相手の手を読み切った者が、勝負を制する。――11
それから5分。
先輩たちの従魔の活躍と、リーリーによる支援、クロとマルのサポートにより、なんとかイービルヴァルキリーのHPバーを、1本まで削ることができた。
HPポーションもMPポーションも切れてしまったが、射程圏内だ。
しかし、そこで最後の障害が立ちはだかる。
『WRRYYYYYY!』
イービルヴァルキリーの周りに、6枚の盾が出現した。固有アビリティ『イージスの盾』だ。
「ここまで来て、それか!」
「マズいね……ポーション切れで、俺たちの従魔は回復できない。これ以上、長引かせるわけにはいかないのに……」
「もし、わたしたちの従魔が倒されて、『魂狩り』が発動してHPを回復されたら、今度こそ勝機が失われます!」
アームストロング先輩が顔をしかめ、カーマー先輩が舌打ちし、ミスティ先輩が歯噛みする。
そう。もはや、先輩たちの従魔は限界寸前だ。一刻も早い決着が望まれる。
だが、出現した6枚の盾が、勝利を阻んでいる。
「やりましょう」
三人の先輩が苦々しい顔をするなか、エリーゼ先輩が凜然と言った。
「『イージスの盾』を超えれば、ロッドくんが決めてくれます。わたしたちの仕事は、彼の邪魔をさせないこと。最後の力を振りしぼりましょう」
三人の先輩は一瞬、キョトンとして、次いで表情を和らげた。
「俺としたことが弱気になっていたな」
「逆に考えれば、『イージスの盾』はイービルヴァルキリーの最後の抵抗だしね」
「ええ。勝ちましょう!」
三人の先輩が奮い立ち、エリーゼ先輩がこちらを向く。
「見ていてくれ」
「もちろんっす」
それだけのやり取りでよかった。
先輩たちは、必ず『イージスの盾』を破壊してくれる。
俺は、俺の成すべきことを成すだけだ。
「フレイムキャノンだ、ガンド!」
『ゴオォ……!』
「ファルコ、ソニックチャージ!」
『クワァ……!』
「アイスシェルです、ティターン!」
『OOOOHH……!』
「バレットタックルだ、ファブニル! ゲオルギウスはアークスラッシュ!」
『GOOOOHH……!』
(コクリ)
先輩たちの従魔が総攻撃の準備に入った。
俺は、マルのアーマータックル発動のタイミングを計る。
「マル、アーマータックル!」
『キュウ!』
2秒が経過したとき、俺はマルに攻撃の指示を出した。
マルが体を丸め、ギュルギュルと回転をはじめる。
「俺から切り込ませてもらうよ!」
『クワァッ!』
まず発動したのは、ファルコのソニックチャージだ。
一迅の風となったファルコがイービルヴァルキリーに突進し、漆黒の盾を1枚破壊する。
「行け、ファブニル!」
『GOOOOOOOOHH!』
次いでファブニルが、全身砲弾と化してイービルヴァルキリーに突っ込んだ。漆黒の盾が、また1枚砕け散る。
「俺も負けていられんな!」
「お願いします、ティターン!」
『ゴオォッ!』
『OOOOOOOOOOHHHH!』
さらに、ガンドのフレイムキャノンが、ティターンのアイスシェルが、二枚の盾を粉々にする。
最後に飛び出したのがゲオルギウスだ。
「決めるぞ、ゲオルギウス!」
ゲオルギウスが頷き、大上段に大剣を振りかぶり、イービルヴァルキリーに肉迫する。
2メートルはあろうかという大剣が振り下ろされ、イービルヴァルキリーの盾を斬り裂いた。
しかし、
「あと1枚残っています!」
レイシーの言うとおり、『イージスの盾』はまだ残っている。
「心配するな、レイシー」
慌てるレイシーに、俺は告げた。
「エリーゼ先輩は、約束を守ってくれる」
なにしろ、
「アークスラッシュは、2連続攻撃なんだからな」
ゲオルギウスが大剣の柄を捻り、斬り下ろしから斬り上げへと繋げた。
最後の『イージスの盾』が両断される。
先輩たちが叫んだ。
「「「「行けえぇええええええええええええ!!」」」」
「おう!!」
俺は答える。
「アーマータックル!」
『キュウ!!』
マルがイービルヴァルキリー目がけ、豪速の体当たりを仕掛けた。




