成長の過程では、休息も時々必要。――5
それから2時間後。水着に着替えた俺は、ポルタイト南部の海岸に立っていた。
海岸は三日月状の入り江になっており、隠れスポットであるためか周りにひとの姿はない。
砂浜は真新しいキャンバスのように白く、海は透き通ったターコイズブルー。この海岸の景色はゲーム画面でも美しかったが、本物はやっぱり違う。見とれてしまうほどの絶景だ。
ちなみに女性陣は着替え中。シートとパラソルを設置し終えた俺は、ドギマギしながら5人を待っていた。
「アバター着せ替え機能のラインナップにあったから、ファイモンの世界に水着があるのは知っていたが……女性キャラの水着姿を見るのははじめてだな」
ゲームのファイモンでは水着の女性が登場することはなかった。それが不満だったのか、「主人公は水着になれるのに、どうして女性キャラは水着にならないんだ!」とゲーム会社にクレームをつけたプレイヤーがいたとの噂がある。
水着姿の女性キャラはとてつもなく貴重。レイシーたちの水着を見られるプレイヤーは俺が初となるわけだ。正直、ゲーマーとしても男としても嬉しい。
「それはともかく、まさか俺が女の子と海水浴に来るなんて思わなかった。ちょっと緊張するな」
鼓動と緊張を鎮めるため、胸に手を当てて深呼吸する。
前世で女性と無縁の生活を送っていた俺に、女の子と海水浴に行くなんてイベントは当然ながら起きなかった。
それが、いまは5人もの女の子(しかもいずれも美少女)と海に来るなんて……人生なにが起きるかわからないものだ。まあ、俺の人生は二度目なんだが。
「お待たせしました!」
遠い目をしていると、背後からレイシーの声がかかった。落ち着いてきた鼓動が再び跳ね上がる。
ドキドキしながら振り返ると――5人の天使がそこにいた。
レイシーの水着は、トップにフリルがあしらわれた花柄のビキニ。
エリーゼ先輩の水着は、群青色の三角ビキニ。
ミスティ先輩の水着は、ピンク色のタンキニ。
フローラの水着は、白青ストライプ柄のチューブトップ。
ケイトの水着は、オレンジのボーイレッグ。
レイシーは穏やかな雰囲気と可愛らしい水着がマッチしているし、エリーゼ先輩はスノーホワイトの肌を惜しげもなくさらしている。
タンキニが海風に揺れる様子は、可憐なミスティ先輩をさらに魅力的に映し、華奢な体躯に夏色のチューブトップをまとったフローラは、さながら海の妖精だ。
元気っ娘のケイトには、ショートパンツに似たボーイレッグがイメージピッタリ。
とにもかくにも似合っている。海岸の景色に負けないくらい、5人の水着姿は美しかった。
「ロッド? 男なら『似合ってる』の一言くらい言ってあげるもんだよ?」
眩いばかりの美しさにただただ見とれていると、ケイトがからかい混じりの口調で注意してきた。
俺はハッとして、気恥ずかしさに頬を掻き、視線を逸らしながら伝える。
「その……に、似合ってる。みんなキレイだし、可愛い」
俺が褒めると、レイシー、エリーゼ先輩、ミスティ先輩、フローラがモジモジと身じろぎした。
レイシーは頬を赤らめながらはにかみ、エリーゼ先輩は銀色の髪をクルクルと弄り、ミスティ先輩はふにゃんとふやけたような笑みを浮かべ、フローラは照れを誤魔化すようにそっぽを向いている。
そ、そんな可愛らしい仕草されたら、こっちまで赤くなるだろ!
堪らず顔を火照らせていると、ケイトが「ふー」と嘆息しながら苦笑した。
「ロッドって、百戦錬磨なのか初心なのかわかんないよねー」




