249.第一回Etranger大会-6-
「……オーロラキャストドラゴンが重ねた呪文は、聖雷一閃かあ」
遂に降臨した、ヘンリエッタのエースカード、極光魔術龍 オーロラキャストドラゴン。
その下に重ねられた呪文を確認したサンドラは、ポツリとそう呟いた。
「私のターン、ドロー。リカバリーステップ、メインステップ」
ヘンリエッタのエースを迎え撃つべく、サンドラは自らの手札に視線を落とす。
今ある手札は、2枚のみ。
「カードをマナゾーンにセット、疲弊させ青マナ9を得ます」
そしてマナゾーンに1枚埋め込み、これで1枚となった。
「だったら、私は青マナ10を支払い、手札から呪文カード、緊急増版を発動!」
残った最後の1枚。
それは大量ドローを可能とする、緊急増版であった。
サンドラが今使えるマナの全てを、このドローへと変換するようだ。
「デッキから10枚ドロー! これでターンエンドするよ!」
自らの盤面にカードを展開する事無く、ターンを終えるサンドラ。
「なら、そのエンドステップに極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンの効果発動!」
それを聞いたヘンリエッタが、ここで極光魔術龍の効果を起動した。
「下に重ねられた聖雷一閃を手札に加え、プレイコストを0にして発動します」
名称:聖雷一閃
分類:呪文
プレイコスト:白白白◯◯
文明:白
カテゴリ:
マナシンボル:白
1:【起動】【効果】自分の手札から白文明のカードを任意の枚数選択し、相手に公開する。公開した数までフィールド上に存在するカードを選択し、破壊する
「私は手札の祈りの巫女を相手に見せて、私の場に居る聖域の霊鳥を破壊します」
「そうだよね、そうするしか無いよね」
その行動は想定済みだと、サンドラは大量に引き込んだ手札を確認しながらヘンリエッタの行動を了承する。
「だけど聖域の霊鳥は、1ターンに1度だけ破壊されません。その後、聖域の霊鳥の効果で1枚ドローします」
極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンもまた、白文明のカードだ。
他に白文明のカードがある為、聖域の霊鳥は破壊耐性によって聖雷一閃を耐え抜いた。
「……今の行動、何の意味があったのでしょうか?」
観客の中から、今のはルビスの声か?
何でそんな意味の無い事をしたのか、ヘンリエッタの行動を不思議に思ったのだろう。
自分のカードを使って自分のカードを破壊しようとして、それが不発になっただけだからな。
極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンの効果を理解していないと、その感想になるのだろう。
意味は、当然ある。
これは下に重ねた呪文を外す為の行動だ。
2:【起動】【条件】このカードの下にカードが存在しない時
【効果】自分の墓地に存在する呪文カードを1枚選び、このカードの下に重ねる
極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンが呪文を重ねられるのは、このカードの下にカードが存在しないのが条件。
2枚以上、呪文を保持しておく事は出来ず、次の呪文を撃つには、既に詠唱済みの呪文を一度発動する必要があるという事だ。
ヘンリエッタは本来、サンドラが何かカードを展開したら、この聖雷一閃を使って場を一掃するつもりだったのだ。
だからサンドラは何も出さず、全てのマナをドローに注ぎ込んだ。
元々手札が枯渇していたというのもあるだろうが、聖雷一閃が破壊出来るのはフィールドだけだ、手札には効果が届かない。
ヘンリエッタの目論見が外れたというか、外させたというか。
だが元々ヘンリエッタの目的はサンドラの場をがら空きにさせて、自分のターンを迎える事。
それ自体はヘンリエッタの狙い通りだろう。
「私のターン、ドロー。リカバリーステップ、メインステップ。カードをマナゾーンにセット、疲弊させ白マナ11を得ます」
このヘンリエッタのターン、間違いなく動いてくる。
「極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンの効果発動! 私の墓地に存在する呪文カードを下に重ねます!」
再度、呪文の詠唱準備を整えるオーロラキャストドラゴン。
次弾装填完了。
「白マナ4を支払い、手札から祈りの巫女を召喚します」
前のターン、救援信号によって手札に回収しておいた祈りの巫女が再び盤上に投下される。
「祈りの巫女の効果発動、デッキの上から3枚を確認し、1枚を手札に加え、1枚をマナゾーンへ、残りの1枚を墓地へ送ります」
そして、祈りの巫女の効果によって白文明のカードが墓地へ送られた。
「白文明のカードが墓地へ送られたので、手札から聖域の守護兵2体をプレイコストを0にして召喚します」
つまり先程手札に回収していた、聖域の守護兵もまとめて召喚されるという事だ。
「白マナ1を支払い、聖域の霊鳥を召喚します」
これは、元々手札に居たのだろう。
更に追撃の手数として、聖域の霊鳥が姿を現した。
だが結局の所、オーロラキャストドラゴン以外は攻撃出来ないというデメリットを抱えているユニットばかりだ。
いくら並べても、防御は出来ても攻撃には参加出来ない。
「そして、極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンの効果発動!」
だから。
ここでヘンリエッタは極光魔術龍の引き金を引いた。
「下に重ねた絶対守護障壁を手札に加え、その効果を発動します!」
ユニットとプレイヤーを守る、究極の障壁。
この呪文には、防御以外にもう一つの使い道が存在する。
「これにより、私の場のユニットの効果は無効となり、攻撃不可のデメリットは消滅します!」
名称:絶対守護障壁
分類:カウンター呪文
プレイコスト:白白白白白
文明:白
カテゴリ:
マナシンボル:白
1:【速攻】【効果】このターンのエンドステップまでこのカード以外の自分フィールドのカードの効果は全て無効となり、他のカード効果を受けず、自分のユニットは戦闘で破壊されず、自分が受ける全てのダメージは0となり、マナゾーン・盾ゾーンのカードも破壊されない
そう、ヘンリエッタの場のカード効果が無効になるのだ。
攻撃出来ない、というデメリットも無効にされたという事は。
「バトル! 聖域の霊鳥で攻撃!」
今、この時だけは。
ヘンリエッタの場に居る全てのユニットが攻撃に参加出来る!
「ライフで受けるよ」
サンドラ LP:10000→9000
「更に聖域の霊鳥で攻撃!」
「ライフで受けるよ」
サンドラ LP:9000→8000
「祈りの巫女で攻撃!」
「ライフで受けるよ」
サンドラ LP:8000→6000
「聖域の守護兵で攻撃!」
「それもライフで受けるよ」
サンドラ LP:6000→3000
ガリガリと削られていく、サンドラのライフ。
だが、まだ攻撃可能なユニットは残っている。
「聖域の守護兵で攻撃!」
聖域の守護兵のパワーは3000。
もう、サンドラは自らの命を削る事は出来ない。
「盾で受ける」
次の攻撃を直接受ければゲームエンドである以上、ここからは盾を犠牲にするしかない。
「極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンで攻撃!」
「それも盾で受ける」
計、2枚。
サンドラの盾が破壊され、ライフも急激に失われた。
どうやらカウンター呪文は踏まなかったようだ。
もしかしたら踏んでいたのかもしれないが、絶対守護障壁が適用されたユニットはほぼ無敵。
破壊効果だろうが何だろうが効果なら全て弾いてくるので、撃つ意味無しと手中に引っ込めたのかもしれない。
「私はこれでターンエンドです」
極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンが健在である限り、絶対守護障壁を纏った無敵のユニット達が突撃してくる、このコンボが何度も繰り返される。
ヘンリエッタの布陣を返さなきゃ、このままサンドラの負け。
だがサンドラ側も、十分にマナは伸びてるし、手札も潤ってる。
これでそのまま負けるようなデッキと乗り手なら、そもそもこの決勝卓にまで勝ち進んでない。
このまま押し切るか、捲り返すか。
ここが正念場、だな。




