成長の過程では、休息も時々必要。――6
「まったく! ロッドくんに日焼け止めを塗ってもらおうなんて、いくらなんでも破廉恥すぎです、クレイド先輩!」
「エリーゼ先輩の言うとおりです! 淑女たるもの、自制心を持たないといけません!」
「そう仰っていますが、エリーゼさんもレイシーさんも混ざろうとしていたではありませんか」
「ああああれは……そう! 背中に手が届かなかったからで……!」
「け、決して、その、羨ましいと思ったわけではなくてですね……!」
「あんたたちはバカばっかりだね」
「あたしは知ってるよ、フローラ。さっきロッドに耳打ちしてたよね? 日焼け止め、塗ってもらうつもりだったんじゃないの?」
「そそそそんなことないわよ!?」
「あれあれー? フローラ、目が泳ぎまくってるぞー?」
5人が水着を披露したあと、ミスティ先輩が俺に日焼け止めを塗ってもらいたがったり、なぜか対抗して、レイシーとエリーゼ先輩がミスティ先輩と同じように頼んできたり、フローラまでもがこっそりおねだりしてきたり、非常に理性を消耗する一幕があった。
なんやかんやあってそれぞれ自分で日焼け止めを塗ったのだが……思い出すだけで顔が熱くなる。
「ま、なにはともあれ本番はこれからだよね!」
俺、レイシー、エリーゼ先輩、ミスティ先輩、フローラが顔を赤くするなか、ケイトが元気よく駆け出した。
白い砂浜を走り抜け、「一番乗りーっ!」とケイトが海に入っていく。
「きっもちいいーっ! みんなも早く来なよーっ!」
水面をバシャバシャと波打たせ、ケイトがこちらにブンブンと手を振った。さっきまでのドタバタを吹き飛ばすほどの無邪気さだ。
照れたり恥ずかしがったりするのがアホらしくなり、俺たちは顔を見合わせて「ぷっ」と噴き出す。
俺の右手をレイシーがとった。
「行きましょう、ロッドくん!」
「ああ!」
俺たちは一緒に海へ走り、エリーゼ先輩、ミスティ先輩、フローラもあとに続く。
海に入ると、心地よい冷たさが夏の暑さを癒やしてくれた。海に来たのは(前世を含めて)20年振りだが、気持ちがいいものだ。
頬を緩めていると、パシャリと海水が顔にかけられて、俺は目を丸くする。
見ると、ミスティ先輩がイタズラげな笑みを浮かべていた。どうやら犯人はミスティ先輩らしい。
「やりましたね!」
「ひゃっ」
水をかけ返すと、ミスティ先輩は可愛らしい悲鳴を上げる。それでも相変わらずの眩しい笑みで、「お返しです!」と応戦してきた。
「わたしたちも参戦します!」
「ふたりでロッドくんたちを倒そう、レイシー!」
「そうはいかないわ! 勝つのはあたしよ!」
「よーし、バトルロワイヤルだーっ!」
残る4人も参戦し、俺たちはひたすらに水を掛け合う。特別面白いことはしていないはずなのに、胸が高鳴り心が躍る。これが夏の魔力というやつだろうか?
しばらく夢中になって水を掛け合い――俺はハッとした。
メッチャ揺れてる。レイシーとミスティ先輩の、立派な胸の膨らみが、タップンタップンと弾んでいる。
俺の心臓が激しくビートを刻み、カアッと全身が熱くなった。
あ、危うすぎる! これは見ちゃダメなやつだ! 見たら釘付けになっちまうやつだ!
ただでさえ大きな胸が、布一枚の状態でタユンタユン揺れているんだから、破壊力は凄まじい。
ふたりの大玉果実に視線が引き寄せられそうになるのをなんとか堪え、俺は気合で顔を背ける。男の性がもっと見たいと叫んでいるが、理性を保つために抗わないとならない。
な、なにか別のものに注意を向けなければ!
慌てて視線を右往左往させて――隣にいるフローラが、レイシーとミスティ先輩の胸を愕然と眺めているのに気づいた。
フローラは震える手で自分の胸に触れ、「くぅっ!」と歯噛みする。その手で触れている膨らみは、お世辞にも大きいとは言えない。
なんか、俺までむなしくなってきたな……。
激しく高鳴っていた鼓動が収まり、全身の熱が冷めていく。
悔しさからかプルプル震えるフローラの姿に、俺は嘆かずにいられなかった。
神さま。あんた、随分と不公平だな。




