ダンジョン攻略は、予備知識で決まる。――6
「……疲れた」
「こんなに時間がかかるとは思っていませんでした」
ケイトとレイシーが、「「はあ……」」と溜息をつく。
エリーゼ先輩とミスティ先輩が苦笑した。
「『受け』の相手は大変だからね」
「ええ。わたくしもいまだに苦手です」
「『受け』?」
「って、なんですか?」
耳慣れない単語だったのだろう。ケイトとレイシーが首を傾げる。
「『受け』ってのは、『勝つことより負けないこと』を主軸に据えた戦い方、およびモンスターのことだ」
そんなふたりに、俺は説明をはじめた。
「防御性能の強化、HPの回復、状態異常スキルなどを駆使して、『相手に倒されにくい状況』を構築しながら戦う」
「けど、守るだけじゃ勝てないんじゃない?」
「ああ。だから、『毒』などの継続的なダメージ源や、HP回復を兼用する攻撃スキルなどを用いるんだ。エイシュゴーストで言うならエナジードレインだな」
「守りを固めつつ、じわじわと攻めるんですね?」
「その通りだ、レイシー」
レイシーに頷きを返し、「さて」と問題提起する。
「特徴がわかったところで考えてみてくれ。レイシーとケイトが『受け』を倒すには、どうすればいい?」
「「うーん」」とふたりが腕組みした。
「『倒されにくい状況』を作り上げる前に倒すとか、相手の守りを崩せるくらい攻撃性能の高い従魔で倒すとか?」
「ですが、いまのわたしたちではどちらも不可能です。リーリーもピートもガーガーさんもケロさんも、あっという間に倒すスピードや、守りを上回る攻撃力は持っていません」
ふたりが「「うむむ……」」と唸る。
ケイトの言うことも、レイシーの言うことも正しい。
速攻と高火力は、どちらも『受け』に有効だし、そのどちらもふたりにはない。
真剣に考えるふたりに、俺はヒントを出す。
「なにも攻め一辺倒に考えなくていい。要は、『倒されにくい状況』を相手に作らせなければいいんだ」
「言うのは簡単だけど、そんな都合よく――」
「あっ!!」
眉をひそめるケイトの隣で、レイシーが声を上げた。
「ありますよ、ケイトさん! 『受け』のスキル構成は、『倒されにくい状況』を作るのに特化しているのですから――」
「あっ! そっか! それなら……!」
どうやらふたりとも気がついたようだな。
「対策が閃いたなら、次のエイシュゴーストもふたりで倒してくれるか?」
「もちろんです!」
「今度はもっとスムーズに勝ってみせるよ!」
ふたりが「「ムッフー!」」と鼻息を荒くした。




