離れていても力になれるって、案外本当。――18
「大丈夫だった、ロッド!? ケガしてない!?」
30分後、ディメンジョンキマイラを倒して5階層に戻ってくると、眉を下げた心配そうな顔で、フローラが駆け寄ってきた。
「ああ、問題ない。ゲルドもちゃんと止めたぞ。まあ、俺じゃなくてみんなのお手柄だけどな」
引きずってきたゲルドを指さし、俺は微笑む。
後ろにいる4人が、「「「「むっふー!」」」」と誇らしげに胸を張った。
「そっか……よかった……っ」
「いつになくしおらしいな? 『べ、別にあんたのことなんか心配してないんだからねっ!』とか言わないのか?」
「ロッドのなかで、あたしはどんなキャラになってるのよ」
フローラが、はぁ、と溜息をつく。
「本当に不安だったんだから、心配してもいいじゃない」
「いやに可愛い台詞だな。ちょっとときめいたぞ」
「かかか可愛いってなによ! バカじゃないの!?」
冗談半分本音半分でからかうと、フローラは威嚇するネコみたいに肩を怒らせた。
「悪い悪い」と、苦笑しながら両手を挙げる。
フローラが再び溜息をついた。先ほどよりも、どこか重い溜息だ。
「結局、ロッドたちが全部解決しちゃったわね。あたしたちより上層階に進んだし、ウェルト空間の探索はロッドたちの完勝ね」
フローラが微笑む。どこかさみしげな色を滲ませながら。
「約束通り、転校の話はなし。あんたをエストワーズに誘うのは諦めるわ」
「……そうか」
フローラに挑まれた勝負を俺は受けた。転校の誘いも断った。だから、これは俺が望んだ結末だ。そのはずなんだ。
なのに――
勝負に勝って、こんなにむなしいのは、はじめてだな。




