自主的な努力こそが、成長の鍵。――11
二日後。
レイシーとケイトは、今日もディダの森でレベリングを行っていた。
ちなみに、今日の同行者は俺だけ。エリーゼ先輩とミスティ先輩は別行動だ。
「これでおしまいです! ピート!」
『ワンッ!』
レイシーの指示を受け、ピートがシャープファングをゴールデンビートルに見舞う。
『GI……GI……』
ピートに噛みつかれ、ゴールデンビートルが魔石になった。
「やったね、レイシー!」
「はい!」
ケイトとレイシーがハイタッチする。
ふたりとも、難なくゴールデンビートルを倒せるようになったな。見守ってきた俺としては感無量だ。
俺が、うんうん、と頷いていると、ピート、ガーガー、ケロの体が輝いた。
レベルアップ。
これで、ピートは46レベル、ガーガーは47レベル、ケロは44レベルだ。
ちなみに、リーリーも61レベルまで上がっている。
従魔のレベルアップに、レイシーとケイトが、キャッキャッ、と喜び合っていた。
そんなふたりに、俺はニッコリ笑ってしらせる。
「頑張ったな、ふたりとも。神さまからご褒美があるぞ」
「「ご褒美?」」
ふたりが首を傾げた直後、ピート、ガーガー、ケロの体が再び輝いた。
ただし、今回の輝きは、レベルアップ時のものとは比べものにならない。3体の姿が見えなくなるほど眩しいものだ。
レイシーとケイトが目を丸くする。
やがて、輝きが徐々に収まっていき、
『ワウッ!』
『クワァッ!』
『ゲロッ!』
成長した3体の姿が現れた。
サモエドみたいだったピートは一回り大きくなり、ゴールデンレトリーバーのようなシュッとしたフォルムに、
ガーガーもより大きな体格になり、より鋭い目付きに、
ケロも同じく巨大化し、加えて筋肉質になっている。
「おめでとう、ふたりとも。従魔が『進化』したぞ」
特定のレベルに達することで、モンスターがより強力な個体に変化する現象――それが進化だ。
ヒートハウンドのピートは『フレイムレトリーバー』に、
スカイホークのガーガーは『ハイウインドイーグル』に、
ジェルフロッグのケロは『トードゲル』に進化した。
3体の進化に、ふたりが瞳をキラキラさせる。
「スゴい! やったね、ガーちゃん、ケロちゃん!」
「可愛いうえにカッコよくなりましたね、ピート!」
感激したのか、ふたりがそれぞれの従魔に抱きつく。
従魔たちも嬉しそうに、ふたりに体をすり寄せていた。
「ふたりとも、よくここまで育てたな。これなら、明日には挑戦できそうだ」
『挑戦』と聞いて、はしゃいでいたふたりが、表情を引き締める。
「いよいよ、ですか」
「あたしたちの努力が試されるんだね」
緊張するふたりに、「ああ」と俺は頷く。
「明日の放課後、ウェルト空間の探索パーティーに加わるための、試験を行う」
ゴクリと唾を飲むふたりに、俺は試験内容を伝えた。
「ふたりには、『ダルト樹海』の『モスベア』と戦ってもらう」
ダルト樹海は、ディダの森の先にあるエイシス遺跡。そのさらに奥に広がる樹海。
モスベアは、ダルト樹海のロードモンスターだ。
「モスベアの情報はふたりで調達してくれ。攻略法を考えることも試験の一貫だ」
そして、
「モスベアに勝利すれば合格。俺、エリーゼ先輩、ミスティ先輩と、ウェルト空間の探索に向かえる」
ふたりの目を見つめながら、俺は締めた。
「健闘を祈る」
「「はい!」」
真剣な顔でふたりが答え、相談をはじめる。
「セントリアの図書館なら、モスベアの情報が見つかるかもしれません」
「その前に、もっとレベルを上げておいたほうがいいかも。ウェルト空間の推奨レベルは50なんだから、モスベアはきっと50レベル以上だよ」
話し合うふたりを眺めながら、俺は口端を上げた。
さーて。ふたりがどこまで成長したか、見せてもらうぜ?




