努力するときは、目標設定が大事。――5
スキル構成を決め、フローラとレイシー・ケイトは、間合いをとって相対していた。
「行きますよ! リーリー! ピート!」
『リィ!』
『ワウッ!』
「おいで! ガーちゃん! ケロちゃん!」
『クワァッ!』
『ゲロッ!』
レイシーとケイトが魔石を放り投げ、従魔を呼び出す。
フェアリーアーチンのリーリー、フレイムレトリーバーのピート、ハイウインドイーグルのガーガー、トードゲルのケロが、力強い鳴き声とともに現れた。
レイシーとケイトは、やる気に満ちた顔つきでフローラを見据えている。
ふたりの視線を受け止め、フローラは満足そうに笑いながら三つの魔石を投げた。
「来なさい! モルモル! チッチー! クラクラ!」
『ミュッ!』
『ガアッ!』
『ブクク!』
呼び出されたのは、頭の両サイドにピンク色の花を咲かせた、中型犬サイズのモグラ。魔女の帽子みたいな、三角錐の頭羽を持つダチョウ。鋼鉄製の兜を背負う、大型犬サイズのヤドカリだった。
モグラ型モンスターは『フラワーモール』。レベルは90。
ダチョウ型モンスターは『オーストリッチウィッチ』。レベルは87。
ヤドカリ型モンスターは『ヘルメットクラブ』。レベルは83。
この3体は、ゲーム中盤のフローラのパーティーだ。
フラワーモールはHPとAGIが高く、STRとVITが低い、木・土属性のモンスター。
固有アビリティは、『攻撃スキルに「10%の確率で相手をランダムな異常状態にする」効果を追加する』効果を発揮する『花粉』。
『カリキュラスラット』というモンスターの進化体で、フローラ・ネイブルのマスコットでもある。
オーストリッチウィッチは風・闇属性で、STR、INT、AGIが高く、HPとVITが低い。
『HPが満タンのときだけ、STRとINTが30%上昇する』効果を発揮する固有アビリティ『勝利のまじない』を持ち、火力に適している。
水・鋼属性のヘルメットクラブは、AGIとDEXがとても低いが、VITとMNDがともに高い。
固有アビリティは、『HPが1/2になると、30秒間「防御態勢」になる』効果を発揮する『鋼の宿』。
『防御態勢』とは、『どんな攻撃を受けてもHPが減らない(ただし、なんらかの行動をとると解除されてしまう)』状態のことで、本来は、スキル『エクスディフェンス』を用いることでなれる。
ステータス・固有アビリティともに盾役向きと言えるだろう。
それぞれの装備品は、フラワーモールのモルモルが『光の羽衣』。オーストリッチウィッチのチッチーが『霊銀の腕輪』。ヘルメットクラブのクラクラが『癒やしのヘッドバンド』だ。
光の羽衣は、『相手のDEXを10%下げる』効果。
霊銀の腕輪は、『自分のSTRとINTを10%上げる』効果。
癒やしのヘッドバンドは、『装備しているモンスターのHPを、10秒毎に4%分回復させる』効果を持つ。
「準備はいいな?」
俺が確認すると、従魔を呼び出した三人がコクリと頷いた。
そよ風が吹き、三人の髪とスカートをなびかせる。
野花の花びらが風に舞い、対峙するレイシー・ケイト、フローラのあいだを流れ行き、
「――はじめ!」
俺は号令をかけた。




