努力するときは、目標設定が大事。――11
『ブククッ!』
クラクラがはさみの腕を掲げ、ガーディアンフォースを発動させた。
モルモルとチッチーの体が白い光に包まれる。これで10秒間、2体への攻撃はクラクラが肩代わりすることになった。
そして、無敵化コンボの最後のキーとなるのが――
「サンダーボルトはクラクラにとって4倍弱点攻撃。確実にHPは1/2以下になるわ」
雷の槍がクラクラを穿つ。
『ブクク……ッ!?』
あまりの衝撃にクラクラが仰け反り、ほぼ満タンだったHPが、一気に2/5まで削られた。
必然、『鋼の宿』が発動する。
『ブクク……』
サンダーボルトを食らって目をバッテンにしたクラクラが、背負っている兜に隠れていく。兜にすっぽりと収まり、クラクラは『防御態勢』になった。
「さあ、どうする?」
「「うう……っ」」
腰に手を当てて、「ふふんっ」と得意げな顔をするフローラに、レイシーとケイトが眉根を寄せる。
「これは一本取られたな」
「まさかここまで計算していたなんて……」
「フローラさんの実力は相当なものですね」
三人の戦いを眺める、俺、エリーゼ先輩、ミスティ先輩は、巧妙なフローラの策に、揃って舌を巻いた。
転生した当初は、この世界の従魔士はレベルが低いと思っていたが……なかなかどうして、やれるやつはいるじゃないか。
ますます楽しくなってきたぞ! やっぱ、相手が強くないとゲームは面白くないからな!
俺が今後の期待に胸を膨らませるなか、歯噛みしていたレイシーとケイトが前を向いた。
「諦めません!」
「まだやれることはあるはずだよ!」
ふたりが瞳に闘志を灯す。
フローラが目をパチクリさせて、ニッ、と口角を上げた。
「それでこそよ! 最後まで楽しもうじゃない!」
「言われなくても! ガーちゃん、『イヴェンジェル』!」
『クワァッ!』
ガーガーが静かにまぶたを伏せる。『自身のINT・MNDを30%上昇させる』魔法スキル『イヴェンジェル』の準備。チャージタイムは3秒。
ガーディアンフォース×『鋼の宿』コンボが成立している現状、いかなる攻撃も無意味と化す。
それならば、ガーディアンフォースの効果が切れたときに備えるべきだ。ケイトが自己強化スキルを指示したのは、そういう意図だろう。
だが、ガーディアンフォースの効果が切れるまで待ってくれるはずがない。フローラは攻勢を緩めなかった。
「撃つわよ、チッチー!」
『ガアッ!』
チャージタイムの終了を確認し、フローラがチッチーに指示した。
周りで唸っていた風をまとめ、チッチーがサイクロンショットを放つ。
『ゲロ……ッ!!』
サイクロンショットを食らったケロはもうフラフラだった。HPも1/5しか残っていない。
「お願い……頑張って、ケロちゃん!」
それでもケイトは応援するほかになかった。
『ゲロッ!』
ケイトの応援に元気づけられたように、ケロが大きく鳴く。
ケロの舌が突き刺さっていた地面から、イバラの鞭が無数に生えてくる。ドレインソニアの発動だ。
『ワウッ!』
ピートも大技を発動させる。
下げていた頭を高々と上げて息を吸い込み、口内に蓄えていた炎を解放した。炎属性の範囲攻撃、クリムゾンウェーブ。
イバラの鞭がチッチーに絡みつく。
紅蓮の炎が放射状に地を走り、フローラの従魔すべてをのみ込む。
『ガアッ!』
『ミュゥ!』
しかし、それらすべてが無効化された。チッチーもモルモルも無傷だ。
ガーディアンフォース×『鋼の宿』コンボが発動しているから当然だろう。
「「く……っ!」」と、レイシーとケイトが唇を噛む。
ケイトはドレインソニアでケロを回復させようとしていた。
レイシーは範囲攻撃で優位に立とうとしていた。
どちらの狙いも阻止されたのだから、悔しくもなるだろう。




