成長の過程では、休息も時々必要。――13
「決めるよ、キーちゃん、ガーちゃん!」
「トドメを刺しなさい、モルモル!」
「終わらせますよ、ルル!」
『キキッ!』
『クワァッ!』
『ミュッ!』
『キュイッ!』
残る4匹もスキルを発動させた。
キーが剣を袈裟懸けに振るい、ガーガーの両翼から雷光が放たれ、モルモルとルルの周りに生じた木の葉が、無数の刃となる。
ハルバードスキュラに、4匹の攻撃が襲いかかった。
「「「行っけぇ――――――――っ!!」」」
剣戟。
雷音。
斬撃無尽。
4匹の一斉攻撃がハルバードスキュラのHPを削りきる。
『QUUUUUURURURURU……!!』
HPを失ったハルバードスキュラが光の粒子となって散った。
ドーム状の広場に静寂が訪れる。
肩で息をしていた3人はプルプルと体を震わせて――
「「「やったぁ――――――――っ!!」」」
喜びを爆発させて抱き合った。
「ナイスファイト!」
「お見事です!」
エリーゼ先輩とミスティ先輩が、喜びを分かち合う3人に拍手を送る。
俺もまた拍手しながら、3人を称えた。
「3人とも強くなったな。正直、1体の従魔も欠けることなく勝利するとは思わなかった。想像以上の成長だ」
「ありがとうございます、ロッドくん!」
興奮したのだろう。レイシーがガバッと俺に抱きついてきた。
俺たちは水着の上にラッシュガードを羽織っただけの格好だ。必然的にレイシーの感触がはっきりと伝わってくる。
ムニュンと押し当てられる豊満な胸。俺よりも少し高い体温。桃の果実みたいなレイシーの匂いに、俺の鼓動が急加速する。
「レ、レイシー! ちょっと離れようか!!」
「えへへへー」
「聞こえてない!?」
喜びがリミットブレイクしているのか、レイシーは呼びかけに気づくことなく、俺の胸に頬を擦りつけてくる。
薄着で女の子に抱きつかれている現状は非常にマズい。男の本能が暴れ出し、理性をガリガリと削っていく。
「お、おっと、バランスが!」
「ああ……急に目眩が……!」
「つ、つまずいちゃったわ!」
ガチガチに硬直する俺を追い打ちが襲った。エリーゼ先輩、ミスティ先輩、フローラが俺にしなだれかかってきたんだ。
いや、同時に体勢を崩すなんてあり得ないだろ! 棒読みだったし! みんな、どうしたんだよ!?
「ケ、ケイト! 助けてくれ!」
「あ。あの奥にあるやつだよね、魔法のスクロールって」
「魔法のスクロールはあとでいいから! 俺の声、届いてる!?」
「あたし、とってくるね! ……ぷぷっ」
「お前、絶対聞こえてるだろ!」
どういうわけか俺の助けを無視して、ケイトは魔法のスクロールをとりにいってしまった。
しばらくのあいだ、俺は地獄みたいに天国な状況で、理性のトレーニングに挑むことになった。




