相手の手を読み切った者が、勝負を制する。――4
決勝戦が開始する少し前。
わたし、エリーゼ・ガブリエルは、クレイド先輩に呼ばれ、宿の一室まで来ていた。
「ジェイク・サイケロアが、スペルタンの一員!?」
わたしとクレイド先輩以外に誰もいない部屋に、わたしの声が響く。
クレイド先輩が神妙な面持ちで頷いた。
「はい。彼はレドリア王を殺害するため、『死大神の宝珠』というアイテムを用い、イービルヴァルキリーというロードモンスターを呼ぶつもりらしいです」
「サイケロアくんが学生選手権に参加したのは、そのためか……!!」
合点がいった。
サイケロアくんは従魔でひとを襲うらしいが、スペルタンの一員だとしたら、不思議でもなんでもない。
「しかし、どうしてクレイド先輩は、そのようなことを知っているのですか?」
「ある方から教えていただきました。残念ながら、その方が誰かはお教えできないのですが」
クレイド先輩が苦笑する。
ロッドくんか。
わたしは確信した。
ロッドくんは、常識を凌駕する発想力と、誰よりも深く幅広い知識を持っている。サイケロアくんを警戒するよう注意してくれたのもロッドくんだ。
クレイド先輩が誰に教えられたか明かせないのは、勝者の権限で制限されているからだろう。
クレイド先輩は、ロッドくんの命令をひとつ、聞かなければならないのだから。
まったく……本当にきみは、底が知れないな。
「その方は、ジェイクさんの企みを阻止するつもりらしいのですが、万が一、イービルヴァルキリーが出現した場合に備え、迎撃してほしいとわたくしに頼まれました」
「だから、わたしに声をかけたのですね?」
「ええ。イービルヴァルキリーは、相当強力なモンスターとのことです。わたくしひとりでは、迎撃などとてもではありませんが無理でしょう」
ですから、
「四天王の皆さんに、声をかけさせていただきました」
「わかりました。わたしも協力します」
わたしが即答すると、クレイド先輩はキョトンとした。
「よろしいのですか? 命の保障はできないのですよ?」
「構いません」
わたしの決意は揺るがない。
サイケロアくんとの試合に負けてしまった。
ロッドくんと決勝で戦えなかった。
わたしは、ロッドくんとの約束を、なにひとつ守れていない。
だけど――いや、だから。
この約束だけは、果たす。
「必ず立ち直ると約束しました。いまこそ、そのときです」




