217.計算尽くの奇跡-4-
「再転する運命の効果により、お互いの墓地に存在するカードを全てデッキに戻す!」
聖天戦女神 アルトリウスのパワー上昇効果は、俺のデッキにカードが存在しなければ発動出来ない。
実質、一発限りだが!
聖天戦女神 アルトリウスの発動コスト、再装填!!
本当は、これで相手の墓地も全て消滅すれば最高だったが――
6:【永続】【効果】このユニットがフィールド・墓地に存在する時、墓地に存在するカテゴリ:邪神の欠片カードは相手の効果を受けない。この効果は無効化されない
"廃絶の狂信者"の持つ、己の蘇生を阻む、墓地に触る効果だけは絶対に許さないと言わんばかりの、墓地に対する無茶苦茶な耐性付与。
しかも無効化不可、抜け道は無い。
どうあっても、真正面から叩き潰す以外の選択肢は無いみたいだな!
「お前の墓地には干渉出来ないが、俺の墓地のカードは全てデッキに戻る!」
俺の手札で出来る事は、もう何も無い。
後は、己のデッキに祈るのみ!!
策を積み重ねた上で、最後はデッキに祈る!
運に委ねる! カードゲーマーならば、本望だろうが!!
デッキをシャッフルする、擦過音。
例えるならばそれは――大砲の弾込め音。
最強の主砲、その発射準備が完了した。
デッキ枚数:0→32
デッキ枚数確認――残り、32枚!!
「バトル続行! 聖天戦女神 アルトリウスで、"廃絶の狂信者"を攻撃!!」
急降下爆撃機の如く、空から舞い落ちるアルトリウス。
そんなアルトリウスに対し。
黒い泥のような体躯が、変質していく。
闇を打ち払った筈の、白き天翼も、光湛えし聖剣も。
全てが汚泥によって黒く染まり上がり、堕ちたる邪神へと、その姿を変えていく。
今、この戦場で最も強き者――聖天戦女神 アルトリウスの姿を模る。
"廃絶の狂信者"は、そのパワーを模倣する。
「聖天戦女神 アルトリウスの第4効果発動!」
デッキ枚数:32→22
「デッキの上から10枚を墓地へ送り、バトルする相手のパワーを自身へと加算する!」
必ず並び立つ者。
必ず上回る者。
この両者がぶつかれば――
「このアルトリウスの効果処理は、お前と全く一緒の種類だ」
そう、聖天戦女神 アルトリウスと、"廃絶の狂信者"、その効果の本質は、全く一緒。
最悪と呼ばれた邪神の欠片と、聖天戦女神 アルトリウスは、相手のパワーを参照して、自らのパワーを変動させる。
「そして、全く一緒という事は、発動タイミングすら同じという事だ!」
1:【速攻】【条件】このユニットがバトルする時に一度
【効果】このユニットのパワーはバトル終了時まで、フィールドに存在する最もパワーの高いユニットのパワーと同じ数値になる
4:【速攻】【条件】このユニットが相手ユニットとバトルする時【コスト】デッキの上から10枚を墓地へ送る
【効果】そのユニットのパワーと同じ数値を自身のパワーに加える
「つまりこの場合、攻撃宣言をした方――ターンプレイヤーが一番最初に効果を行使する権利を得るという事だ!」
カードを一番最初に使用する権利は、常に自分のターンである者にある。
他のプレイヤーは、ターンプレイヤーがカードを使用した後でしか、行動する事が出来ない。
そうでなければ、"自分のターン"とは一体何なのだ、という話になってしまうからだ。
これはエトランゼに限らず、他のカードゲームにも共通する、基本的なルールの一つだ。
バトルする時、相手ユニットの攻撃力を自身に加算する。
これは相手の攻撃力、その最終計算結果を自分に加えるという事。
足した後、同じになるではない。
同じになった後、足す。
敵の最終計算値を参照して、自らに加算する!
そして、連鎖処理は必ず、上の方から処理を行う。
連鎖2:"廃絶の狂信者"
連鎖1:聖天戦女神 アルトリウス
つまり、相手が効果を使おうと使うまいと、俺のターンでアルトリウスの効果を発動し続ける限り、必ずアルトリウスは相手の攻撃力を上回る!
問答無用一刀両断一撃必殺!
それこそが、進化したアルトリウスの絶対戦闘破壊効果!
プレイヤーに約束された栄光を与える、絶対勝利の剣!
しかし、効果を温存するという選択肢は存在していない。
この効果を使わねば、相手にカード効果の使用権利が移譲してしまう。
そうなれば今度は効果を使うのは相手だ。
それに連鎖してアルトリウスの効果を使うのでは、処理順序の都合上相手の効果が通ってしまう。
聖天戦女神 アルトリウスの攻撃が必殺となるには、連鎖1の部分が聖天戦女神 アルトリウスであるのが絶対条件だ。
だから、俺は使う!
デッキを燃やし尽くし、その刃を通す為に!
「逾槭?貊??縺ゅl縺ィ險?繧上l縺溘??謨?↓豸医∴繧九∋縺」
「私の姿すら模倣するか――だが!」
アルトリウスの姿を模倣した事で、翼を得た"廃絶の狂信者"。
アルトリウス同様、飛行能力も手に入れたようで、その翼を羽ばたかせ、空に君臨するアルトリウスへと迫る!
大地から解き放たれ、戦いの舞台を空中へと移す……が。
「その程度の実力で! 私を倒そうだと!? 思い上がりも甚だしい!!」
"廃絶の狂信者":パワー 0→15001
聖天戦女神 アルトリウス:パワー 15001→30002
2倍ものパワー差、最早打ち合いにすらならない。
一方的な、パワーによる蹂躙!
粉微塵にせんばかりに、幾度となく斬り裂かれる"廃絶の狂信者"。
まだ――蘇る!
LP:188→94
蘇る都度、俺のライフをオマケとばかりに削り取っていく。
畜生が! まだコストが枯れないってか!?
「聖天戦女神 アルトリウスの第5効果発動!」
このままじゃ、足りない!
"廃絶の狂信者"は、アイツだけは! 絶対にこのターンで仕留めねばならない!
だから、使う!
確率は、薄くは無い! チャンスはまだある!
だったらその程度――乗り越える!!
「俺はデッキから装備呪文、退魔の剣と無垢なる剣を追放! 聖天戦女神 アルトリウスの疲弊を回復する!」
デッキ枚数:22→20
「そして再び! 聖天戦女神 アルトリウスで"廃絶の狂信者"を攻撃! そして効果発動! デッキの上から10枚を墓地へ送る!!」
――ここだ!
今、このタイミング!
この確率を、乗り越えられるかどうかが――!
「「落ちろおおおおおオオオオォォォ!!」」
デッキ枚数:20→10
アルトリウスが、咆える。
最早、目で追う所ではない。
何処までも匹敵する者と、何処までも上回る者の戦い。
光と音を置き去りにし、幾度となく交わる剣閃。
遅れてやって来た光と音、破壊の爪痕だけが、戦いの決着を示すのみ。
"廃絶の狂信者":パワー 0→30002
聖天戦女神 アルトリウス:パワー 30002→60004
先程の、焼き直し。
何度繰り返そうとも、聖天戦女神 アルトリウスの第4効果を使い続ける限り、闇は光を凌駕出来ない!
天へと舞い上がろうとした"EF"を、アルトリウスが撃ち落とす。
そして、蘇る。
「蝨ィ繧九∋縺榊ァソ縺ク縲?縺昴l縺薙◎縺御クサ縺ョ譛帙∩」
雄叫びを上げる、"廃絶の狂信者"。
アルトリウスを写し取ったその姿で、こちらに向けて灰色の閃光を放つ。
LP:94→47
最早、俺の身体の殆どが消滅してしまった。
だが、ライフは残っている。
ライフが尽きていなければ、まだ戦える。
アルトリウスは、幾度となく勝利の結果を示し続けた。
今度は、俺が答える番。
これで、墓地に落ちたカードが――
「く……! 俺は、デッキから雲竜紫電、瞬速の剣、結束の短剣-ユニオンダガーを追放し、アルトリウスの効果発動!」
デッキ枚数:10→7
「これにより、アルトリウスの疲弊状態を回復!」
畜生が! 最後の最後でこれかよ!!
何故……ッ! どっちも落ちないんだッ!!
これが俺の運命だってのか!!
「聖天戦女神 アルトリウスで! "廃絶の狂信者"を――攻撃ッッ!!」
――姿を変える、"廃絶の狂信者"。
写し取るのは当然、フィールドで最も強き存在。
"廃絶の狂信者":パワー 60004
聖天戦女神 アルトリウス:パワー 60004
「好い加減に――くたばれエエェェェ!!」
乾坤一擲、正真正銘、アルトリウスの命を賭した猛攻!
もう、デッキは残って無い!
アルトリウスの起動コストであるデッキが枯渇し、遂にアルトリウスの攻撃力上昇効果が封じられた。
ああそうだよ! 装備呪文が落ちなかったせいだよ!!
しかし、"廃絶の狂信者"にはそれが無い。
匹敵する者、上回る者、互いが死力を尽くした結果、神々の戦いの如き様相となっていた。
この異世界は狭すぎるとばかりに、縦横無尽に駆け、舞う。
ただ一歩踏み込むだけで、地面が爆砕し、その一歩でアルトリウス達の位置が首都の側へ、山へ、海上から空へ、目まぐるしく変わっていく。
手にした剣の一振りで、大地が震え、海が割れ、雲は霧散し、刃を交えれば凄まじい音と光をその場に残し、気付いた頃にはまた戦いの場所を移して更に打ち合い続ける!
完全、完璧に聖天戦女神 アルトリウスのパワーを写し取った"廃絶の狂信者"は――
「隕倶コ」
小さく呻いた。
その胴体には、湖の聖剣-カリバーンが深々と突き刺さっていた。
だが、それと同時に。
聖天戦女神 アルトリウスもまた、全く同じ場所に、黒い刃が突き立てられていた。
双方共に――致命傷。
空から落下し、地面に叩き付けられ、絶命する。
――同じ力量故の、相討ち。
"廃絶の狂信者"が、その肉体を崩壊させていく。
アルトリウスの姿を保てなくなり、黒い汚泥へと姿を変えていき……
その汚泥が――蒸発し、体積を減らしていく。
今まで散々その命を長らえ続けた、執念とでも呼ぶべきしぶとい力強さを、そこには感じなかった。
最悪の災厄、"廃絶の狂信者"。
長きに渡り、ナーリンクレイを蝕み続けた、最強最悪の邪神の欠片。
復活の為の命を遂に使い果たし――完全に、その生を終えるのであった。




