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結局のところ、やる気があるやつは応援したくなるのが人情。――2

 俺は「ふむ」と顎に指を当てる。


 フェアリーアーチンの扱いは難しい。


 しかし、どうやっても物にならないわけじゃない。むしろ、スキル構成さえわかれば、非常に役立つモンスターだ。


 俺にはフェアリーアーチンを活かすための知識がある。そして、俺に頼る前にやるだけやってみたレイシーの姿勢は好ましい。


 頑張っているやつには、手を貸したくなるものだ。


「わかった。放課後までに方針を立てておく」

「それじゃあ!」

「ああ。リーリーの育成、手伝うよ」


 俺が首肯すると、レイシーが破顔(はがん)した。


 満面の笑みを咲かせ、レイシーが俺の両手を握ってくる。


 いきなり手を握られ、俺の心臓がドキリと跳ねた。


「ありがとうございます! ロッドくんがいれば百人力です!」

「そ、そうか。そう言ってもらえるなら、よかった」


 ヒマワリのような笑顔と、両手を包み込む、柔らかくて温かい感触に、俺の声がどもる。


 そんな俺の反応にレイシーが首をかしげ、手元に視線を落とし、


「ふゃっ!?」


 (みょう)な鳴き声を上げて、(はじ)かれたように手を放した。


 レイシーの顔が、またたく間に真っ赤に染まる。


「しゅ、しゅしゅしゅしゅみません! い、いきにゃり手を握ってしまいまして!」

「い、いや、気にしてないから」


 わたわたと両手を振るレイシーに、俺は努めて平静を保ちながら返事する。


「あのあのあのあの……で、では、放課後によろしくお願いしましゅ!」


 なぜかわからないが敬礼(けいれい)して、レイシーがクルっと回れ右した。


 ギクシャクと手と足を一緒に出しながら数歩進み、


「はうっ!?」


 椅子に足を引っ掛けて、ステンと転んだ。


「みゃっ!!」と、壁にぶつかった猫みたいな悲鳴が上がる。


「大丈夫か、レイシ……!」


 言いかけて、俺は言葉を失った。


 うつぶせになったレイシーのスカートが(めく)れて、白とピンクのストライプ柄パンツが(あら)わになっていたからだ。


「あ痛たたた……す、すみません、バタバタして」


 身を起こしたレイシーが振り返り、タハハハ、と苦笑いする。自分の恥ずかしいところが丸見えになっていることに、まったく気付いていない様子だ。


 俺は火照る顔をサッと()らし、指差ししながら指摘した。


「えーと……ス、スカート、捲れてるぞ?」

「ふぇ?」


 俺の指差す先を目で追って……レイシーの顔がリンゴみたいな色になる。


「はわわわわわ……は、はし、はしたないところをお見せして、しゅ、しゅみませんっ!!」


 唇を波打(なみう)たせながら、アタフタとスカートを直すレイシー。


 いけないと思いつつも、小動物めいたレイシーの姿に、俺はつい、笑みを漏らしてしまった。

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