成長の過程では、休息も時々必要。――4
「今日のご飯も美味しいねー、マーサーさん!」
「マーサーの手料理は絶品ですからね」
「恐れ入ります、アーディー様、ミスティ様」
ダイニングに集まった俺たちは、マーサーさんの作ってくれた朝食に舌鼓を打っていた。
今日の朝食は、目玉焼きとベーコンをクレープ生地でくるんだ料理だ。ガレットというらしい。
こんなオシャレな料理は前世でも食べたことがない。そもそも食事に興味が薄かったからだけど。
はじめて食べる料理を味わいながら、俺は頭のなかで今日の予定を立てる。
ユララを従魔にしてから半月。そのあいだ、俺は従魔のレベルアップに専念してきた。
『育成の達人』の経験値10倍効果も相まって、ユララのレベルは90を超えている。そろそろ型を完成させたいところだ。
ユララの型を完成させるには、『魔法のスクロール』で『あるスキル』を習得させる必要がある。今日はその『魔法のスクロール』を入手しにいくか。
俺が予定を立てたとき、エリーゼ先輩が提案した。
「今日はみんなで休息をとらないかい?」
「「「「賛成!」」」」
即座に残る4人が賛同する。
すでに予定を立てていた俺は、頬をポリポリと掻いた。
「すいません。今日は『魔法のスクロール』を取りにいきたいんすけど」
「ロッド。たしかに課題をクリアしたい気持ちはわかるわ」
エリーゼ先輩の代わりにフローラが頷き、「けど」と人差し指を立てる。
「成果を得るためには休息も必要よ?」
「そうです、ロッドくん。時には休みをとることも大切だと思います」
フローラの意見にレイシーが同意した。
「課題をクリアするには努力が必要でしょう。ですが、努力してばかりでは疲れがたまりませんか?」
「疲れは成長の大敵です。休息をとることは効率アップに繋がります」
ミスティ先輩もレイシーに続き、エリーゼ先輩とフローラが、「「うんうん」」と頭を揺らす。
なるほど。4人が言うことにも一理ある。
「ふむ」と顎に手を当てながら、俺は思い出す。
前世で俺は、徹夜でファイモンをプレイしたことがあった。オンライン対戦のレートを上げるためだったが、結果は思惑と真逆。大幅にレートを落としてしまった。
いま思い返せば当然だ。人間には睡眠が欠かせない。睡眠はすべての能力の礎。
そして、ファイモンの対戦には極度の集中力と判断力が要求される。徹夜しながら対戦しても結果が出るはずがないのだ。
今回のケースでとるのは睡眠でなく休息だが、能力向上の手段という点では休息と睡眠は変わらない。
ユララの型は完成させたいけど急ぐわけじゃないし、ミスティ先輩の言うとおり、休息をとることは効率アップに繋がるしな……。
考え、俺は決断した。
「そうですね。俺も休もうと思います」
「「「「よしっ!」」」」
ん? なんだ、いまの反応?
「みんな、ガッツポーズとった?」
「「「「そそそそんなことないよ(ですよ)(わよ)!?」」」」
俺が指摘すると、4人がブンブンと勢いよく首を振って否定する。
いや、明らかに「「「「よしっ!」」」」って聞こえたけど……まあ、いいか。休むのがいいことに変わりはないんだし。
(なんとか上手くいったわね)
(ええ。マサラニアさんを納得させるには理由付けが必要ですから)
(良くも悪くも、ロッドくんは従魔バカだからね)
(みんなで協力したのは正解でしたね)
ん? なんか聞こえるぞ?
「みんな、コソコソ話してない?」
「「「「そそそそんなことないよ(ですよ)(わよ)!?」」」」
俺が指摘すると、4人がブンブンと勢いよく首を振って否定する。
うーん。さっきから4人が挙動不審なんだが……あと、なんでケイトはニヤニヤしてるんだろうか?
「と、とにかく! せっかくの長期休暇だし楽しもうじゃないか!」
「そ、そうですね! たまには課題を忘れて息抜きするべきです!」
「息抜きと言えば、やっぱり遊ぶことよね!」
「いまは夏ですし、遊びとなるとひとつしかありません!」
まるであらかじめ打ち合わせしていたかのようなスムーズさで、4人が声を揃えた。
「「「「海に行きましょう(行こう)!」」」」
あれ? 俺が思ってた休息と違う。




