エピローグ
ウェルト空間の探索から1週間後。
セントリア従魔士学校1―Aの教室で、レイシーとケイトと俺は、あんぐりと口を開けていた。
「――というわけで、今日から新しいクラスメイトが加わる」
「エストワーズ従魔士学校から転校してきた、フローラ・ネイブルよ。よろしく」
教壇。リサ先生の隣に、先日別れたはずのフローラがいたからだ。
「ど、どういうことですか、ネイブルさん!?」
美少女転校生の登場にざわつく教室に、レイシーの大声が響く。
「なんであなたがここにいるんですか!?」
「転校してきたって言ったでしょ? あたしは、数々の優秀な従魔士を輩出してきたセントリア従魔士学校で学びたいのよ」
「100%出任せじゃないですか! ロッドくんには、『エストワーズ従魔士学校のほうがあなたを活かせる』とか言ってたくせに!」
「それはそれ、これはこれよ。少し落ち着きなさい、レイシー」
「わたしがわからず屋みたいな言い方ぁ――――――っ!!」
珍しく取り乱しているレイシーの様子に苦笑していると、フローラがこちらを見てニヤッと笑った。
「それに、あたしはロッドの許嫁だし?」
ざわついていた教室が静まり返り、
「「「「「「「「ええぇ――――――――――っ!?」」」」」」」」
直後、騒音が爆発した。
「マ、マサラニアくんに許嫁が!?」
「ただでさえ、レイシーちゃんとかガブリエル先輩とかクレイド先輩がいるのに!」
「ハーレム!? ハーレムなの!?」
女子が黄色い声を上げ、
「寮の噂は本当だったのか!」
「『許嫁が会いに来てた』なんてあり得ねぇと、高をくくってた自分を殴りたい!」
「許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ……!!」
男子がギリギリと歯ぎしりする。
好奇と憎悪の視線が集まり、俺は頬をひくつかせた。
やってくれたな、フローラ。しばらくは、質問とか尋問とかで引っ張りだこになるんじゃないか、俺?
これから起きるであろうドタバタを想像しながら、それでも俺の口元に浮かんでいるのは笑みだった。
「まあ、フローラが笑ってれば、それでいいか」
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※お知らせ
次回からは不定期連載となります。




