自主的な努力こそが、成長の鍵。――9
『クワァッ!』
さらに追い打ち。
チャージタイムを終えたガーガーが、ラピッドアローを発動させた。
ガーガーが勢いよく両翼を振り抜く。その翼から、尖った羽毛が矢の如く射出された。
『GIGI!?』
射出された羽毛に襲われて、ゴールデンビートルのHPが削れる。ジャンピングストンプと合わせて、残HPは1/2を下回った。
『GIGI……!』
「負けていられない」と言うように、ゴールデンビートルが頭部を前傾させて、角をケロに向けた。
トラストスピアの構えだ。
ケイトが指示する。
「一旦、『ヒール』しておこう、ケロちゃん!」
『ゲロッ!』
ケイトに賛同するように、ケロが頷いた。
ヒールは、最大HPの25%分、HPを回復する魔法スキルだ。
なるほど、堅実な試合運びだな。
俺は感心する。
優位に立っているとはいえ、ゴールデンビートルのレベルは、ケロ、ガーガーよりも高い。つまり格上だ。
加えて、ガーガーにとって、ゴールデンビートルのリーフエッジは弱点属性。ケロが倒れたら、一気に劣勢に陥る。
そこで、ケイトは安全策として、ヒールを用いることにしたのだろう。
「ガーちゃんは『ウインドカッター』ね!」
『クワァ!』
攻めのほうも忘れない。
ガーガーが翼をはためかせ、周囲の空気が渦を巻きだした。
風属性魔法攻撃『ウインドカッター』の準備。チャージタイムは5秒。
ゴールデンビートルは風属性に強いため、大したダメージは入らないが、打っておくに越したことはない。
『ゲロッ!』
チャージタイムの3秒が過ぎ、ケロのヒールが発動した。
ケロが白い光に包まれて、HPが回復する。
「ドンドン行くよ! 『ウォーターウィップ』!」
『ゲロッ!』
さらにケイトの指示が飛び、ケロが頬を膨らませた。
準備モーションがウォータージェットと瓜二つなこのスキルは、二連続攻撃の、水属性魔法スキル『ウォーターウィップ』。チャージタイムは3秒だ。
『GIGIGI!』
ゴールデンビートルもやられてばかりじゃない。トラストスピアでケロに突撃した。
『ゲロッ!!』
ケロのHPが1/4削れる。
だが、問題ない。受けたダメージは、あらかじめ用いられた、ヒールの回復で、補われているのだから。
『GIGI!』
『ゲロッ!』
思い通りにいかない展開に苛立ったのか、ゴールデンビートルが続け様にスピードタックルを放った。
高速タックルを食らい、ケロが後退る。
それでもケイトは怯まない。
「頑張って、ケロちゃん! あと少しだよ!」
そう。ケイトの勝利は目前だ。
ケイトの期待に応えるように、『ゲロッ!』と、ケロが力強く頷く。
ガーガーも雄々しく鳴いた。
『クワァッ!』
ガーガーの周りで渦巻いていた空気が、刃となって射出される。
ウインドカッターの発動。
風の刃がゴールデンビートルを襲った。
『ゲロッ!』
加えて、ケロのウォーターウィップが発動。
ケロの口から吐き出された水流が、鞭のようにしなり、ゴールデンビートルを打ち据える。
『GI……!』
「これで終わりだよ!」
ウォーターウィップは二連続攻撃。
返す軌道で振るわれた水の鞭が、ゴールデンビートルにトドメを刺した。
『GI……GI……!』
ゴールデンビートルが倒れ、魔石となる。
勝利したケイトが、「よっし!」とガッツポーズをとった。




