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69話 閃光手りゅう弾

「その調子で全部頼む」

「それはいいけど……どうしたの?そんな顔して?そんなに固くないよ」

「いや……何でもない」


 高田さんが何か言おうとしたがそのまま黙ってイザベラがボルトを緩めていく姿を眺めている。多分思っていることは俺と一緒だと思う。そんな感じで眺めていると、すべてのボルトが緩んだ。……これって俺いる?


「イザベラさんには悪いが、俺と二人でやるよ。だから、周囲の警戒を頼んだ。これ貸すから」


 高田さんから背中に背負っている散弾銃を渡された。はい。タイヤ交換はクビってことですね。

 散弾銃を持って駐車場出入口周辺にいる中村のところへ行った。


「あれ?タイヤ交換してたんじゃないの?」

「イザベラにすべての仕事を奪われました」

「こっちもそんなにやることないよ。見ればわかると思うけど、きれいな建物多いし、事故車両も少ない。多分かなりの人が逃げて無人状態になったんだと思うよ」

「そうなのか?説明されてもピンとこないな」

「私の町も、人口は多かったけど、すぐにみんな逃げだして同じ状態になってたから」


 周りを見ていると、確かに事故車両が見当たらないし、燃えた家とかもない。ゾンビはかなり遠くに民家の軒先でたたずんでいるゾンビだけだ。

 タイヤ交換の方は、タイヤを外して新しいタイヤ……いや、中古タイヤをつけている最中だ。30分もあれば終わるだろ。


「大阪かぁ。お好み焼きたべたいな」

「お好み焼きか……しばらく食べてないな。ってか、こんな時に食えるのか?」

「しらない。でも材料はいくらでもあるでしょ。ほかにも串カツとか……ん?何か聞こえない?」

「……エンジン音?こっちに近づいてきている」


 前の道路に出て音のする方を見ると、1台の大型バスがこっちに向かって交差点を曲がってきた。尋常じゃないスピードだ。交差点を曲がり切れずに交差点わきの道路標識をなぎ倒して曲がった。バスの車内では何回か閃光が見える。この感じを前も見た。あれはショッピングセンターの屋上から見た光景だ。


「中村!お前はタイヤ交換を急ぐように伝えてこい!」

「わ、わかった!」


 中村がタイヤ交換をしているトレーラーヘッドに向かって走っていった。

 バスはフラフラしながらも、こっちに向かってきている。できればそのまま通り過ぎてくれ。そう願っていると、バスがフラフラした時に、縁石に当たり、それと同時に大きな破裂音がした。タイヤがバーストした時の音だ。バスはコントロールを失って運送会社の向かい側にある民家にバスが頭から突っ込んだ。あぁ、このパターン前にもあったぞ。確かスーパーマーマーケットの屋上だ。あの時はすぐに逃げたけど、今回はそういうわけにはいかない。……いや、バスからゾンビが出てこない。これはラッキーだ。さっさと、タイヤ交換して逃げよう。


「私が見張っておくからタイヤ交換手伝ってきて」

「無理するなよ」

「大丈夫!」


 タイヤ交換している2人のところに行くと、交換がもうすぐ終わる感じだった。


「あのバス何!?」

「説明してる暇は無い!タイヤ交換は!?」

「あとはナットを締め付けるだけ」


 パァン


 銃声が聞こえた。中村の方を見ると、バスの中からゾンビが出てきている。しかも、あの大型バスにどんだけ乗ってるんだよって多さだ。中村が必死に応戦しているが、数が減らない。俺も、散弾銃を構えて撃つと、目の前のゾンビが……倒れない。あ、もしかしてスラッグ弾が入ったままなのか。今度はしっかりと、頭を狙って……。


「少し下を狙ってみて」


 中村の助言のとうりに胸辺りを狙って撃ってみると、目の前のゾンビがその場に力無く倒れた。なるほど、撃った時の反動で銃口が跳ね上がって少し上に撃ってるんだ。もしかしたら拳銃を扱えないのもそれは原因かも。……ただ、数が多い。マジで。後ろを見ると、トレーラーを連結している。もう少し時間を稼がないと。次の弾を撃つためにコッキングするが、感触が軽い。弾切れか!?


「もうそろそろ限界!何か考えて!」

「二人とも!目をつぶって耳を塞いで!」


 後ろからイザベラの声が聞こえた。いう通りに目を固くつぶって耳をふさいだ。そのあとで後ろから肩を叩かれた。目を開けて後ろを見ると、イザベラが立っていた。


「フラッシュバンを使ったの。しばらくゾンビたとは動けないだろうから今のうちに行くよ」


 ゾンビの集団の方を見ると、孫美がその場で止まって動かない。集団の前には小さい筒状の物から煙が出ている。これが閃光手りゅう弾か。横を見ると、中村がもがき苦しんでいる。イザベラの忠告を無視したな。


「目がっ!」


 中村の手を引っ張ってトレーラーまで走る。トレーラーにたどり着くと、高田さんが待ってくれていた。


「エンジンはかかってる。早く乗り込んで出発しろ。……あれ?中村さんどうした?」

「閃光手りゅう弾を食らったみたいで助手席に乗れるかどうか……」

「大隅!中村を持ち上げろ!」

「は?」


 二人で胴上げみたいな感じでトレーラーの助手席に中村を投げ込んだ。


「いった!何!?何が起きているの!?」

「大人しくしとけ!」


 助手席のドアを閉めると、運転席に乗り込む。エンジンはすでにかけてある。タンクローリーの方を見ると、イザベラと、高田さんが急いで乗り込んでいる。そのあとすぐに無線から声が聞こえてきた。


『俺が先導してゾンビを蹴散らすからちゃんとついて来いよ』

「わかりました」


 高田さんが運転するトレーラーがゆっくりと発進した。敷地内を大きくUターンすると、ゾンビの集団にむけて 加速し始めた。それに続くように一緒に加速する。高田さんが運転するトレーラーが先ほどまで相手にしていたゾンビ達の群れに突っ込んだ。ゾンビが横に弾き飛ばされたり、トレーラーに踏みつぶされたりしている。そのあとに続くようにして運送会社の敷地を出た。

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