自主的な努力こそが、成長の鍵。――8
ケイトとゴールデンビートルの戦いがはじまっていた。
『GIGIGI!』
先手をとったのはゴールデンビートルだ。
開幕一番のスピードタックルを、ジェルフロッグのケロに見舞う。
『ゲロッ!?』
のけ反るケロだったが、直ぐさま体勢を立て直した。
ジェルフロッグはHPが高いモンスターであるため、まだまだ残HPには余裕がある。
「『アクセル』だよ、ガーちゃん! ケロちゃんは『ウォータージェット』!」
『クワァ!』
『ゲロッ!』
ケイトの指示に、スカイホークのガーガーと、ケロが応じる。
ガーガーがまぶたを閉じ、ケロがブクゥッ、と頬を膨らませた。
『自身のAGIを30%上昇させる』物理スキル『アクセル』と、水属性の魔法攻撃『ウォータージェット』の構え。
アクセルのチャージタイムは2秒。ウォータージェットのチャージタイムは5秒だ。
『GIGI……!』
ゴールデンビートルも、次のスキルの準備に入った。
ゴールデンビートルの周囲に無数の緑葉が浮かぶ。リーフエッジの準備モーション。
宙に浮かぶ緑葉の葉先は、ガーガーに向けられていた。
スピードタックルを食らったことで、ケロのヘイト値が減少し、ゴールデンビートルのターゲットがガーガーに移ったんだ。
「むっ!」と、ケイトが眉をひそめる。風属性のガーガーが、木属性に弱いからだろう。
加えて、『直接攻撃を受けない』という強力な固有アビリティ『飛翔』を有するスカイホークは、その分、VIT・MNDがとても低くなっている。
弱点属性の攻撃は、ガーガーにはかなり厳しい。一撃ダウンの可能性もある。
上手くケロでフォローできるかが、勝負の分かれ目になるだろう。
『クワァッ!』
2秒経ち、カッと目を見開いたガーガーが、素早く羽ばたいた。
アクセルの発動。ガーガーのAGIが上昇する。
「次は『ラピッドアロー』だよ!」
『クワァ!』
ガーガーが翼を大きくはためかせ、その羽毛が鋭く尖った。
物理攻撃『ラピッドアロー』の準備。チャージタイムは5秒だ。
次いで動いたのはケロだった。
『ゲロォッ!』
ケロがゴールデンビートルに向けて口を開く。
その口内から高圧水流が放たれた。ウォータージェットの発動だ。
『GIGI!?』
高圧水流を食らったゴールデンビートルが、ヨロヨロと後退る。
ゴールデンビートルのHPは5/8になった。ケロよりも、ゴールデンビートルのほうが6レベルも高い。レベル差を考えると、相当なダメージ量だ。
その要因は、互いの属性にある。鋼属性のゴールデンビートルは、水属性に弱いんだ。
『GIGIGI!』
ダメージを与えたことで、ケロがヘイト値を稼いだ。ゴールデンビートルのターゲットがケロに戻る。
ひとまずこれで、ガーガーが弱点属性のリーフエッジを食らうことはなく、戦闘不能のピンチから逃れられた。
ケイトが胸を撫で下ろす。
『GIGI!』
ゴールデンビートルのリーフエッジが発動した。
無数の緑葉が刃と化して、ケロ目がけて殺到する。
「甘い! 『ジャンピングストンプ』!」
『ゲロッ!』
ケイトは慌てない。
ケイトの指示を受けたケロが、後ろ脚の筋肉を膨張させて、空高く跳び上がった。
大ジャンプしたケロの下を、緑葉の刃が通過していく。
『GIGI!?』
「そんなバカな!?」と言いたげに、鳴き声を上げるゴールデンビートル。
驚愕するゴールデンビートルを、跳躍したケロが踏み付けた。
『ゲロッ!』
『GIGI!!』
一連の流れを見て、俺は呟く。
「上手い」
ジャンピングストンプは、チャージタイム0秒、クールタイム1分の物理攻撃。一旦、大ジャンプをしてから、相手を踏み付けるスキルだ。
この際、相手の攻撃に合わせてジャンプすると、その攻撃を回避することができる。
完璧なタイミングの指示だった。ケイトもなかなかやるな。




