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三章.止められた孤に灯る想い【二】(二)

「ラン、よく来てくれたね!」

 アンヘリカへ着いた蘭は、歓迎するマルタに抱き締められていた。相当喜ばれている事はわかるのだが、少々苦しい程だ。

 この様子はクロードやハンナにもよく似ており、どうやら親しい間柄では当たり前の行動なのだろうと改めて認識する。

(難しいなあ)

 しかしクロードには止めさせろとセルアは言っており、正解は見えない。

「う……ん、お久し、ぶり」

 何とか声を出しつつも、熱烈な歓迎に困っている蘭の姿を見かねてセルアが止めに入る。

「おい、こいつが苦しがってる。そろそろ離せ」

 マルタはアンヘリカの代表であり、ウィルナとの関係には欠かせない存在である。真っ先に足を向けるべきだと宿を目指し、扉を開けるとすぐに出会う事ができた。

「悪かったよ、また来てくれたのが嬉しくてね」

 マルタは申しわけないと言いつつ蘭を解放し、すぐに隣へ視線を移す。

「今日はこの間の二人じゃないんだね」

 蘭の側に立つセルアは背の高い大人の姿だ。どう考えても前回来た人物に見えるはずがない。

 乗り合いの中でセルアは自身の見た目が変わると知られる事を、あまり良いとは言っていなかった。この場合はどうするのかと思えば、セルアがマルタと蘭だけに聞こえるように小声で告げた。

「この姿では初めてだが前回も来たセルアだ。金色と言えば、わかるだろう?」

 金色という単語にマルタがはっと息を飲み、鋭い目付きでセルアを見上げる。

「……あんたが?」

 驚いているらしいマルタに対し、セルアは表情を一切変えずに続けた。

「こいつの同行者として来ているだけだ。今夜はここへ宿泊させてもらいたい」

 一日だけの滞在にはなるが、今回もマルタやクロード達のいる宿に泊めて貰おうと予定はしていた。他にも宿はあるらしいが、何かと都合が良いとユージィンに念を押されたのだ。

 蘭としてはそれで構わなかったのだが、セルアはクロードがいる為か不服そうに反論をしていた。しかし、ユージィンは全く受け入れる姿勢を見せなかった。

 現在も泊まりたいと口にはしているがあまり乗り気に見えないセルアへ、マルタの視線は突き刺さるように向けられている。

(どうしたんだろ?)

 金色の意味は蘭には全くわからず、何故こうした反応をマルタが見せたのかもわかりはしない。

 だが、それもわずかな時間であり表情はすぐに笑みへと戻った。 

「まあ構わないさ、こうしてランを連れて来てくれた。それだけでもあたしはあんたを歓迎するよ。もちろん、町の誰もが同じ事を言うはずだ」

 そしてそのままランとセルアを二階へ来るよう促した。二人は素直に従い二階の一室に入る。

「今日はこの部屋と、隣を使っとくれ」

「ありがとうございます」

「何かあるんだろ?」

 室内へ入った蘭は開けた扉の側に立つマルタへ礼を述べたのだが、セルアの発言は違ったものだ。どうしたのかと思うと、マルタが一歩室内へ入り扉を閉め三人が立ったまま向かい合う形になった。

「わかってたかい? どうやらうちのクロードが何か迷惑をかけたみたいだったから、一言謝りたくてね」

 クロードが屋敷に入ろうとした事を言ったのかと、蘭は訝しがる。マルタはウィルナへ呼ばれはしているが、詳しい事情を説明されてはいないはずだった。

「どういう事だ?」

 セルアも同じだったらしく不思議そうに告げると、マルタは首を大きく横へ振り否定する。

「あの子が何かを言ったわけではないよ。ただ、あんたらと一緒にウィルナに行って帰って来ると様子が変わってたからね。何かあったんだろうと思っただけだよ。それと共に城へも呼ばれた、おかしな事態に感じたのさ」

 あくまでマルタの推測らしいと思いながらも、セルアはどう答えるのかと蘭は目を向ける。 

「確かにあったが、詳しく言うつもりはない」

「あたしもそれで構わないよ、おそらく聞かない方が身の為だろうしね。ユージィンが含みのある口ぶりだったし、恐ろしくて仕方がない」

「わかってるならいい、こっちとしてはユージィンが聞いていたおかげで助かった部分もあった」

「それはこっちが助かったって事だろうね。ランがこうして来てくれたんだから」

 マルタに笑みを向けられるが、話の掴めない蘭は二人を交互に見比べるばかりだ。何やらユージィンが聞いていた事があったようなのだが、何を示しているものなのか見当もつかない。

「あの子が変わるきっかけを与えてくれたのなら、感謝しなければならないよ。ありがとう」

 笑みを潜めたマルタは、真剣な顔でそう言うと部屋から出て行った。

「どういう事?」

 今までの会話の疑問を聞かぬわけにもいかないと蘭は見上げる。

 するとセルアは少し困惑した表情を見せたが、髪に片手を突っ込みながら仕方なさそうに話す。

「クロードがお前のところに来るかもしれねぇってのは、マルタに言われてたらしい」

「そうなの?」

 ならば教えてくれても良かったのではないだろうか。来る事も屋敷へ入れない事も知っていたならば、ああした事態にはならずに済んだのだ。

「確実ではないが可能性はあるって言われたみてぇだな。直接聞いたのはユージィンだから俺も詳しくは知らねぇよ。んで、なんでマルタが感謝してんのかもわかんねぇな」

「そっか」

 アンヘリカにいる間、ユージィンは蘭をクロードと二人きりにする事を相当嫌がっている様子だった。もしかすると、マルタの言葉があったからかもしれない。

 気を使い言わないでいてくれたのだろうかと思っていると、わずかばかりだが持ち込んだ荷物を部屋の隅に置いたセルアが告げる。

「その事はもう気にすんな。でも、あいつには気を抜くなよ」

「わかりやすい忠告だね」

 笑った蘭へ、セルアは声を荒げた。

「俺はまだあいつを信用してねぇんだ、お前だって気をつけとけ」 

「もう、大丈夫だと思うよ?」

「だといいんだがな」

 溜息をつくセルアは蘭の側へ戻ると、強引に手首を掴み室外を目指し歩き始める。



 二人が一階へ降りると、マルタは客の相手をしたりと忙しそうだった。それでも蘭とセルアの姿を見れば、夕食時にはたっぷりもてなすからねと声をかけてくれる。

 二人はそれに応えると外へ出た。ウィルナとは違いアンヘリカは直接日差しが当たる為、慣れていない蘭は肌に痛みを覚える。先程まではコートを羽織っていた為に気にならなかったのかと、改めて魔力に守られないという意味を感じた。

「ああ、ここは焼けんだったな」

 一歩前を行くセルアは眩しそうに空を見上げると振り返る。向かい合わせになり手をかざし、蘭が手のひらを見上げる格好になった。

「何?」

「ちょっと待ってろ、さすがに焼けた肌で代理はさせらんねぇ」

 セルアは特に何を言うわけでもなく、手をかざしているだけだ。

 それなのに何故か今まで受けていた日差しの感覚が薄くなる。ウィルナにいる時に近い体感になった事に蘭は驚く。

「これも術?」

 そうなのだろうと思いながら聞いてみれば、セルアは手を下ろすと蘭の手首を掴み歩き出す。

「ああ、これなら焼けねぇ。さて、行くか」

「どこに?」

 突然の動きに戸惑いながらも、蘭は追いかけるように足を進める。この姿のセルアの歩みは早く、こちらが少し早足にならなければ付いてはいけない。

「適当に決まってんだろ」

「適当?」

「アンヘリカがどんなもんか見て歩きゃいいだろう」

 ぐいぐいと腕を引くセルアに、さすがに無理だと声を荒げた。

「ねえ! もう少しゆっくりは無理なの?」

 するとセルアが突然立ち止まり、今度はぶつかりそうになった蘭が慌てて歩みを止める。

「悪い、こっちで歩くのは慣れてねぇんだ。普通のつもりだったんだがな」

 振り返った表情を見るに随分申しわけないと感じているようにも思え驚けば、セルアの体は蘭の隣に並ぶ。そしてこちらをしばらく眺めると、急ぐ必要のない速さで歩き始めた。

「セルア、術ってどうやって使ってるの?」

 引かれずに動けるようになった蘭は、ようやく話す余裕もできたとセルアに聞く。

 以前から術を使う際に何かをしているような素振りはあるのだが、特に言葉を発するわけでもなく目に見えるものもない。ただただ不思議な現象と感じるばかりであり、たった今体感したからこそ疑問をぶつけた。

 セルアは本当にアンヘリカを眺める事を目的としていたらしく、様々な方向へ目を向けながらも返事だけは寄こす。

「意思の力ってとこか。別にはっきりとした使い方があるってわけでもねぇな」

 すると今度は空いた片手をひらひらと見せながらこちらを向いた。

「まあ、大概の奴は手から力を出す事を考えながら使ってるはずだ。したい事を思い浮かべながら集中すればいい。後は慣れだ慣れ」

「何か言ったりとかはしないの?」

「ああ? 使い始めの頃は、動け、光れと、したい事を言ったりもするが、そこを過ぎれば必要ない。お前だって何かをする時にわざわざ言ったりしないだろう?」

 確かに自分が行動する内容を口にする事など滅多にない。例外は説明をする相手がいる時ぐらいだろうかと頭を悩ませながらも、使える者にとっては当たり前の行為なのだから術も同じかと納得する事に決める。

「そっか。わたしには見えないし不思議なんだよね」

「俺達は生まれた時から接して気になんねぇのかもな。術なしの生活なんて知らねぇし」

 魔法のようなものが当たり前だという感覚は、蘭には不思議だった。だが、術がなければ生活できない土地だというのだから仕方がない。

(必要だから存在しているのかしら?)

 蘭はそう考えながらもセルアと共に町の中を歩く。 

 アンヘリカの中で蘭の顔は知られたもので、歩いていると度々声をかけられた。その中には前回宿で見た人もいれば、見知らぬ顔もある。アンヘリカの意志が読める人物として町中の人が集まっていたはずなのだが、あまりにも数が多かった為に覚え切れなかった部分があるのかもしれない。

 ほとんどが歓迎とクロードが喜ぶという話であり、蘭は適当に返事をしつつ町中を周っていく。

 ウィルナ側とシェラルド側の二箇所に入り口を持つここは、中央付近が大きな広場となっており、更に奥まった木々の中にたくさんの墓石がある。前回もそこに目を引かれたが、さすがにクロードへ聞く事はできなかった。

「気になんのか?」

 目を向けていた事に気付いたセルアが静かに声をかけて来る。アンヘリカの人々がいる中、そう大声で話せる内容でもない。蘭も同じようにして答える。

「うん、なんていうかアンヘリカの人口に対して多過ぎるっていうか」

「そりゃそうだろう、ここはウィルナとシェラルドに挟まれて散々荒らされて来たんだ。増えては減りの繰り返しの結果があれだ」

 耳にしただけで実際の状況はわからないが、ここが二国の戦いにさらされたという事はわかっている。しかし、実感が湧くまでには至らない。

 そういう事があったらしい、という知識のみだった。

「……そうだよね」

 おそらくウィルナにも墓地は存在しているのだろうが、蘭は全ての場所を巡っていない。開かれている街や乗り合い場へ向かう道を知っているだけであり、これ以上のものが向こうにはあるのかもしれなかった。

「俺だってあれに関わってる一人だ、好きでじゃねぇがな」

 ふと零されたセルアの呟きに蘭が見上げると、暗く自嘲するような笑みが浮かんだ。

「この前ユージィンが俺達は戦いを知らないと言ったが、本当の俺は戦いを知っている、が正解だ」

 前回アンヘリカへ来た時のセルアは十二歳だった。蘭はそれが真実だと思っていたのだから、ユージィンは嘘を付いたのだろう。何も知らない状態で事実を告げられても信じる事はできなかったはずだ。

「ここの奴らはほとんどが被害者だ。思い出させるような事を言う必要もねぇ。お前も気にせずにいた方がいい」

 迂闊な事を聞いてセルアにも嫌な思いをさせてしまったのだろうかと思っていると、強く腕を引っ張られた。

「気にするなって言っただろうが。今の事じゃねぇ、知らない過去にお前が捕われる必要はない」

「う……ん」

「辛気臭い場所にいるのが悪りぃのかもな、行くぞ」

 腕を引かれ前回はたどり着く事の叶わなかったシェラルド側の入り口へ足を向けようとすれば、今まで見ていた墓地の奥から見知った顔が現れる。

 おそらく乗り合いから降り、そのまま向かったのであろう。厚いコートを羽織り手荷物を持ったままでクロードが歩いて来たのだ。蘭とセルアが出発する前日に発ったのだから、同じく今日到着しているはずだった。

 向こうもこちらに気付いたらしい、一瞬動きが止まったがすぐに駆け出して来る。

「ラン!」

 満面の笑みで近づいて来ると荷物を地面へ放り投げ、いつも通りに両腕を開く動作が見えた。しかしそれは、蘭の隣に立つセルアが腕を引き位置をずらしたせいで未遂に終わる。

 準備していた腕を持て余す事となったクロードは、蘭の隣に立つセルアを見て訝しげな表情を浮かべた。

「なんで邪魔するんだよ! というか、誰?」

 前半はセルアを、後半は蘭を見ての言葉だ。

 蘭は腕を引かれると同時に腰に手を回され、セルアに抱き寄せられる格好になっていた。クロードの熱烈な抱擁にも困った事だろうが、今の状況にも少々戸惑う。

 まるで俺のものだとでも言いそうな現状からどうにか抜け出ようともがいてはみたが、セルアの腕が弱まる気配はない。一昨昨日の口ぶりを思い返せば、クロードが抱きつこうとしたのが面白くなかったのだろうとは理解できた。 

「えっと、ね」

 どう説明したものかと助けを求めるようにセルアを見上げると、どうやら汲み取ってくれたらしく頷きを返される。任せて構わないのだと蘭は安堵したのだが、セルアは自信たっぷりの笑みと共にクロードを見つめるとあまりにも説明不足な言葉を投げつけた。

「セルアだ」

 名を告げるだけですぐに真実へたどり着けるとは思えない。クロードが何とも表現しがたい複雑な表情でセルアを眺め続けるのは当然だろう。

 丁度背丈が同じくらいの二人が向かい合うが、じっとセルアの顔を見つめるクロードはそうだとも違うとも言えずにいるようだった。年齢は違っているが、よく見るとそこかしこに見知った面影を感じられるはずなのだ。

「この姿では初めまして、だな」

 どこか楽しそうな声のセルアは、蘭の頭に自分の顎を乗せてくる。それを見たクロードは顔をしかめ睨み付けた。

「ランを離せよ」

「やなこった」

 くつくつと笑う声がセルアの顎から蘭の頭へ直接響いて来る。その振動がどうにもむず痒く頭を動かそうとしていると、クロードがセルアの腕を掴み引っ張る。

「離せ!」

「離すかよ」

 公衆の面前で何故か一人に抱き寄せられ、もう一方がその男を引き剥がそうとしている図はどうなのだろうか。遠目からこちらを眺めている人々の興味深そうな姿を認めた蘭は、このままでは延々と続きそうだと声を上げる。

「セルア、離して」

「なんでだよ」

 心底不服そうな声が聞こえてくるが、ただクロードと遭遇しただけではないかと蘭は再度告げる。

「いいから、離して。普通にしてればいいでしょ?」

 すると蘭の体は自由を許されるが、右腕だけはセルアに掴まれたままだった。これはウィルナの街へ出る際と変わらぬものであり気には止めない。

 このやり取りから得るものがあったのか、クロードがセルアではなく蘭に視線を向ける。

「本当にセルアって事?」

 目を丸くしている姿から、やはり簡単に真実とは捉えられないかと思いつつ蘭は肯定した。 

「そうだよ」

 どう説明すべきかが難しい為に簡潔に答えれば、クロードは再びセルアをじっくり眺め始める。そして全身を見つめていた瞳は何故か、急に髪で止まってしまったのだ。

「金……色?」

 先程セルアがマルタへ言ったのと同じ金色という言葉を発したクロードは、目を見開き食い入るように見つめ続ける。

 するとセルアは口端を上げ、目を細めた。

「察しがいいじゃねぇか」

「それしか……思いつかない」

 どこか放心したようなクロードにセルアは続ける。

「まあ、そうだろうな。今日はこいつを連れて来ただけだ、驚くより感謝しやがれ。俺達は町を周る、お前んとこに泊まる事になってるからな」

 偉そうに告げるとセルアは腕を引いて歩き出し、蘭は足を進めながらもクロードを振り返る。

 何を考えているのかぼんやりとセルアを追っていた瞳が蘭に戻ると、クロードは荷物を拾い上げ慌てて走り出した。

「オレも一緒に行く!」



 蘭は金色が何の意味を持っているのか不思議だった。確かにセルアの髪は金色であるが、特に珍しいものでもないはずなのだ。ウィルナにもアンヘリカにも金髪の者はおり、セルアと同じように浅黒い肌という組み合わせもよく見かけている。

 しかしマルタもクロードも金色と聞くと驚き、食い入るようにセルアを見つめていた。セルアの姿が大きくなった事と金色に繋がりがあるようにも思え、それを聞きたいのだがどうにも今は無理らしい。

 蘭は右腕をセルアに掴まれ、左手はクロードが繋いでいる。二人に挟まれつつ歩くという妙な状態な上、不毛な会話が繰り返されていた。

「セルアが離せばいいんだよ!」

「なんでだ、俺はこいつをここへ連れて来て確実に連れ帰る義務がある。理由があるだろうが」

 どちらか一方がいれば良いとお互いに主張しており、一向に答えの出る気配はない。

 蘭は何度もお願いだから離して欲しいと訴え、三人一緒でも構わないだろうと意見している。しかしその時ばかりは二人は見事に同調してしまうのだ。

「絶対に嫌だ!」

「俺だけでじゅうぶんだろう?」

 溜息ばかりがこぼれる蘭は、ひたすらに疲ればかりを感じ続けている。 

「ウィルナにいれば一緒にいれるんだから、アンヘリカにいる時くらい離せ」

 クロードが蘭の手を引けば、今度はセルアが逆に引く。

「お前はウィルナにいる時にもべたべたしてんじゃねぇか」

「それはそれ!」

 どちらも譲らずにこの調子で話が続いているのだ。前に進む速度も遅く痛い程ではないが左右へ何度も体を揺らされ続けている蘭は、ただただ本音を漏らす。

「疲れる……」

 そうすると二人は過敏に反応する。

「どっちが?」

「どっちだ?」

 それすらでも優越を付けたいのだろうかと、蘭は両手が使えない状態ながらも頭を抱えたくなった。

「どっちもだよ」

 すると再び言い合いが始まるのであり、蘭は二人に捕らわれたままの移動を強要される事になる。


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