離れていても力になれるって、案外本当。――15
戦闘開始から、およそ15分が経過した。
ディメンジョンキマイラは、あれからエナジーバーストを2回打ち、現在、全ステータスが約33%上昇した状態。HPバーはまだ6本のままだ。
こちらは、『防御態勢』のあいだはユーが、『防御態勢』が解除されているときは、ハイヒールとポーションで回復を挟みつつマルが、互いを守っている。
ユーもマルもまだまだ戦闘可能だが、一手のミスが敗北につながるため、一時も気を抜けない。
『GYAGYAGYAGYAGYAGYAGYA!!』
緊張から浮かんだ額の汗を拭っていると、ディメンジョンキマイラが巨大な岩石を放ってきた。
ロックブラストの発動だ。
『ムゥ!』
ちょうどそのタイミングでユーの『防御態勢』が解けてしまい、俺は舌打ちする。
いまから指示しても、マルがユーを庇うことはできない! とっておきたかったが、『ガーディアンフォース』を使うか!
決断し、俺はマルに指示を出す。
「マル! ガーディアン――」
「チェシャ! ユーさんを守ってください!」
『ミャオッ!』
俺の指示を遮る声があった。
紫色のネコ――チェシャが飛び出し、ロックブラストからユーを庇う。
『ミャ……ッ!』
HPが0になりチェシャが魔石になってしまったが、それでも俺は、安堵の笑みを浮かべた。
「助かりました、ミスティ先輩」
「遅くなり申し訳ありません!」
「あたしたちもいるよ、ロッド!」
「レイシーが奮闘してくれて、なんとかゲルド・アヴェンディを倒せたよ」
「ロッドくんとクロさんのおかげです!」
『ピィッ!』
ミスティ先輩、ケイト、エリーゼ先輩、レイシー、そしてクロが駆け寄ってくる。頼もしい援軍だ。
「みんななら、ゲルド・アヴェンディを倒せるって信じてた」
俺はニッと笑い、壁に背中を預けているゲルドのほうへ目を向けて――ポカンとした。
「えっと……なんか、ゲルドが死んだ目で虚空を眺めているんだが……」
ギクッ、とミスティ先輩以外の3人が肩を跳ねさせた。ミスティ先輩はニコニコと笑っている。
「燃え尽きた灰みたいな顔色してるんだが……ピクリとも動かないし」
ギクッ、とミスティ先輩以外の3人が肩を跳ねさせた。ミスティ先輩はニコニコと笑っている。
「そそそそのだね、ロッドくん! 世の中には知らないほうがいいことがあるんだ!」
「そ、そうだよ! 好奇心は猫を殺すって言うでしょ!?」
「この前読んだ本に、ある男性が余計な探りを入れたために、殺人鬼に追われることになる物語があってですね!」
「待って、なんかメッチャ怖い! 仲間と合流できて心強いはずなのに、鳥肌と悪寒がスゴいんだが!?」
「みなさん? おしゃべりはその辺りにして、ディメンジョンキマイラとの戦闘に集中しませんか?」
「「「承知しました!!」」」
ポン、と手を合わせて指摘するミスティ先輩に、3人が一斉に敬礼した。
ホント、なにがあったんだ? 気になるけど、聞いたらダメだと本能が訴えてるぞ。
それはともかく、ミスティ先輩の言うとおりだ。ディメンジョンキマイラを倒さないと全部終わってしまうんだ。集中しないといけないよな。
「ロッドくん、クロさんをお返しします」
俺が頭を切り替えていると、レイシーが両手にクロを抱え、手渡してくる。
レイシーの顔つきは凜としており、一回り成長したことを示していた。
俺はクロを受け取り、一言。
「レイシーがいてくれてよかった」
「最高の褒め言葉です!」
レイシーが、弾けるような笑顔を見せた。
さあ、もうひと踏ん張りだ!




