表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/219

相手の手を読み切った者が、勝負を制する。――4

 決勝戦が開始する少し前。


 わたし、エリーゼ・ガブリエルは、クレイド先輩に呼ばれ、宿の一室まで来ていた。


「ジェイク・サイケロアが、スペルタンの一員!?」


 わたしとクレイド先輩以外に誰もいない部屋に、わたしの声が響く。


 クレイド先輩が神妙(しんみょう)面持(おもも)ちで(うなず)いた。


「はい。彼はレドリア王を殺害するため、『死大神の宝珠』というアイテムを用い、イービルヴァルキリーというロードモンスターを呼ぶつもりらしいです」

「サイケロアくんが学生選手権に参加したのは、そのためか……!!」


 合点(がてん)がいった。


 サイケロアくんは従魔でひとを襲うらしいが、スペルタンの一員だとしたら、不思議でもなんでもない。


「しかし、どうしてクレイド先輩は、そのようなことを知っているのですか?」

「ある(かた)から教えていただきました。残念ながら、その方が誰かはお教えできないのですが」


 クレイド先輩が苦笑する。


 ロッドくんか。


 わたしは確信した。


 ロッドくんは、常識を凌駕(りょうが)する発想力と、誰よりも深く幅広い知識を持っている。サイケロアくんを警戒するよう注意してくれたのもロッドくんだ。


 クレイド先輩が誰に教えられたか明かせないのは、勝者の権限で制限されているからだろう。


 クレイド先輩は、ロッドくんの命令をひとつ、聞かなければならないのだから。


 まったく……本当にきみは、底が知れないな。


「その方は、ジェイクさんの(たくら)みを阻止するつもりらしいのですが、万が一、イービルヴァルキリーが出現した場合に備え、迎撃してほしいとわたくしに頼まれました」

「だから、わたしに声をかけたのですね?」

「ええ。イービルヴァルキリーは、相当強力なモンスターとのことです。わたくしひとりでは、迎撃などとてもではありませんが無理でしょう」


 ですから、


「四天王の(みな)さんに、声をかけさせていただきました」

「わかりました。わたしも協力します」


 わたしが即答すると、クレイド先輩はキョトンとした。


「よろしいのですか? 命の保障はできないのですよ?」

「構いません」


 わたしの決意は揺るがない。


 サイケロアくんとの試合に負けてしまった。


 ロッドくんと決勝で戦えなかった。


 わたしは、ロッドくんとの約束を、なにひとつ守れていない。


 だけど――いや、だから。


 この約束だけは、果たす。


「必ず立ち直ると約束しました。いまこそ、そのときです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ