250.第一回Etranger大会-7-
「私のターン、ドロー。リカバリーステップ、メインステップ。カードをマナゾーンにセット、疲弊させ青マナ10を得ます」
サンドラのターン。
何もしなければ、次のターン敗北するのはほぼ確定。
「これだけ引いたんだから、当然想定してるよね?」
手札から1枚のカードを引き抜きながら、ヘンリエッタに向けてそう言い放つサンドラ。
その1枚は、この戦況を一撃で引っ繰り返す、サンドラの切り札。
「青マナ6を支払い、手札からハリケーンドラゴンを召喚!」
名称:ハリケーンドラゴン
分類:ユニット
プレイコスト:青青青青◯◯
文明:青
性別:不明
種族:ドラゴン/水棲
カテゴリ:
マナシンボル:青
パワー:0
1:【強制】【条件】このユニットの召喚成功時
【効果】このカード以外のフィールドに存在するカードを全て手札に戻す。このユニットのパワーはこの効果で手札に戻ったカードの数×3000アップし、手札に戻ったカードの数まで攻撃出来る
2:【永続】相手はこのユニットを攻撃可能な時、必ず攻撃しなければならない
3:【強制】【条件】このユニットが破壊された時
【効果】フィールドに存在するユニットを全て疲弊状態にする
「このカード以外のフィールドに存在するカードを全て手札に戻す。このユニットのパワーはこの効果で手札に戻ったカードの数×3000アップし、手札に戻ったカードの数まで攻撃出来る!」
――今、サンドラの場にはハリケーンドラゴンしか存在しない。
対し、ヘンリエッタの場には聖域の霊鳥と聖域の守護兵がそれぞれ2体ずつ。
そして祈りの巫女と極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンの合計、6枚のカードが存在している。
その全てが、召喚時の強制効果によって引き起こされた暴風により、遥か遠方である手札へと吹き飛ばされて行く!
ハリケーンドラゴン パワー:0→18000
つまり、パワー18000の6連続攻撃!
この1枚だけでゲームエンドまで持って行く、必殺のカード!
ここまでハリケーンドラゴンの打点が上昇しては、一度たりともライフでは受けられない!
必然、ヘンリエッタは全部の攻撃を盾で受けるしかない!
だが、盾は5枚しかない以上、6回目の攻撃が直撃するのは避けられない。
解答となるカウンター呪文が盾の中に無ければ、ここで全てが終わる。
「バトル! ハリケーンドラゴンで連続攻撃!」
「盾で受けます!」
ライフを摘み取る、暴風竜の連撃。
先程サンドラがそうしたように、ヘンリエッタも盾でその攻撃を受け止める!
だが、両者には明確な差が存在している。
先程のサンドラは涼しい表情でその攻撃を受けたが、今のヘンリエッタは……祈るように、盾をめくっている。
今まで二人がしていた行動に、その理由が存在している。
ヘンリエッタはサンドラと同じように、デッキを掘り進め、この状態まで辿り着いた――訳では無いのだ。
何故ならサンドラは、呪文カードの製氷によって、雨ざらしアザラシをデッキからサーチする際、デッキ内を確認しているからだ。
つまり、サンドラは自分の盾の内容という情報アドバンテージをこの時に得ているのだ。
対しヘンリエッタは、ドローだけでデッキを掘り進めており、一度たりともサーチをしていない。
ヘンリエッタには、今の自分の盾に何のカードが埋まっているのか、それを知る機会が無かったのだ。
ヘンリエッタは自らの盾に手を添え――
1枚目。
発動せず、手中に収める。
――2枚目。
これも、そのまま手札へ。
三度目の攻撃。
「カウンター呪文! 絶対守護障壁を発動!」
ヘンリエッタの祈りが届き、カウンター呪文を引き当てる!
全ての攻撃をシャットアウトする、最強の防御呪文!
「さっきの再現で悪いね」
それを見たサンドラが、手札から呪文カードを発動する。
「手札から青マナ2を支払い、妨害呪文を発動するよ。絶対守護障壁を無効にし、破壊!」
縋り、引き当てたカウンター呪文は、無惨に霧散した。
これでは、足りない。
ハリケーンドラゴン、四度目の攻撃がヘンリエッタの盾を粉砕する!
「カウンター呪文、裁きの閃光を発動! 前衛ユニットを全て破壊します!」
名称:裁きの閃光
分類:カウンター呪文
プレイコスト:白白白白○○○
文明:白
カテゴリ:
マナシンボル:虹
1:【強制】【効果】相手フィールドの前衛ユニット全てを破壊する
前衛ユニット全てを破壊する、天罰の火と同系列の呪文。
暴風竜を焼き払うべく、その白き光が強く輝きを放つ!
「青マナ2を支払い、妨害呪文発動! それも無効よ!」
再び灯った希望の光が、妨害呪文に吹き消される。
盾からカウンター呪文を2枚引き当てたにも関わらず、止まらない、止められない。
五回目の攻撃。
唯一残った、ヘンリエッタの盾に亀裂が走り――砕け散った。
「…………」
確認したカードを、ヘンリエッタは無言で手中に収める。
三度目のカウンター呪文という希望は、ここで潰えた。
「これで盾は全て一掃完了! ハリケーンドラゴンで直接攻撃!」
暴風竜、最後の攻撃。
ただの空気が物理的衝撃を伴う程に圧縮されたその腕が、ヘンリエッタ目掛け振り下ろされた!
「――これ自体はカウンター呪文ではありません、だけど!」
手中に収めたが、手放さなかったその1枚。
最後に散った盾から引き込んだ、その1枚。
「自分のライフ以上のダメージを受ける時、プレイコストを0にしてリバースペインを発動!」
名称:リバースペイン
分類:呪文
プレイコスト:白白○
文明:白
マナシンボル:白
カテゴリ:
自分のライフ以上のダメージを受ける時、このカードのプレイコストを0に出来る
1:【速攻】【条件】自分がダメージを受ける時
【効果】そのダメージは回復になる
ここで引くか! それを!
「ハリケーンドラゴンから受けるダメージ分、18000のライフを回復します!」
ヘンリエッタ LP:4000→22000
「ふー、ならターンエンドね」
してやられた。
それは確かなのだろう、サンドラは小さく溜め息を吐いた。
必殺の一撃は防壁を全て打ち破り、ヘンリエッタの喉元まで迫ったが、その刃は首の皮1枚掠めて終わった。
だがそれでも、サンドラはまだ負けていない。
先程の攻撃により、ヘンリエッタは全ての盾を喪失した。
もう次の攻撃は、盾に縋れない。
「私のターン、ドロー。リカバリーステップ、メインステップ。カードをマナゾーンにセット、疲弊させ白マナ13を得ます」
合計、白マナ20。
マナ数に不安は無いが、問題はヘンリエッタに回答があるかどうかだ。
サンドラの手札は9枚、そして次のドローも考えれば10枚。
どう考えても――2枚目のハリケーンドラゴンがある。
1枚入っているのを見せたのだ、2枚目も当然あるだろう。
ハリケーンドラゴンは戻した枚数によって打点と攻撃回数が決定するので、今フィールドに居るハリケーンドラゴンを破壊し、一切何も出さずにターンエンドすれば、耐えられそうではある。
だがそうした場合、サンドラは適当な、それこそ雨ざらしアザラシやコストの軽い永続呪文を自分で並べれば良い。
戻した枚数は自分のカードもカウントするので、それで打点と攻撃回数を水増しして殴れば良いだけだ。
盾を全損した以上、サンドラにとって盾を割るというリスクと不確定要素は既に排除されている。
本当に後一撃入れれば終わるのだ。
何も無ければ連撃を受けて終わり。
展開して攻勢に出ても返しのターン、ハリケーンドラゴンで先程の再現をされて終わり。
「白マナ4を支払い、祈りの巫女を召喚します」
ヘンリエッタのターン。
そしてこれが、ヘンリエッタの最終ターン。
どう考えても次のターンは無い、このターンで決め切れなければ、ここでゲームセットだ。
「祈りの巫女の効果発動、デッキの上から3枚を確認し、1枚を手札に加え、1枚をマナゾーンへ、残りの1枚を墓地へ送ります」
マナゾーンを伸ばすが、もうこれ自体には意味は無いだろう。
この疲弊状態で置かれたマナが、もう起きる事は無い。
次のターンなど無いからだ。
「白文明のカードが墓地へ送られたので、手札から聖域の守護兵2体をプレイコストを0にして召喚します」
祈りの巫女の効果により、聖域の守護兵のコスト軽減効果を発動させ、再び場に展開していく。
「白マナ1を支払い、聖域の霊鳥を召喚、更に白マナ1を払いもう1体を召喚」
ハリケーンドラゴンは破壊ではなく、手札に戻すだけなので、ターンが戻ればこうして再展開する事が出来る。
マナも既に豊富なので、再展開は苦も無く行える。
「祈りの巫女が存在する事で、極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンは、6マナで召喚する事が出来ます」
だから、これで先程の盤面の再現完了。
だが――
2:【永続】相手はこのユニットを攻撃可能な時、必ず攻撃しなければならない
ハリケーンドラゴンは、連続攻撃を終えて疲弊状態になっている。
本来なら無視してサンドラに攻撃を加える事が出来るのだが、2の効果によってヘンリエッタのユニットはサンドラではなく、ハリケーンドラゴンを攻撃しなければならない。
パワー18000という、デカブツをだ。
ヘンリエッタの場に居るユニットでは、誰も勝てない。
オーロラキャストドラゴンですらパワー7000しか無いのだ、そもそもバトルで突破が出来ない。
ならば効果で破壊するか、と考えるが。
3:【強制】【条件】このユニットが破壊された時
【効果】フィールドに存在するユニットを全て疲弊状態にする
ハリケーンドラゴンを破壊すると、場に居るユニット全てが疲弊状態になってしまう。
疲弊状態では、攻撃に参加出来ない。
これを受ければ、事実上ターンスキップされるようなものである。
場にユニットを並べる前に、手札から除去呪文を飛ばす事でこの効果を空振りにする事は出来る。
出来るが、そんな事はヘンリエッタも分かってる筈だ。
それをしなかった以上、ヘンリエッタの手札には除去呪文が無いのだろう。
極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンの効果で除去を狙いたいが……極光魔術龍の呪文踏み倒し効果は、1度しか使えない。
除去を飛ばせば、疲弊効果が直撃する。
というより、そもそも絶対守護障壁を埋め込まないと、攻撃回数が足りない。
極光魔術龍 オーロラキャストドラゴン以外は、デメリット効果で攻撃に参加出来ないのだ。
このままでは手数が足りない。
「極光魔術龍 オーロラキャストドラゴン――2体同時召喚!!」
――引き込んでたか!! 2枚目のオーロラキャストドラゴン!
「極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンの効果をそれぞれ発動! 私の墓地の呪文カードをこのカードの下に重ねます!」
手数が足りないなら、増やせば良い!
実に単純な話だ!
「極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンの効果発動! 裁きの閃光を手札に加え、墓地へ送りその効果を発動! 相手の前衛ユニットを全て破壊します!」
極光 魔術 龍の放つ裁きの閃光が、暴風竜の肉体を焼き切る!
肉体を維持出来ず、内包していた圧縮空気が解き放たれ、ヘンリエッタの場に居るユニット達に襲い掛かるが――
「ハリケーンドラゴンが破壊された事で、フィールドに存在するユニットを全て疲弊させる!」
「その効果に連鎖し、もう1体の極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンの効果発動! 絶対守護障壁を手札に加え、墓地へ送りその効果を発動! 私の場のカードは他の効果を受けず、効果は無効になる!」
その暴風を、絶対守護障壁が完全に防ぎ切った。
ハリケーンドラゴンを踏み越え、そしてヘンリエッタの場のユニット達も、全員が攻撃参加可能になった。
「バトル! 聖域の守護兵で攻撃!」
「盾で受けるよ」
「2体目の聖域の守護兵で攻撃!」
「それも盾で受ける!」
「極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンで攻撃!」
「盾で受ける――!」
次々に破壊されていく、サンドラの盾。
今、ヘンリエッタの場のユニットは、一切の効果を受けない状態。
この状態では、カウンター呪文を撃った所で、ヘンリエッタのユニットを除去出来ない。
「最後の1枚とは、随分待たせてくれたじゃない!」
ニヤリと笑うサンドラ。
ヘンリエッタにとっての未知、サンドラにとっての既知。
それが盾にあると、サンドラは知っていたからこそ、余裕を崩さなかった。
「カウンター呪文、緊急強制終了発動!」
名称:緊急強制終了
分類:カウンター呪文
プレイコスト:青青白○○○
文明:青
カテゴリ:
マナシンボル:虹
このカードは連鎖4以上、または相手バトルステップでのみ発動出来る。
1:【速攻】【効果】このカード発動時の連鎖全てを無効にし、このターンのエンドステップになる
よりにもよって、ラス1がそれかよ!?
「効果を受けなくても関係無い! このターンは強制終了よ!」
ヘンリエッタの場のユニットではなく、ステップ自体に干渉する効果。
これは、絶対守護障壁では防げない!
ヘンリエッタの戦法に対する、完璧な解答をサンドラが叩き付けた!
「プレイコスト7以上・白文明・種族:ドラゴンのユニットが存在するので、プレイコストは4少なくなり、祈りの巫女の効果で更に1軽減、よって白マナ1でこのカードは発動できます」
――その、軽減条件は!!
「手札から白マナ1を支払い、カウンター呪文、神罰を発動!」
名称:神罰
分類:カウンター呪文
プレイコスト:白白白白白白
文明:白
カテゴリ:
マナシンボル:白
このカードの効果は無効化されない
自分フィールドにプレイコスト7以上・白文明・種族:ドラゴンのユニットが存在する場合、このカードのプレイコストは4少なくなる
1:【速攻】【効果】相手フィールドに存在するカード1枚を選択する。その効果を無効にし、破壊する
「緊急強制終了の効果を無効にし、破壊!」
サンドラが用意していた、最後の防壁。
完璧な解答に思えたカウンター呪文は、ヘンリエッタが放った最強クラスの妨害呪文、神罰によって葬り去られる!
「極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンで――直接攻撃!!」
もう、サンドラに防御手段は残っていない。
サンドラ LP:3000→0
オーロラキャストドラゴンの直接攻撃が、サンドラへと突き刺さる。
勝者、ヘンリエッタ。
第一回Etranger大会。
その幕が下りた瞬間であった。
決着。




