努力するときは、目標設定が大事。――10
『リィ!』
「負けてられない!」と言うように、リーリーが縮めていた体を開き、その体がキラリと輝く。ソリッドフォームの発動だ。
「さあ、行きますよ! 『ギフトダンス』です!」
『リィ!』
ソリッドフォームで防御力が上がったリーリーに、レイシーが指示を送った。
リーリーが宙でクルクルと回り出す。このスキルこそがリーリーの真骨頂だ。
チャージタイム6秒の魔法スキル『ギフトダンス』。その効果は、『自身のステータス変化を味方全員に反映させる』。
エナジーアップとソリッドフォームを用いたリーリーは、『恵みの指輪』の効果もあって、STR、INT、VIT、MNDが35%ずつ上昇した状態にある。
しかも、リーリー=フェアリーアーチンの固有アビリティは、『10秒毎にAGIが10%上昇する』効果を発揮する『加速』。
これまで3回の『加速』を発動させたリーリーのAGIは、約52%上昇している。
ギフトダンスが発動すれば、リーリーのステータス上昇補正が、ピート、ケロ、ガーガーに反映される。レイシーとケイトにとって大きなアドバンテージだ。
「ナイス、レイシー! 次はあたしたちの番だよ、ガーちゃん!」
『クワァッ!』
ケイトが奮起し、ガーガーがときの声を上げた。
ガーガーがまとっていた電流が勢いを増していく。
バチッ!! とひときわ大きく大気を弾けさせたとき、眩いばかりの稲光とともに雷が放たれた。サンダーボルトの発動だ。
放たれた雷は槍となり、一直線にクラクラに迫る。
4倍弱点の攻撃だ。大ダメージは免れない。
にもかかわらずフローラは、ニヤッと口端をつり上げた。
「残念。そのサンダーボルト、利用させてもらうわ」
フローラがクラクラに指示を出す。それはきっと、レイシーとケイトが予想だにしなかったスキルだろう。
「『ガーディアンフォース』!」
「「な……っ!?」」
レイシーとケイトが絶句した。
それもそのはず。クラクラは先ほど、肩代わりスキルであるガーディアンシップを用いている。ガーディアンフォースと同じ役割を持つスキルを。
つまり、クラクラのスキル構成には、ガーディアンシップとガーディアンフォースという、役割が被っているスキルがともに入っていたことになる。四つしかないスロットに同じ役割のスキルを組み込むのは、非合理的だというのに。
それでもガーディアンシップとガーディアンフォースの両方を採用したフローラの狙いは――
「序盤にガーディアンシップを使うことで、肩代わりスキルはしばらく使えないと思い込ませたんですね!?」
「そういうことよ、レイシー。ことが上手く運んでよかったわ」
モルモルがサイクロンショットに襲われた際、フローラはクラクラにガーディアンシップを使わせて庇った。
この行動でレイシーとケイトは思っただろう――『ガーディアンシップの効果が切れれば、しばらくのあいだ、クラクラは盾役としての役割を果たせなくなる』と。
クラクラの固有アビリティは『鋼の宿』。『HPが1/2になると、30秒間「防御態勢」になる』ものだ。
もし、攻撃を肩代わりできる状態で『鋼の宿』が発動すれば、『防御態勢』のクラクラが味方への攻撃を受けることになる。『防御態勢』時はHPが削られないため、実質、フローラの従魔は無敵状態になるんだ。
それはレイシーとケイトにとって最悪の状況だ。当然、警戒する。
だが、クラクラがガーディアンシップを用いたことで警戒は緩んだ。ガーディアンシップの持続時間は5秒間。それさえ過ぎれば、こちらの攻撃が無効化されることはないと。
フローラは、レイシーとケイトの思考の隙を突いた。
あえて序盤でガーディアンシップを使うことで、ガーディアンフォース×『鋼の宿』の無敵化コンボを成立させようとしたんだ。




