248.第一回Etranger大会-5-
雨ざらしアザラシと聖域の霊鳥が睨み合う、決勝戦。
その間にそっと鰯を置きたくなる。
「私のターン、ドロー。リカバリーステップ、メインステップ。カードをマナゾーンにセット、疲弊させ白マナ8を得ます」
ヘンリエッタのターン。
マナゾーンは伸びに伸びて、8マナ帯まで到達している。
「白マナ4を支払い、手札から祈りの巫女を召喚します」
3枚目の、祈りの巫女降臨。
サンドラ側からすれば、何で持ってるんだと、勘弁してくれと言いたくなる所だ。
黙々と山を掘り続けた、愚直なドローの積み重ねが、ここでヘンリエッタの背を押す。
「祈りの巫女の効果発動。デッキの上から3枚を確認し、1枚を手札に加え、1枚をマナゾーンへ、残りの1枚を墓地へ送ります」
祈りの巫女自体が、デッキを掘り進める効果を持っているので、例え祈りの巫女を除去したとしても、後続を手元に残し易いという事もあるだろうが。
それにしても、引きが強い。
「白文明のカードが墓地へ送られたので、手札から聖域の守護兵のプレイコストを0にして召喚します」
オマケとばかりに、聖域の守護兵も再展開される。
攻撃を咎める朱禁の聖域は、前ターンの津波によって消し去られたが、祈りの巫女に攻撃を届かせるには、聖域の守護兵が邪魔だ。
「これでターンエンドします」
余剰マナを残しつつ、ターンを終えるヘンリエッタ。
もう戦いも佳境。
恐らくこれは、次ターンにビッグアクションを起こす為の予備動作なのだろう。
「私のターン、ドロー。リカバリーステップ、メインステップ。カードをマナゾーンにセット、疲弊させ青マナ8を得ます」
サンドラ側にターンが移る。
前ターンまでは手札がカツカツで、マナはあっても動きに苦しさを感じたサンドラだったが。
緊急増版によって既に手札は満ち足りている。
「青マナ4を支払い、手札から呪文カード、タイダルウェイブを発動! フィールドに存在するプレイコスト4以下のカードを全て破壊する!」
ならば、2枚目の津波を引き込んでいても何ら不思議ではないという事だ。
「私の場に祈りの巫女が居る事で、白文明のカードのプレイコストは1少なくなります」
手札増強、マナブースト、墓地肥やしと、至れり尽くせりな効果を有しているにも関わらず。
コスト軽減効果まで持っているという、余りにも理不尽なパワーカード。
その軽減効果を使用して、ヘンリエッタは手札を引き抜く。
「――白マナ4を支払い、絶対守護障壁を発動!」
名称:絶対守護障壁
分類:カウンター呪文
プレイコスト:白白白白白
文明:白
カテゴリ:
マナシンボル:白
1:【速攻】【効果】このターンのエンドステップまでこのカード以外の自分フィールドのカードの効果は全て無効となり、他のカード効果を受けず、自分のユニットは戦闘で破壊されず、自分が受ける全てのダメージは0となり、マナゾーン・盾ゾーンのカードも破壊されない
放たれるは、白文明が誇る最強の防御呪文。
効果を受けないという最強の耐性を付与して、プレイヤーのライフも守る、そのカード名通り、絶対の守護障壁を展開する。
インフレが進んで来ると、これ飛び越えてデッキ切れで勝利を狙って来るバカタレとか出て来るんだけど、今のカードプールでは、そんな事が出来る奴は居ない。
これさえ発動出来れば、このターンの延命は確定と言って良いだろう。
「はいそれ駄目ねー。連鎖して手札から青マナ2を支払い、妨害呪文を発動するよ。絶対守護障壁を無効にし、破壊」
名称:妨害呪文
分類:呪文
プレイコスト:青青
文明:青
カテゴリ:
マナシンボル:青
カテゴリ:
1:【速攻】【条件】相手が呪文を発動した時
【効果】その発動を無効にする
そう、発動出来れば。
それを迎え撃つのは、青文明が誇る最強の妨害呪文。
僅か2マナで、ありとあらゆる呪文を叩き潰す、理不尽極まりないカウンターパンチ。
絶対守護障壁は、妨害呪文を受けてその効力を喪失する。
「よってタイダルウェイブの効果は有効! 雨ざらしアザラシが破壊されたので、青マナ1を得るよ」
絶対守護障壁を貫き、再び津波が戦場全てを飲み込んでいく。
そして破壊されながらも、絶対にマナ損にさせないと、青マナを残していくアザラシ。
「聖域の霊鳥は1度だけ破壊されません」
だが二度もの破滅的な大災害の中を、その翼で空を切りながら、聖域の霊鳥はしぶとく生き延びる。
サンドラからすれば鬱陶しい事この上ないだろう。
この聖域の霊鳥が、ヘンリエッタの手札の質を引き上げている主要因の一つなのだから。
「青マナ2を支払い、製氷を発動。雨ざらしアザラシをデッキから手札に加えるよ」
再びデッキから雨ざらしアザラシをサーチで掘り起こす。
それがデッキコンセプトなのだから当然ではあるが、本当にアザラシが途切れない。
「そして青マナ1を支払い、雨ざらしアザラシを召喚、これでエンドだよ。雨ざらしアザラシのパワーを1000アップしてカウンターを乗せるよ」
「聖域の霊鳥の効果で1枚ドローします」
呪文の撃ち合いを終えてみれば、結局雨ざらしアザラシと聖域の霊鳥が対峙する初期状態に戻って来た。
よしよし、その間に鯵を置いておこう。
「私のターン、ドロー。リカバリーステップ、メインステップ。カードをマナゾーンにセット、疲弊させ白マナ10を得ます」
ヘンリエッタのターン。
もうマナゾーンは十二分に伸びている。
それに、これだけ延々とドローし続けたのならば……
「白マナ7を支払い、手札から極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンを召喚!」
――遂に来たか!!
名称:極光魔術龍 オーロラキャストドラゴン
分類:ユニット
プレイコスト:白白白白白白◯
文明:白
種族:ドラゴン
性別:女
カテゴリ:
マナシンボル:白
パワー:7000
1:【永続】攻撃回数+1
2:【起動】【条件】このカードの下にカードが存在しない時
【効果】自分の墓地に存在する呪文カードを1枚選び、このカードの下に重ねる
3:【速攻】【条件】このカードの下にカードが存在せず、相手が呪文カードを発動した時
【効果】自分の墓地に存在する呪文カードを1枚選び、このカードの下に重ねる
4:【速攻】【条件】1ターンに1度
【効果】このカードの下に重ねた呪文カードを手札に加える。その後、この効果で手札に加えた呪文カードを墓地へ送り、プレイコストを0にして発動する
これまでの下準備は、全てこのカードに至る為の布石。
この極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンこそが、ヘンリエッタが操るデッキの切り札!
防戦に徹し続け、遂にエース降臨へと辿り着いた!
「極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンの効果発動! 私の墓地に存在する呪文カードを下に重ねます!」
極光魔術龍の名の通り、この龍は墓地に眠る呪文を操る。
今まで使った呪文を、状況に応じて多彩に撃ち分ける。
ヘンリエッタの墓地から呪文カードが1枚、その下に埋め込まれた。
「白マナ2を支払い、手札から呪文カード、救援信号を発動します。この効果で墓地から祈りの巫女、聖域の守護兵2体を手札に加えます」
名称:救援信号
分類:呪文
プレイコスト:白白
文明:白
カテゴリ:
マナシンボル:白
1:【起動】【効果】自分の墓地から白文明のユニットを3枚まで選択し、手札に加える
更に墓地から、後続を確保しに行くヘンリエッタ。
聖域の霊鳥と祈りの巫女で、延々とデッキを掘り進め、墓地を肥やして来た。
この局面で使う救援信号は、最早任意のユニットを手札に引き込む最強のサーチ札と言って良いだろう。
「バトル! 極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンで、雨ざらしアザラシを攻撃!」
長い間、ひたすら防御に徹して来たヘンリエッタの口から、遂に攻撃宣言が飛び出す。
今までヘンリエッタが召喚してきたユニットは、全て攻撃出来ないというデメリットを抱えていた為、攻撃したくても出来なかったというのもあるだろうが。
極光魔術龍 オーロラキャストドラゴンには、そんなデメリットは存在しない。
オーロラキャストドラゴンが、吼えた。
空中に描かれる、光の魔法陣。
そこから放たれた無数の光の矢が、濡れ紙を突くが如く、何の抵抗も無く雨ざらしアザラシを貫いた。
「雨ざらしアザラシが破壊されたので青マナ1を得るよ」
「追撃はしません、これでターンエンドします」
オーロラキャストドラゴンには、攻撃回数+1の永続効果がある。
なので雨ざらしアザラシを撃破した後、サンドラへ攻撃を加える事が出来た。
だが、ヘンリエッタはそれをしないようだ。
ヘンリエッタも気付いているだろうが――サンドラが使っている"アザラシコントロール"は、デッキ内比率が余りにも歪だ。
サンドラが延々と召喚し続けている、雨ざらしアザラシ。
サーチ札である製氷によって何度か引き込んでいるが、あれは雨ざらしアザラシを選んでいるのではない。
そもそもサーチ先が雨ざらしアザラシしか存在しないのだ。
プレイコスト5以下のユニットを雨ざらしアザラシのみにする事で、ファーストユニットが雨ざらしアザラシで確定する。
そうする事でプレイングの再現性を高め、マジックキャストという強力なマナブーストを成立させる為に、デッキ内のユニット枚数をガッツリ削り落とし、呪文比率を普通のデッキでは考えられない程に高める。
他のデッキならば本来、ユニットを入れるべきデッキスロットの部分にまで、呪文カードが侵食しているのが、今サンドラが使っている"アザラシコントロール"というデッキの正体だ。
デッキ構築段階でデッキ内が呪文まみれならば当然――盾に呪文が埋没する可能性、というより盾に埋まっているのが全て呪文カードになっている可能性が高いと見るべきだろう。
そんな盾を、攻撃して割りに行く?
ただの呪文ならまだ良いが、変なカウンター呪文を踏んだら、一気に逆転されかねない。
それで勝てるというならリスクも侵すだろうが、この局面では盾を割れても1枚止まり。
だからヘンリエッタは止まった、そういう事だ。




