俺に向ける。まるでその腕に抱いているピートみたいだ。


 俺は内心で呟いた。


 その笑顔が充分すぎるほどのお礼だよ。


 もちろん、クサすぎて口には出さなかったけど。

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