離れていても力になれるって、案外本当。――14
従魔を失ったゲルド・アヴェンディを壁際に追い詰め、わたしは命じる。
「ディメンジョンキマイラが生み出した、見えない壁を消してもらおうか」
「断る」
わたしたちの従魔に取り囲まれ、それでもゲルド・アヴェンディは応じなかった。
「ディメンジョンキマイラがロッド・マサラニアを葬る――それだけが、私に残された勝ち筋だ。だからこそ、見えない壁は消さん。一片でも勝利の可能性があるならば、私はそれに食らいつこう」
ゲルド・アヴェンディの固い意志に、わたし、レイシー、アーディーくんは歯噛みした。
「チェシャ、ヒーリングフィールドを展開してくれますか?」
『ミャオ!』
そんななか、クレイド先輩がチェシャに指示する。
淡い緑色の光が、床に広がった。
「なにをしている、ミスティ・クレイド?」
ゲルド・アヴェンディが訝しみ――
グシャッ
彼の右脚が、ティターンの拳で潰された。
「ぎ、ぎゃあぁあああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
ゲルド・アヴェンディの絶叫が響き、わたしたちは瞠目した。
「ク、クレイド先輩?」
「みなさん、ここはわたくしにお任せください」
恐る恐る声をかけると、クレイド先輩がニコッと微笑む。クレイド先輩の目は、深い闇をたたえていた。
「ゲルドさん、改めてお願いします。見えない壁を消してください」
「こ、断る!」
メギャッ
「があぁああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
今度は左腕がへし折られる。
耳をつんざく悲鳴と、クレイド先輩の残虐すぎる仕打ちに、わたしたちは青ざめた。
「傷が痛むでしょう。けれど心配はいりません。ヒーリングフィールドがありますから、どれだけ傷つこうとも回復します」
「拷問の……つもりか……!?」
「一刻も早くマサラニアさんの応援に向かわなければなりません。マサラニアさんのためならば、わたくしは手段を選びませんよ?」
「ふ、ふんっ! この程度の苦痛に私が屈するとでも――」
ゴギンッ!
「ぎゃあぁあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
「ええ。簡単に屈するとは思っていません」
ですから、
「わたくしたちのお願いを聞いてくれるまで、何度でも、何度でも、何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも、繰り返させていただきますね?」
ティターンの拳が振り上げられる。
「ミ、ミスティ・クレイド! 貴様――あぁああああああああああああああああっ!!」
わたしたちは頬を引きつらせ、ガタガタ震えながら、3人で身を寄せ合った。
「レ、レイシー? アーディーくん? ここここれからは、絶対にクレイド先輩を怒らせないようにしよう!」
「「激しく同意(です)!!」」
骨が砕ける音と、ゲルド・アヴェンディの絶叫が、またしても木霊した。




