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弱小モンスターが大器晩成型なのは、育成ゲームではよくある話。――10

「どうだ、落ちこぼれ? 30レベルだぞ? お前(ごと)きでは到底辿(たど)り着けないだろう?」

「たしかに、30は無理だったな」

「そもそもブラックスライムなんかでレベル上げできたのか? 1レベルでも上げられたのなら褒めてあげるよ」


 打って変わって強気な態度になるカールに、俺は気負(きお)いなく答える。


「俺が育てられたのは、ここまでだ」


 言いながら俺は魔石を放り投げる。


『ピィッ!』と、いつものように元気な鳴き声を上げるクロを心強く思いながら、俺はメニュー画面を開示した。




 クロ:20レベル




「な……っ!?」


 カールが頬を引きつらせ、生徒たちが絶句した。


 演習場が沈黙に満たされる。


「ブラックスライムを20レベルまで育てたやつなんて……これまでに、いたか?」


 ポツリと誰かが呟き、沈黙はまたたく間にどよめきに変わった。


「マ、マサラニアくん、きみにも尋ねたいのだが……」

「あ、パワーレベリングはしてないっすよ?」


 普段は半開きの目を丸くしているリサ先生に、俺はカラッとした声付きで答える。


「俺とクロは、学校が所有する、初級者用の森でレベル上げしました。なんなら調べてもらっても大丈夫っす」

「あ、あたし、見ました! マサラニアくんがレベル上げしてるとこ!」

「わたしもです! たしかに、ロッドくんはひとりでレベル上げしていました!」

「そうか……それなら構わない」


 ふたりの女子生徒が手を挙げて俺の証人となり、リサ先生が肩の力を抜いた。


「バ、バカな……20レベル、だと?」

「どうした、カール? あり得ないものを見たような顔をして」

「あ、当たり前だ! たった三日だぞ!? ひとりで20レベルに辿り着けるなんて、信じられるか!」

「お前だって30レベルまで上げただろ」

「……っ!」


 俺に切り返されたカールが息をのみ、それっきり黙りこむ。


 これ以上話したら、自分がパワーレベリングしたことがバレると思ったんだろう。現にいま、ボロを出しかけたし。


 まあ、実は俺も育成チート(ズル)したんだけどな。


「だ、だが、結局のところは僕のほうが上だ! お前が僕に敵うはずがないんだよ!」

「たしかにレベルでは負けちまったな」


「それでも」と、俺は確信を持って言い切る。


「10程度のレベル差、いまのクロには問題にならねぇよ」


 カールが口端をヒクつかせ、苛立(いらだ)ちを(あら)わにした。


「口だけは達者(たっしゃ)なようだな! いいだろう! お前の思い上がりを僕が正してやる!」

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