自主的な努力こそが、成長の鍵。――7
スピードタックルは、先制効果を持つ代わりに威力が低い。ゴールデンビートルに与えるダメージは微々たるものだ。
だが、ビルドアップ+『奮闘』+ギフトダンスにより、ピートのSTRは約1・86倍になっている。
これだけ強化されていれば、話は違う。
ピートのスピードタックルが、ゴールデンビートルを吹き飛ばした。
ゴールデンビートルが、背後の木に叩きつけられる。
『GI……GI……』
ピクピクと痙攣して、ゴールデンビートルが地に伏す。
ゴールデンビートルの体が光の粒子と化し、魔石となって転がった。
戦闘終了。
レイシーの勝利だ。
「やりましたぁ――っ!!」
レイシーが万歳しながら飛び跳ねる。
「ナイスファイト、レイシー!」
「いい戦いだったぞ」
「ええ。見事な試合運びでした」
ケイト、エリーゼ先輩、ミスティ先輩も、レイシーの戦いぶりを褒めたたえる。
「要点を押さえた的確な指揮だった。レイシーが今日まで努力してきたことがよくわかったよ」
俺もパチパチと拍手を贈る。
レイシーが、「えへへへ」と頬をゆるめた。
「さあ、ご褒美の時間だぞ」
「ご褒美?」
俺の言葉に、レイシーがコテンと首を傾げる。
キョトンとした無防備な表情を微笑ましく感じながら、俺は指摘した。
「目的を忘れたのか、レイシー? 俺たちは、従魔のレベルアップに来たんだぜ?」
そう言った直後、ピートの体がパアッと輝く。
レベルアップの証だ。
「わあっ」と瞳をキラキラさせて、レイシーがメニュー画面を開いた。
レイシーの顔に、花咲くような笑みが浮かぶ。
「皆さん、見てください! レベルがふたつも上がりました!」
ピート:34レベル
レイシーが開いたメニュー画面を見て、3人が「おおっ!」と驚きの声を上げる。
信頼度100%の無垢な笑顔で、レイシーは俺を見上げた。
「ロッドくんのおかげですね♪」
「ゴールデンビートルを倒したのはレイシーだ。きみの努力の結果だよ」
俺がそう返すと、レイシーはくすぐったそうにはにかんだ。
「さあ、次はケイトの番だ」
「はいよっ!」
ケイトが元気よく手を挙げ、俺はコナラ属の樹木に、『蜜』を塗りにいった。




