成長の過程では、休息も時々必要。――9
3人が最初の指示を出した。
「リーリー、エナジーアップ! ルルはイヴェンジェルです!」
『リィ!』
『キュイッ!』
「ガーちゃん、イヴェンジェル!」
『クワァッ!』
「モルモル、ルートラッシュ! クラクラはソリッドフォーム!」
『ミュッ!』
『ブクク……!』
リーリーが両腕を広げ、ルルが杖を掲げ、ガーガーが羽ばたきながら、それぞれ静かにまぶたを伏せる。リーリーはINTとSTRを上昇させるエナジーアップ、ルルとガーガーはINTとMNDを上昇させるイヴェンジェルの準備だ。
クラクラも3体と同じように自己強化スキルの準備。体を縮め、ソリッドフォームでVITとMNDを上げにかかる。
モルモルは地面に両前足をついて範囲攻撃の構え。『相手のAGIを20%減少させる』追加効果を持つルートラッシュで、ダメージとデバフを同時に与えるつもりだ。
対し、2体のスキュラも動く。
『QUURURU……!』
『QUURARA……!』
ハルバードスキュラとシールドスキュラがググッと力を溜める。用いようとしているのは、2体とも自己強化スキルだ。
ハルバードスキュラはSTRを上げるビルドアップ。シールドスキュラはVITとMNDを上げるソリッドフォーム。
火力と盾役。それぞれの役割に適した行動と言えるだろう。
「やっぱりそう来るよね!」
スキュラたちの行動を見て、ケイトが指示を飛ばした。
「キーちゃん、ウェポンスイッチ!」
『キキッ!』
前に出していた右前足の剣を引っ込め、キーが左前足の盾を構える。
固有アビリティでキーのステータスが盾役向きになったところで、ケイトがさらに命じた。
「キーちゃん、ケロちゃん、『タウント』だよ!」
『キキィッ!』
『ゲロォッ!』
キーとケロが鳴き声を張り上げる。
ドーム状の広場に2匹の鳴き声が木霊して――
『QUUUURURU!』
『QUUUURARA!』
ハルバードスキュラの視線がケロに、シールドスキュラの視線がキーに引きつけられた。
『ヘイト値を稼ぐ』物理スキル『タウント』によって、それぞれのターゲットを固定させたんだ。
これまでのケイトのパーティーは、ガーガーが火力でケロが盾役。そこに火力も盾役もこなすキーが加入したことで、選択に幅が出ている。
ガーガーは火力としては攻撃力不足、ケロは盾役にしては防御力不足だったが、キーの存在が補っている。ミッドフィルダーの登場で、ケイトのパーティーの欠点が補完されたかたちだ。
「キーちゃん、次はウェポンエンチャントね!」
『キキッ!』
キーが体勢を低くして力を溜める。STRとVITを上昇させる自己強化スキル、ウェポンエンチャントの準備だ。キーは火力かつ盾役なので、ウェポンエンチャントによるステータス上昇を、どちらも最大限に活かせる。
「スキュラたちのターゲットが固定されたわね」
「行きましょう、ネイブルさん!」
「ええ!」
フローラとレイシーが頷き合い、声を揃えた。
「「バーストチャージ!」」
『ワウッ!』
『ガアッ!』
ふたりの指示を待っていたピートとチッチーが高らかと鳴き、力強く地面を蹴って飛び出した。
ピートとチッチーの体が赤熱し、二条の赤光を描いてシールドスキュラに突っ込む。
ピートとチッチーの突進が、シールドスキュラの盾に炸裂し、押し込んだ。
ドゴンッ!
『QUUUURARARARA……!!』
砲弾が城壁を吹き飛ばしたような轟音と、シールドスキュラの苦悶の悲鳴が、辺りに反響する。
ピートとチッチーのバーストチャージは盾による防御も突き抜けた。
シールドスキュラのHPバー。その1本が2/3になる。シールドスキュラが盾役であることを考えると大ダメージだ。
「続けてシャープファングです!」
『ワウッ!』
追撃。
ピートが牙を剥いて唸り出す。物理直接攻撃、シャープファングの構え。
バーストチャージからのシャープファングは、もはやレイシーの定石になっているな。
「チッチーはエナジーアップ!」
『ガアッ!』
チッチーの次の行動は、INTとSTRを上昇させるエナジーアップによる自己強化。
3人とも滑り出しは上々だ。




