離れていても力になれるって、案外本当。――3
現在、俺と4人は見えない壁の左右にいる。俺が右側、残りの4人が左側だ。
加えて、
『ピッ! ピィッ!』
クロも4人のほうにいる。
そんな俺に、台座を乗り越えたディメンジョンキマイラが迫ってきた。
現状俺は、ユーとマルだけで、ディメンジョンキマイラに挑まなくてはならない。
「ディメンジョンキマイラがマサラニアさんに迫ってます!」
「200レベルのロードモンスターを、ひとりで相手しなくてはならないのか!?」
「いくらなんでも無茶だよ! クロもいないんだよ!?」
「ロッドくん!? ロッドくん!!」
「きみたちは自分の心配をしたほうがいい」
俺の状況を不安がる4人に、ゲルドがコツコツと歩み寄っていく。
「200レベル以上の従魔は『支配の秘法』の贄にしてしまったが、きみたち程度なら問題ないだろう」
ゲルドが従魔を呼びだした。
「来い、『ボルトバーサカー』。『スリーアイズフォックス』」
『WOOOOOOOOHHHH!!』
『キュオ!』
現れたのは、浅黒い肌に金色の戦装束をまとう、二本角を生やした、筋骨隆々の巨人。
もう一体は、赤い体毛と、青い三つの目を持った、ツキノワグマサイズの大狐だ。
ボルトバーサーカー:149レベル
スリーアイズフォックス:142レベル
巨人――ボルトバーサーカーは、HP、VIT、MNDが低いが、STRとAGIが非常に高く、INTも高い、火力向きのモンスター。
属性は雷で、固有アビリティは、『「怒り」状態になるとSTRが30%上昇する』効果を発揮する『狂暴』。
大狐――スリーアイズフォックスは、INT、AGI、DEXが高く、STRが低い、魔法寄り火力。
属性は火で、固有アビリティは、『スキルの追加効果の発生率に20%が加算される』効果を発揮する『神通力』だ。
どちらのレベルも、俺たちのパーティーで一番レベルが高い、ミスティ先輩のティターン(125レベル)を上回っている。ゲルドの自信は、うぬぼれではないらしい。
たとえ4対1でも、ゲルドに勝利するのは難しいだろう。それでも俺は、無理を承知で頼まないといけない。
「悪いが、なんとかしてゲルドを倒してもらえないか? 俺ひとりでディメンジョンキマイラの相手をするのは、正直キツくてな」
キツいというか、勝ち目がない。
ユーとマルのレベルは、現在どちらも113。レベルがすべてではないが、200レベルのロードモンスターを相手にするのは無謀すぎる。
「俺たちを分断するようディメンジョンキマイラに命じたのはゲルドだ。主であるゲルドが解除するよう指示すれば、見えない壁も消滅するだろう。それまでは、マルとユーでなんとか耐える」
「わかった。ゲルド・アヴェンディはわたしたちに任せてくれ」
「いつもマサラニアさんには助けていただいてますからね。わたくしたちもお返ししないといけません」
エリーゼ先輩とミスティ先輩に加え、レイシーとケイトも首肯した。
「相談は終わりか?」
『GYAGYAGY……!』
ゲルドが冷たい声音で訊いてくる。
ディメンジョンキマイラが、ズシンズシンと地響きを立てて近づいてくる。
「みんな、準備はいいか?」
俺の問いに、4人が力強く頷いた。
4人に頷き返し、俺は牙を剥くように笑う。
「はじめようぜ、ゲルド」
「ああ、すぐに終わらせる」
死闘の火蓋が切られた。




