八章.孤は陰であり陽になる(終)
穏やかで気持ちの良い風が吹き、髪をわずかになびかせる。
長い話し合いも終わりようやく姫としての役割に一息入れられると、蘭は国を眺める為に設えられた塔の窓枠に腕を載せ視線を町へと向けた。
すぐに屋敷へ戻っても構わなかったのだが、どうしてもこの場所へ来たいと思い自ら申し出て登って来たのだ。
「ここなら普通に喋ってもいいよね? これ以上はもう無理」
ただ姿形を真似るのではなく、今回は本人として考え意見を述べた。これまで使った覚えがない程に頭を酷使した疲れは相当なものであり、蘭は大きく息を吸い込み気持ちの切り替えを図る。
「構いませんよ。しかしここで良いのですか?」
隣にいるユージィンは不思議そうな表情を浮かべており、蘭は手を組み腕を前へ伸ばしつつも笑って見せた。
「いいの、わたしもここが好きだし、姫様が大切な話をした後に国を思って町を見るというのも良いでしょう?」
「やっぱり、どこか似てんだな」
離れた位置に座るセルアの声に蘭は思わず振り返る。
「似てるって?」
「あいつにだ」
セルアが言うあいつとは姫を指しているのだろうとは思ったが、どこがどう似ているのかと首を傾げたくなる。おそらくではあるがセルアは見た目以外に対して告げたのだろう。
セルアは蘭が不思議がっているのを理解しているだろうにも面倒そうな表情を浮かべるだけであり、それでは説明不足でしょう? とユージィンが続きを述べる。
「姫は重要な出来事の後は必ずこの塔へ登られるのですよ。それを知らずとも実行したランに驚き、やはり似ていると思ったのは私も同じですよ」
知らぬまま本人と同じ行動を取っていた事に驚きつつも、姫を演じ切らねばならないと思っていた蘭は言う。
「それなら最初から言ってくれれば良かったのに、この方がより本物らしく見えるでしょ?」
常に塔に登るという習慣を持っていたのなら、蘭も同じくここへ来るべきなのだ。それは周りへ蘭が姫である事への違和感を覚えさせないという効果をもたらしてくれる可能性が高い。
「考えなくはなかったのですが、先程の会話でじゅうぶんに疲れると思っていたので言うべきかを迷っていたのですよ」
ユージィンが告げるように自分ではない誰かを演じるという事は難しく、相当疲弊するものだった。今も立ってはいるが、壁に寄りかかり蘭はなるべく楽をしようとしている。
この後は再び城内を通り屋敷へと帰るのだ。その為にはわずかにでも疲れを取り、再び姫になりきりたかった。
どうやらユージィンは、蘭がすぐに屋敷へ戻るべきか塔へ向かうべきかをその場で決めるつもりだったらしい。しかし蘭は思惑よりも先に塔へ登りたいと言い、そのままここへ向かって来た。
「正直驚きました。こちらが思っている以上に蘭は姫として行動する事を理解している、と言うよりはやはり何かが近しいのでしょうか?」
感心するような仕草を見せたユージィンではあるが、その後に首を軽く傾げた様子から不思議にも思っているようだ。
そんなユージィンを見つめていたセルアはあぐらをかいたまま、自身の髪をかき上げ溜め息を零す。
「あんまり似てくるのも考えものだ」
「つい頼りたくなってしまいそうですからね」
「ああ、代役も便利だが頼り切るのも不安だからな。それにしてもよくやり切った。たまに心配にはなったが、あれならじゅうぶんに通用しただろう?」
セルアがユージィンへ視線を向けると、しっかりと頷かれる。
「ええ、見事に演じていただきました。本人より少し優しげな感じもしましたが、姫はああしたお方です」
結構厳しくしたつもりだったと蘭は考えながらも、本当の姫とはどんな人物なのかと考えた。
しかし答えが出るはずもなく、蘭は今回姫として発言した事で城内にどんな影響を及ぼすのかを意識してしまう。そうなると行き着くのはあくまで自身は偽者だという点になる。
「このままわたしが姫様をしていてもいつかは限界が来ると思うよ? 今日はたまたまうまく行ったと考えるべきではない?」
背を壁に当てたままずるずると蘭はしゃがみ込み、隣にいるユージィンと斜め向かいにいるセルアに告げた。
三者を揃える為にはユージィンとセルアだけではどうにもならない。姫自らが望み、それを実行すると言わねば無理だと城へ入った。しかし、一度表に立ってしまうとそのまま続ける必要性があるのではないのか? 現にアンヘリカへ向かうと口にした時点で、蘭は参加すると示してしまっている。
これが演劇ならば良いのにと蘭は思う。筋書きがありしっかりと終わりのあるものならば、そこを目指してひたすら演じて行けばいいのだ。だが、今は明確な終わりが見えない。
むしろ姫という役割がはっきりと始まってしまったとさえ思えてしまう。
「ランが言う事も最もだ。今まではあいつが存在すると見せかけるだけでもじゅうぶんにやって来れただろう? この件でそれは大きく変わる」
セルアは立ち上がると蘭の側へ来て再び座り込み、片手で髪に触れた。
「さっきの働きでも負担をかけ過ぎているとは思わねぇか? このままではランもこの件の中心からは逃げられねぇ」
「それは私もわかってはいます」
ユージィンは笑み潜め真剣な眼差しでこちらを見つめ返して来る。
「今日までランの姿は見せるだけに留め、どうにか誤魔化して来ました。しかし、今回の件に限らずシェラルドがこちらへ意思表示をして来た場合、ランにはどうしても姫として表に出てもらわざるを得ません。その時を迎える前に、こちらから手を出すほかはないのですよ」
「あいつはこの国の事実上の長だ。戦っていないとはいえ安定もしていない現状で本人がいないと公表するわけにもいかねぇ……それがわかっていてもランに負担をかけるのが嫌なんだよ。本当にシェラルドの奴らの前に出すつもりか?」
きつい物言いになったセルアへ、ユージィンははっきりと言葉を返す。
「ただ身代わりとして、容姿が似ているだけでは済まないところへ行き着いてしまったのです。ランに頼らずにできる事なら私もそれを選びたい。ですが、もう限界なのです。もし本当に三者が揃うとなった時、ヘンリクが来たならば私の名を出す事でしょう。事態は大きく変わります」
「それを回避するにはランが必要だと言うのか? ユージィンは一体何を考えてるんだ? 俺がお前を信用して手を貸しているのはわかってんだろうな」
視線をぶつけ合う二人はそのまま何も言わず、長い沈黙が訪れた。セルアは言葉を待ち、ユージィンは目を閉じおそらくではあるが何かを考えている。
セルアは蘭がこれから先も姫の代役を続けなくてはならない事に異論を唱え、ユージィンもわかってはいるが譲れないと言う。どちらも間違ってはいないのだろうと蘭も頷けた。
自分がこのまま姫を演じ続ける事自体にも大きな不安はある。しかし現在はユージィンがマティアスであるという事実が露呈するかどうかの瀬戸際なのだ。うまく回避する為には姫の存在が必要であり、蘭は身分を偽らざるを得ない。
「今、姫様がいたらどうしたんだろう……?」
あくまで足りないのはウィルナの姫であり、それが揃えば先は見えるのだろうかと蘭は呟く。するとセルアは端的に告げた。
「この状況であいつが帰って来たなら、同じ結果を出すだろうな」
「アンヘリカでシェラルドと会おうとするの?」
いまだに髪に触れていたセルアの手を蘭は掴み、降ろさせながら見上げる。
「あいつはそういう奴だ。この機会を逃すはずがねぇ。両国間を良くする為に率先して動き出す」
「なら、わたしは姫様をするしかないよ。たぶんだけどこれをしなければいけないって思うの。わたしがここへ来たから今があるんでしょう? 姫様がずっとウィルナにいたままではヘンリク王子に会う事もなかったし、そもそもアンヘリカへは向かっていないもの。これはわたしがいたからこその出来事なんだよ」
これまで何度も蘭がいたからこそ動いた事態があった。その全てを通した結果が現状であり、自分は当事者だと思うしかないのだと蘭はセルアを見つめる。
「ランがいたから俺もこの姿でいられる、何かが動いているのも分かっている。だけどな……」
どうしても蘭が姫役をする事にセルアは納得し切れないらしい。表情は苦々しく、口調も珍しくはっきりとしない。
「今こそあいつに帰って来て欲しい時だ。もし悪い結果を迎えたならば、俺達は戦う事になるかもしれねぇ。……あいつがいない中でそれだけは避けたいんだ。そして、ランをその中へ巻き込みたくはねぇ」
ウィルナとシェラルドが戦うという噂が本当になる可能性は相当高いのだろう。こうして戦わない事についてばかりを語ってはいるが、これまでこの世界で暮らして来た人々が抱く感情は蘭とは違っているのかもしれない。想像以上の重みを持った何かがあるのかと思わされる。
セルアが知っている現実を自分は知らない。だが、蘭はそれでも思いを強くするほかはないと心に決める。
「わたしは必要があってここにいるはずなんだから、これは無駄な事ではないと思う。魂の欠片であるわたしにできる事があるから、だからここにいると思わなきゃいけないんだと思うの」
触れている手を更に力強く握るとセルアはじっとこちらを見つめ、一つ溜め息を零す。
「ランはそれで本当にいいのか? 危険な目に会う可能性は高いぞ」
不安は確かにあるが、今は飲まれている場合ではない。酷くおぼろげなものの、これがすべき事だと訴える感情があるのだ。蘭は自信を持って頷いてみせる。
「今までだって全部どうにかなって来たもの、大丈夫だよ」
「説得力のねぇ言葉だな。どうにかなったとしても、どれも俺としては心臓に悪かったがな」
納得したのかはわからないまま、セルアはそう告げるとようやくの笑みを浮かべた。
先程から黙り込んだままのユージィンは眉を潜め何かを考えていたらしいが、突然何かに思い至ったように頷く。
「やはり、ランの言葉と私の先視みを信じて動く以外はないようですね」
「わたしの言葉と先視み?」
急に発された内容がどう繋がるのかが分からず、蘭は思わず聞き返した。
ユージィンは神妙であった面持ちをすっかりいつも通りの笑みへと変え、珍しく床へ座り込んだ。
こうしてユージィンが地べたに腰を下ろす姿を見せるのは意外なものであり、蘭だけではなくセルアも窺うような素振りを見せた。
「どうしたんだ?」
「蘭の言葉を聞いて思うところがあったのですよ。これから私はユージィンだけではなく、本当にマティアスでもある事にもしましょう」
晴れやかな表情と共に紡がれた言葉は奇妙なものであり、蘭もセルアもいぶかしげにユージィンを見つめる。
「私はこれまでウィルナにいるからにはユージィンであり続けようと思っていました。それはおそらく間違いではなかったのでしょう。それを成さなければ現在の地位に就く事はありませんでした。しかし、今はそれにこだわっている場合ではありません。ユージィンとしてウィルナでの仕事をこなしながらも、マティアスとして先視みの力を使う。それが今、私のすべき事なのでしょう」
ユージィンの言う事がわからない蘭は大きく首を傾げた。
「それって今までと一緒じゃないの?」
「俺にも違いはわからねぇな」
どうやらセルアも理解できないらしい。蘭がセルアへ視線を向けると、眉根を寄せてユージィンを見つめている。
こちらの様子を見たユージィンは小さく笑い、話し始めた。
「私が初めに目指したのはウィルナ王宮の掌握でした。王を床に伏してしまえばこの国は立ち行かなくなると本気で考えていたのですよ。それを期にユージィンとしてウィルナを手にしてしまえば良い。簡単な考えでしょう? その時の私はユージィンの振りをしているマティアスでした。
しかし、それはあくまでその時の考えであり、今は違います。私は姫と出会いその力を目の当たりにする事と共に、彼女自身にも惹かれユージィンでいる事を選びました。この時点で私はマティアスとして思い描いていた予定を失い、一人の従者になってしまったのです。
そしてそのまま姫に仕えて来た私は先視みの力も極力使わず、あの方がされる事に従っていた。姫はおそらくですが先視みの本質を見抜き何かを成そうとしていた。しかしそれはあくまで分かれている力の片割れ。同じように先視みを持つ私も何かを成さねばならぬと考えるべきでしょう。欠片を持っているであろうランが役目を負っているのなら、私も同じ事です。役目の為には迷いを捨てなくてはなりません」
蘭は内容を必死に理解しようと努めたが、どうやらユージィンの中で何かが大きく変わったらしいというぼんやりとした結果に辿り着く事しかできなかった。
「俺はウィルナに仕えているユージィンを信じて手伝っているんだが、そこはどう考えるべきだ?」
セルアは何かを理解したのだろうか。そう言ってユージィンをしっかりと見据える。
「信じていただいて構いませんよ。私はユージィンである事を捨てはしないのですから」
ユージィンが告げると、セルアは大きく髪をかき上げもう何度目にもなる溜息を吐く。
「ウィルナの為に働くユージィンだけではなく、シェラルドの事も思うマティアスもいるって事か」
「理解が早くて助かりますね。私はどちらか一方ではなく両国共、アンヘリカすらも変える結果を望んでいます」
ただ笑みを浮かべるだけではなく、今までになく強い意志を見せたユージィンの瞳はしっかりとこちらを見て訴える。それを受けたセルアは何故か口端を上げた。
「それはあいつだって同じ事だろう」
「ええ、姫も戦いをなくしたいと願っておられた。アンヘリカも戦いに巻き込まれる事を望んではいない。私も戦を疎んで止めた立場です。三者が揃わずとも、答えは出ているのですよ」
「だが、それを果たすのが難しいんだろうが」
「それでも成すしかないのでしょう。このまま話がまとまりアンヘリカにウィルナとシェラルドが揃うと仮定します。そうなれば確実に私がマティアスだと露呈されます」
「それでは困るんじゃないの?」
ユージィンはウィルナでの地位を失いたくはないと言っていた。それはマティアスである事が伏せられていなければ成立しない。
「ええ、困ると思っていました。しかし、今はもうこだわっている場合ではないのでしょう。私の正体は晒される。それを踏まえた上で先を見るべきなのです。
私の正体を隠し通すつもりなら最初から書状など送り付けては来ないはず……おそらくヘンリクは私を疑っています。シェラルドよりもウィルナを選んだと思っている可能性が高い。それは私が早期に結果を出さなかったというよりは、当初の目的から大きく逸れた行動を取り自身で招いた事です。その為にも私はユージィンとしてアンヘリカへ向かい、そこでマティアスとなりましょう」
つまりはユージィンの立場を捨てるというのだろうか。今までの話を聞く限りではそのような考えはないように思える。しかし、マティアスであると示してしまうのならば両立は不可能なはずなのだ。
「マティアスになる?」
疑問を口に出してしまった蘭を見つめるユージィンはそうですと頷く。するとセルアが声を荒げた。
「ユージィンはどうなる」
「捨てはしません、例え私がマティアスになったとしても、ユージィンであった過去が消えるわけではありませんからね。私達が考えている中ではおそらくですが姫は身篭っているでしょう? ならばそれはウィルナとシェラルドの子。無理やりにでも両国を繋ぐきっかけにすべきです」
「だが、今いるのはランだ。あいつじゃねぇ」
これには蘭も大きく頷いた。姫本人がいて子がいると証明できなければ成り立つはずがない。
「わかっています。姫が帰るのを待ち結果を得るべきだと思っていましたが、その時期もわかりません。しかし、動かぬわけにもいかないのです」
ユージィンも無理を言っている自覚はあるらしい。その上でどうまとめるつもりなのかが蘭には想像する事もできなかった。
「わたしが姫様を演じるにしても、さすがに子供だけはどうにもできないよ?」
「ええ、だからまず私と姫が婚約する形にでも話を持って行きましょう。手順としてはこちらが正しいのですからね」
戸惑いを感じる蘭へユージィンは事もなげに伝え、セルアは疑わしげに言う。
「持って行くってシェラルド相手にか?」
「私にとってはあちらも身内、上手く丸め込める可能性もなくはありません」
するとセルアは何も言わずにユージィンに視線を走らせた後、頭を抱える。
「あくまで賭けって事か?」
明らかに嫌そうな顔でいるセルアに対しユージィンは頷き、こちらを見ているようでいてどこか異質さを感じさせる瞳を向けてきた。
「そう、賭けですね。私は先視みが嫌いです。それでも今はこれを信じるほかはない。こうして私と共に行動しているランやセルアを見ても未来は決して陰ってはいません。美しい未来があり、私を魅了する。悪い道を辿ってはいないと思えます」
真偽を知る事は二人にはできない。
ユージィンは見ているものがそうさせるのか、とても嬉しそうな表情のまま言葉を続ける。
「今、私がこうも無謀な話をしていても未来は欠片も変わらない。この力は悪い方向へ向かっているのならば、すぐに姿を変えて見せるのです。やはり、道はこれで正しいのでしょう」
蘭が脳裏に浮かぶ文字を読める事を考えると、確かにユージィンは何かを見ているのだろうとは思えた。しかし、この意見を本当に信じるべきなのかと迷いも生まれる。
「俺は見えねぇものを信じたくはないが……頼るしかないのか」
セルアも肯定はできないらしい。自身に問いかけるように呟いた。
「困った末、結局は力に頼るという事態は正直好ましくはありません。それでも、いなくなったあの方が私に残した方法なのです。姫は私などよりずっと力も強く使い方を知っておられた。その全てが今を導いたと信じ動くしかないのでしょう」
もうユージィンはユージィンだけではいられないと考えているらしい。しかし、完全にマティアスになる事も望んではいない。ウィルナでのユージィンも自分であり、シェラルドのマティアスも自分である。そのどちらをも合わせて行動する事が、未来に繋がると考えているらしかった。
それは同じ者であって違う者、違う者であって同じ者。不思議な存在に思える。蘭自身もウィルナの姫ではないが、姫として今ここにいるのだ。
(本当に何かの意味があるの?)
誰も答える事のできない疑問を抱きつつも蘭はセルアの手から逃れふと立ち上がり、眼下に広がる町を眺めた。様々な色彩を配置した町並みは美しく、魔力に守られ一切の姿を変える事もない。
縦横に走る道はやはり、蘭の脳裏に魂、欠片、失うと文字を浮かび上がらせ何かを訴えかけて来る。
(でも、事実はある)
蘭は振り返り、二人を見た。
「こうして王族のみが読める文字がわかるんだから、わたしが姫様になる権利も本当に少しあるのかもしれないよね」
するとセルアが驚いた表情を浮かべた後に呟いた。
「もう……腹は括ったって事か」
そして、その後にユージィンが頷く。
「確かにそうかもしれませんね。私と姫は全てを読む事ができ、ランは一部を読む事ができる。それはきっと意味のある事でしょう」
決して強くなる事のない風は柔らかいまま、心地良く蘭の体を撫で通り抜けていく。
先視みの力を信じた結果がどうなるのかはわからないが、蘭は姫としてアンヘリカへ向かいヘンリクに会う必要がある。その為にはまだ、ユージィン、セルアと共にするべき事があった。




