自主的な努力こそが、成長の鍵。――3
会議を終えた俺たちは、『ディダの森』を訪れていた。
『ギフトダンス』の『魔法のスクロール』を入手するため、レイシーと向かった『エイシス遺跡』。その前に広がる森だ。
「レベリングはここで行うのですか?」
「超効率的って言ってたけど、どんな方法なの?」
尋ねてきたレイシーとケイトに、俺は答える。
「ここに出現する『ゴールデンビートル』をひたすら倒すんだ。ゴールデンビートルは、『相手に与える経験値が10倍になる』固有アビリティ『金脈』を持っているから、実質10倍速でレベルアップできる」
「ゴールデンビートル?」
「そのようなモンスターは、聞いたことも見たこともありませんよ?」
エリーゼ先輩とミスティ先輩が、訝しげな顔をした。ふたりとも、ゴールデンビートルの存在を知らないらしい。
まあ、仕方ないかもしれないな。ゴールデンビートルは特殊なモンスターだし。
「ゴールデンビートルは、条件を満たさないと出現しないんすよ」
苦笑しつつ、俺は説明する。
「まず必要になるのが、『スウィートドライアド』を倒した際に手に入る、『スウィートドライアドの蜜』。それを、この森に生えているコナラ属の樹木に塗って、はじめて出現するんす」
ゲームでも、このレベリング法が発明されるまでには時間がかかった。
なんでも、用途不明だった『スウィートドライアドの蜜』を、カブトムシの採取法を真似て、樹木に塗ったプレイヤーがいたらしい。
その樹木が偶然コナラ属のものだったらしく、ゴールデンビートルが出現。情報が攻略Wikiに掲載され、検証ののちにレベリング法が確立されたんだとか。
もちろん、この裏事情は、みんなには教えない。
「もしかして、ゴールデンビートルって新発見のモンスター?」
「ああ。学会に発表したら、表彰ものだろうね」
「スゴすぎて言葉が見つからないです」
「常識を軽々と覆されますね、マサラニアさん」
俺の説明を聞いた4人は、揃って目を丸くしていた。
「いたぞ」
そんななか、俺は木々の先に目当てのモンスターを見つけ、ニヤッと口端を上げる。
体に蔦をまとう女性型モンスター。頭には花が咲いており、そこから甘い香りを放つ蜜が垂れていた。
スウィートドライアド:34レベル
「ここは俺が倒してくる。ユーの『パージ』・『リバーサルストライク』コンボで瞬殺できるからな」
4人がコクリと頷き、俺はユーを呼び出した。




