成長の過程では、休息も時々必要。――8
「行くわよ!」
「「おお――っ!」」
3人が表情を引き締め岩陰から飛び出す。
3人の姿を捉え、2体のスキュラが咆哮した。
『QUUUUUUUURURURURU!!』
『QUUUUUUUURARARARA!!』
スキュラたちの咆哮が周囲の岩壁を震わせる。それでも3人は臆することなく従魔を繰り出した。
「モルモル! チッチー! クラクラ!」
『ミュッ!』
『ガアッ!』
『ブクク!』
「リーリー! ピート! ルル!」
『リィ!』
『ワウッ!』
『キュイッ!』
「ガーちゃん! ケロちゃん! キーちゃん!」
『クワァッ!』
『ゲロッ!』
『キキッ!』
3人の従魔たちが並び立つ。レイシーとケイトの新たな従魔も。
レイシーのパーティーに加わったのは、木製の杖を手にした、小型犬サイズの緑色のリス。
ケイトのパーティーに加わったのは、全身が鋼色の甲殻に覆われ、右前足が剣、左前足が盾になっている、大型犬サイズのカマキリだ。
スクワールマギカ:61レベル
マンティスナイト:62レベル
レイシーの新たな従魔『スクワールマギカ』は木属性のモンスター。INTが高く、VITとSTRが低い、魔法火力向きのステータス。『物理攻撃に「相手のVITとMNDを20%下げる」効果を付与する』固有アビリティ『軟弱の呪力』を持つ。
ケイトの新たな従魔『マンティスナイト』は鋼属性のモンスター。STRとDEXが高く、VITとINTが低い。固有アビリティは『10秒に一度、STRとVITの値を入れ替えられる』効果を持つ『ウェポンスイッチ』だ。
スクワールマギカのルルは『INTを20%上昇させる』効果を持つ『知恵のネックレス』を、マンティスナイトのキーは『相手にダメージを与えるたび、そのダメージの1/16分、HPを回復する』効果を発揮する『吸魂のスカーフ』を装備していた。
「お二人とも珍しいモンスターを仲間にしましたよね」
「ふふっ」と微笑むミスティ先輩に、俺は「ええ」と相槌を打つ。
「ケイトのマンティスナイトは、ふたつの役割を両立できるトリッキーなモンスター。レイシーのスクワールマギカは、強力な固有アビリティを持つけど、ステータス的にそれを活かし切れない。いわゆる不遇モンスターです」
マンティスナイトはウェポンスイッチによってSTRとVITを入れ替えられる。もともとは火力向きのステータスをしているが、盾役向きのステータスに切り替えられる、特殊なモンスターだ。
一方のスクワールマギカは、『物理攻撃に「相手のVITとMNDを20%下げる」効果を付与する』という強力な固有アビリティを持つが、STRが極端に低い魔法火力型あるため活かし切れず、ステータスの合計値も他の火力に劣るので、不遇扱いされている。
トリッキーで上級者向きのモンスターと、扱いづらい不遇モンスター。ミスティ先輩の言うとおり、どちらも使う者が少ない珍しいモンスターだ。
「レイシーもアーディーくんも、ロッドくんに感化されたんだろうね」
「俺にっすか?」
エリーゼ先輩の言葉に、俺は自分を指さしてキョトンとする。
エリーゼ先輩が苦笑して肩をすくめた。
「ブラックスライム、ゴーストナイト、スパークアルマジロ、フラジールシルフ――ロッドくんは誰も仲間にしないようなモンスターを従魔にしているだろう?」
「たしかに、スクワールマギカもマンティスナイトも、ロッドくんが選びそうなモンスターですね」
ミスティ先輩も笑みを漏らして同意する。
言われてみればそうかもしれない。レイシーとケイトの選択に、俺のスタイルが影響している可能性はある。
そう考えるとそこはかとなくくすぐったくて、俺はポリポリと頬を掻いた。
俺と先輩たちが談笑しているあいだに、ハルバードスキュラが矛を、シールドスキュラが盾を構えていた。
いよいよ戦いがはじまる。




