努力するときは、目標設定が大事。――16
「行かせてもらうよ、ロッドくん! ファブニル、バーストチャージ!」
『GOOOOOOHHHH!!』
ファブニルが咆哮し、大地を踏み砕いて飛び出す。体を赤熱させながら猛スピードで駆ける様は、さながら赤い流星だ。
「ピートと同じバーストチャージ!」
「勝負に出た!?」
レイシーとフローラが目を剥く。
バーストチャージは強力な分、自分もダメージを食らう諸刃の剣。フローラの言うとおり、エリーゼ先輩は勝負に出たんだ。
ファブニルは目にも留まらぬスピードでマルに迫っている。
エリーゼ先輩はマルから仕留めるつもりか!
『装備しているモンスターのSTR、INTが0になるが、STRの数値がVITに、INTの数値がMNDに加算される』装備品『歪曲の腕輪』を装備し、固有アビリティ『温厚』の影響で、『攻撃したり受けたりするたび、STR、INTが30%減少し、VIT、MNDが30%増加する』マルは、最強クラスの盾役だ。
だが、マルは攻撃をしても受けてもいないため、『温厚』の発動回数はまだ0回。
一方、ファブニルは『物理攻撃スキルを土属性にする』装備品『大地の腕輪』を装備しているため、バーストチャージは雷属性のマルの弱点となる土属性になっている。
さらに、ファブニルの固有アビリティは『土属性の攻撃スキルの威力が、30%増加する』効果を発揮する『大地の力』。
つまり、この一撃はマルに大ダメージを与えるということだ。
おそらくエリーゼ先輩は、マルを倒すことを第一に考えたのだろう。
ゲオルギウスがいるため、俺はユーをジャーレス型にせざるを得ない。そしてジャーレス型は、エクスディフェンスが解けると防御手段がなくなるという弱点を抱えている。
だからエクスディフェンスが解けた場合、ユーはマルに庇ってもらうしかない。エリーゼ先輩はその弱点を突いた。
マルを倒せば、間もなくユーを倒せる。そして2対1になれば、クロを倒すのは難しくない。
俺のパーティーを崩すうえでの最適解は、マルを倒すこと。エリーゼ先輩はそこに気づいていたんだ。
ファブニルの巨躯がマルにぶち込まれる。
『キュ……ッ!?』
マルが瞠目して吹っ飛んだ。
ゴロゴロと地面を転がるマル。そのHPは3/5まで削れていた。『歪曲の腕輪』を装備したマルにここまでのダメージを与えるのは、驚異的だ。
攻撃を受けたことで『温厚』が発動。マルのVITとMNDが増加する。
それでもエリーゼ先輩は慌てなかった。
「『ブレイブインパクト』だ!」
『GOOOOHH……!』
ファブニルが低く唸り、その体からオレンジ色のオーラが漂いはじめる。
審判を務めるミスティ先輩がハッとした。
「これがエリーゼさんの作戦でしたか!」
エリーゼ先輩が牙を剥くように笑った。
俺は感嘆する。
ここまで綿密に試合を運ぶとは大したもんだよ。
エリーゼ先輩が指示した『ブレイブインパクト』は物理の直接攻撃スキルで、『STRのステータス補正が攻撃時に2倍になる』追加効果を持つ。
現在、ファブニルのSTRは約70%上昇しているため、ブレイブインパクトの発動時、ファブニルのSTRは約140%増加することになるんだ。
つまり、一時的にファブニルのSTRは約2.4倍になる。それだけの威力の、しかも弱点属性の攻撃を受ければ、いくらマルと言えど倒れるだろう。
先ほどのバーストチャージの命中時、スタンボディーによる麻痺効果は発動しなかった。エリーゼ先輩は運にも恵まれたんだ。
感心しながらも俺は指示を飛ばす。
「マル、『アーマータックル』だ!」
『キュウ!』
マルが体を丸め、ギュルギュルと回転しはじめた。『STRではなくVITの値に依存する』物理直接攻撃スキル『アーマータックル』の準備モーション。
「間に合わないよ、ロッドくん」
エリーゼ先輩がビッと俺を指さす。
「アーマータックルのチャージタイムは4秒。一方、ブレイブインパクトのチャージタイムは3秒。マルくんはここでリタイアだ」
エリーゼ先輩が言い放った。
「超えさせてもらうよ」




